「お金をかけずにお客様の心を動かし、売上アップを実現する方法」として、衝動買いを促すことはとても効果的です。
お店のビジネスは、ネット通販やカタログ通販と違って、ダイレクトにお客さまとコミュニケーションがとれます。そしてそれが「接客」です。
接客は、お客様の意識を変え、気持ちを変え、常識を変える最も有効なものです。それは同時に、衝動買いを促す上で大きな効果を発揮します。
そこでこの記事では、株式会社SIS 代表取締役・カスタマーリレーショナルマーケター 齋藤孝太さんが著者『衝動買いしてもらう21の法則』で解説している、「売上アップにつながる”感じのいいお店”のつくり方」をご紹介します。
感じのいいお店
衝動買いをしてもらうには、来店して最初に接触するスタッフの印象が重要になります。もし、最初に接触するスタッフから良い印象を受けなかった場合、お店に対してネガティブイメージが先行し、いい商品が見つかったとしても、「このお店、何かいやね…… この商品いいけど、他のお店かネットにあるかもしれないから、とりあえず今買うのはやめよう……」と思われてしまいます。
第一印象を決める最初の接客で、お客様に「何か感じのいいお店ね」と感じていただくことが大切です。
日常挨拶コミュニケーション
まず最初のお客様との接触は、挨拶でしょう。
挨拶は通常、「いらっしゃいませ」という言葉が多いと思います。
知らないお客様の場合は、それでいいでしょう。しかし、顔を一度でも見たことがあるお客様には、アイコンタクトを行い、「いらっしゃいませ」の後に、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」と、挨拶することをおすすめします。それにより、「私はあなたのことを知っています」というメッセージを暗に送ることができます。そして、お客様に安心感を与えることができます。
このような挨拶は、お客様との関係が希薄になりがちなフランチャイズチェーンの場合、特に必要です。名前がわからなくても実施できます。
最近多いのですが、飲食店等で必要以上に声が大きい挨拶をするお店をみかけます。お客様を歓迎しているというより、自分たちの気持ちを高揚させるために言っているのではと思ってしまいます。
挨拶はお客様に聞こえれば十分です。必要以上に元気な挨拶は、お店の雰囲気をガヤガヤしたものにし、落ちついて衝動買いをする雰囲気を壊してしまいます。
好感度獲得のファーストアプローチ
最近のお客様は売り込まれることを非常に嫌います。そのため、いきなり売り込みと思われるトークは極力避ける必要があります。
売り込みと感じさせないアプローチの一番いい方法は、お客様から声を掛けられたときに接客するのが一番ですが、それだけではファッション等の業種では、衝動買いを促すチャンスを失ってしまいます。こういう場合、下記のようにアプローチすることで、威圧感のないスムーズなコミュニケーションが生まれることが提唱されています。
・お客様が何か商品を探している場合は、「お探ししましょうか?」
・お客様が商品を見ている場合は、「よかったらお出ししましょうか?」
・商品を触って何回か見ている場合は、「他のサイズもそろっております?」
すでに買いたい商品が決まっている場合は問題がないのですが、決まっていない人には、少々売り込み色を感じるアプローチです。
衝動買いを数多く獲得するには、特定の商品を探していない人たちとのコミュニケーションも重要になります。その空気を察した場合は、下記のアプローチ等が最適でしょう。
・お店の説明「当店の奥には、○○な商品(衝動買いされやすい商品)も置いていますので、ぜひご覧ください」
・売れ筋の説明「今、この商品が当店で一番人気です」
・次のコミュニケーションに繋がるトーク「当店ははじめてでしょうか?」
ドラッグストア平和堂(アル・プラザ草津店)の化粧品売場では、お客様が来店したときに、「いらっしゃいませ」と大きめの声でアプローチを行います。商品選びでお客様がアドバイスを求めているときには、近づいて「いらっしゃいませ」と改めて声がけし、ファーストコミュニケーションを成功させています。
思いがけない来店直後のサービス
全国に80ヵ所あるカルディコーヒーでは、女性スタッフがお店の入口近くで、来店したお客様にいれたてコーヒーをふるまっています。コーヒーの入った紙コップを受け取ったお客様は、そのまま店内に入り、コーヒーを飲みながら買い物をします。通常の小売店では、試食を除けば店内での飲食は禁止です。無料のコーヒーサービスは珍しい試みです。
私も実際に来店し、サービスを受けたことがあるのですが、女性スタッフの表情も笑顔で大変気持ちがよく、もらったコーヒーが飲み終わるまで7~8分店内にいたので、思わず衝動買いをしてしまいました。私はコーヒー通ではないので、このサービスがなければ、2~3分で店内を出てしまい、商品を買わなかったかもしれません。滞店時間を長くしたいお店は、このようなサービスを実施されてはいかがでしょうか?
「ウチのお店では、スタッフが足りなくてできないよ」というお店もあるかもしれませんが、お店のビジネスは、時間帯ごとにお客様の入りに変化があります。お客様が少ない時間にはスタッフが余っていることもあるので、その時間帯のみ実施してもよいでしょう。
現在は実施されていませんが、スーパーマーケットやドラッグストアでは、キャスターつきの買い物カゴの脇に、ドリンクを入れておくスペースを作っておけば、コーヒーや紅茶を飲みながら、リラックスしてショッピングしてもらうことができ、予定になかった商品まで購入する(衝動買い)現象が起こるかもしれません。
メーカーが考える通常の販促支援は、直接的な売上アップの軸(客単価アップ・購入頻度アップ)から提案しますが、滞店時間のアップ、回遊率アップというインストアマーケティングの軸からの提案も今後考えられるでしょう。実施の場合は、衝動買いの可能性の高い、エンド売場やレジ前に自社商品を陳列することを条件にします。
さいごに
記事の内容について詳しく知りたい方は、こちらの本をお読みください。
衝動買いしてもらう21の法則
予算も体力も時間もない、ナイナイづくしの小売業に対し、伸びない市場で売上・利益を上げ、現場と会社を劇的に変える知恵と手法を提案する本。 消費者の心理・行動という視点からはもちろん、現場視点からもお店でどのようなアクションをすればいいのかを説明しています。
齋藤孝太
株式会社 SIS(ストラテジックインテリジェントシステム)(https://sisys.jp/)
カスタマーリレーショナルマーケター。店舗ビジネス(小売業・サービス業・SC等)において顧客との関係を深め、継続的な売上拡大を目指す企業を対象に、顧客育成/CRMの「販売現場の教育・研修・セミナー」を通じた人材育成を行っている。
【参考】齋藤孝太.衝動買いしてもらう21の法則