ブランド力を打ち出す際に失敗しない一番良い方法は、自社のブランドとセットで「新しいカテゴリ(市場)」を生み出すことです。

ここでは、広告代理店および制作会社にて三菱電機、日清食品、服部セイコーなど大手企業のクリエイティブを担当してきた、デザイナーのウジトモコさんが、著書『あらゆる問題解決の糸口になる視覚マーケティング戦略』で紹介している「デザインとポジショニングで新しい市場を生み出す方法」をご紹介します。

新しい市場を生み出した『BLUE BOTTLE COFFEE』

よく知られているカフェ業界を例に、「新しいカテゴリ(市場)」の形成例を見てみましょう。お洒落なデザインと「サードプレイス」という戦略で世界の市場をほぼ独占したスターバックスは、ブランドとして周知されている良い例でしょう。飲食店によくあるセルフサービスのお茶などは食事代に含まれるのに対し、スターバックスのようなカフェのコーヒーは、コーヒー代に場所代が含まれています。

つまり、カフェでのくつろぎやリフレッシュといったものがコーヒー代とセットになっているので高いのです。

カフェのコーヒーには場所代が含まれている

スターバックスに追随しようとして同じような雰囲気、同じようなビジネスモデルにしても、ブランドとして強くなりません。競合相手は全世界を席巻するブランドですし、「スタバ風」「スタバのまねっこ」と言われるのは目に見えています。

ところが、いま全米でスターバックスの地位を脅かす新しい波が来ているのです。その波の発端がシリコンバレー発のコーヒーブランド「BLUE BOTTLE COFFEE」です。このブランドは、「サードウェイブ」という新しい考え方を持っています。ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れていくスタイルで、地域密着型の店作りが特徴です。よりコーヒーの味を楽しみたいユーザーに人気で、彼らの憩いの場になっているのです。

もちろん、アイキャッチである謳い文句は「ハンドドリップコーヒー」という商品名ではなくて『BLUE BOTTLE COFFEE』、そしてお洒落なブルーボトルのロゴマークです。

日本の伝統的なこだわり喫茶店に影響を受けたと言われ、スターバックスとは違う価値の軸を打ち出して、シリコンバレーのビジネスエグゼクティブの心をつかみました。そして、2014年についに日本にも上陸します。

カフェの料金 セルフサービスのお茶

デザインとポジショニングで違いを打ち出す

大ヒット商品を生み出した競合ブランドと差別化を図るために、ポジショニングを綿密に考えて新しい市場を作り出したBLUE BOTTLE COFFEE。サードウェイブというブランド戦略で違いを打ち出し、市場がかぶらないように考えられています。

デザインの面でも、「スターバックス」とかぶらないように注意されています。スターバックスのロゴマークは、やや深めの緑がキーカラーでシンボルは「セイレーン」という女神です。このイメージとかぶらないようにBLUE BOTTLE COFFEE のロゴマークは明るい濁りのないブルーをキーカラーにし、シンボルデザインは「BLUE BOTTLE」と、神話と無関係なグラフィックデザインを用いました。コーヒーブランドの新しい潮流としてビジネスモデルの違いを明確に表現するため、スターバックスとは対極のロゴにしています。

マーケットのないところにヒット商品は生まれませんが、大ヒット商品やブランドの反対側、反体制となると、それらとの違いを明確に打ち出すことができ、新たな市場が生まれる可能性は大きくなります。

ここで確認しておきたいことは、どんなポジションに身を置く場合でも、スターバックスにしてもBLUE BOTTELE COFFEE にしても、デザインはもちろんのこと、ブランドが意味するものやその設定についても、マーケティングと絡み合った市場戦略が含まれているということです。

「良いデザイン」とは

「かごしまデザインアカデミー」というデザイナーやクリエイターを養成するプロジェクトで教育講座を担当させていただいているのですが、行政や地域も関わっている事業だけにしばしば取りざたされるのが「良いデザイン」という言葉です。

「良いデザイン」とは、いったいどのようなデザインのことでしょうか。

多くの経営者やビジネスマンはデザインすることによって売り上げが上がることを期待しています。一方で、デザイナーの多くは、デザイナーにとっての“良いデザイン”をしたいと望んでいます。この2つを同時に満たし、かつそれが中長期的に続き、しかも年々、市場が広く深くなっていく状態のことを私たちは「ブランド力のある商品ですね」と言います。いわゆる、原価に対して高い売値がキープされている状態です。これが、「良いデザイン」だと言えるでしょう。

デザイナーにとっての“良いデザイン”を実装しただけで、売値が上がったり、市場が拡大したりすることはほぼありません。ですから、企業の経営者、ビジネスマンはマーケティングの要素とデザインをうまく組み合せるという考え方を持つことが重要です。

新しい価値をデザインする

2013年のヒット商品にダイソン社の「羽のない扇風機」があります。扇風機は、その名の通り、風を起こす羽がまわっています。しかし、小さな子どもが扇風機に近づき、指を羽に挟まれてしまう事故が多発していました。

そこでダイソン社は、羽がなくても風が吹く仕組みとデザインを考案し、商品化しました。これまでの扇風機とはまったく見た目を変えることから仕組みそのものに変化を起こした結果、羽によって子どもが指を挟まれる危険性が、見事に解決されました。「良いデザイン」とは、まさにこれにあたります。デザインと技術が融合し、新しい価値が生まれ、それに伴い市場までもが生まれています。

デザインの変更によって仕様や仕組みに大きな変化がもたらされるとき、「市場にとって新しい価値」が生まれ、それは今までの値付けに引っぱられないものになる可能性が高くなります。新しい価値をデザインするとは、これまでに顕在化していたのに解決されることのなかった問題を解決する内部的な構造の変化をもたらすデザインです。

経営者や企業のビジネスマンはデザインを問題解決の手段として捉えることが必要です。そういった思考ができるようになったとき、ダイソンと同じように、市場にとって新しい価値を生み出してくれる企業として、ブランド力で勝負できる、価格競争とは無縁の企業になることができるでしょう。

まとめ

大ヒット商品やブランドの反対側、反体制のデザインや、仕様・仕組みに大きな変化をもたらすデザインには、新しい価値を生み出す力があります。

新しい価値を生み出すことで、ブランド力のある企業、そして価格競争とは無縁の企業へと成長することができるでしょう。

『あらゆる問題解決の糸口になる視覚マーケティング戦略』をもとに編集)

『UJI-PUBLICITY』のご紹介

ウジトモコさんが代表を務める『株式会社 UJI-PUBLICITY』のホームページでは、実際に制作された企業のロゴデザインやWebサイトの実績などが紹介されています。参考になるものがあるかもしれないので、こちらも是非チェックしてみてください。

また、書籍『あらゆる問題解決の糸口になる視覚マーケティング戦略』では、この記事で紹介した内容の他にも、「売上が上がらない」「良い人材が確保できない」「差別化できない」などの悩みをデザインの力で解決する方法を紹介しています。

 

 

 

ウジトモコ 著『あらゆる問題解決の糸口になる視覚マーケティング戦略』
伸びている企業は、左脳から右脳へと思考をシフトしています。デザインを戦略に取り込み、問題解決を図っています。なぜ、多くの経営者から次から次へと佐藤可士和のもとに仕事の依頼が舞い込むのか? ビジネスを飛躍させる可能性をデザインに見出しているからです。どこの企業でも抱えているような「売上が上がらない」「良い人材が確保できない」「商品力がない」「差別化できない」などの悩みを解決するのが視覚マーケティング戦略です。Amazonで書籍の詳細を見る。