いつの時代でも、経営者が頭を悩ませることの一つに人材の問題があります。特に、近年は早期離職率が高止まりし、「採用に力を入れても離職されてしまう」「人材が定着しない」という話をよく耳にします。そこで今回は、『株式会社ミツカリ』の代表取締役社長CEOである表 孝憲氏へのインタビュー取材を元に、人材の定着率を高めるにはどうしたらよいかについて解説していきます。
改善されない早期離職率
冒頭にお話ししたとおり、現在の日本企業の早期離職率は高止まりしている状況です。厚生労働省が発表した大卒新卒者の3年以内の離職率のデータを見ると、2017年卒が32.8%で、2010年卒以降から7年連続で30%代前半の数字になっており、企業の早期離職に対する様々な対策があまり実を結んでいないという状況が見て取れます。では、どのような理由で離職をする人が多いのでしょうか。
大手転職サイト『リクナビ』にある「退職理由の本音ランキング」を見ますと
- 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった
- 労働時間・環境が不満だった
- 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった
- 給与が低かった
- 仕事内容が面白くなかった
- 社長がワンマンだった
- 社風が合わなかった
参考:リクナビNext
このように、退職理由の多くは上司や部下とうまくいかなったことや社風が合わなかったことなど、人と人、組織と人のミスマッチに起因しています。つまり、早期離職を減らしていくためには、社風を含めた組織と人の相性を見ていくことが重要になります。
表氏は前職の証券会社で面接官を担当している中で、ミスマッチに関する悩みを抱えていました。何度も対面での面接を行い、厳選を重ねて採用したにも関わらず、どうしても入社後のミスマッチが改善されなかったのです。
そんなとき、ふと証券会社は市場や企業の“データ分析”を活用した業務を進めているにも関わらず、採用ではデータが活用されていないことに気づいたそうです。そこから採用応募者のデータはもちろん、すでに所属している社員たちのデータも集め、組織との相性を採用基準として見るようにしていったところ入社後のミスマッチが減りました。この経験が現在の適性検査で採用・配属のミスマッチをなくす「ミツカリ」というサービスの開発につながっています。
組織と人の相性を見てミスマッチをなくす
ミスマッチをなくし早期離職を防ぐためには、採用と配属後のマネジメントの2段階で考える必要があります。まず採用の段階では、会社にカルチャーフィットしている人かどうか、入社後は配属先でチームのメンバーが新しい仲間に合わせた適切なコミュニケーションを取れているかどうかが大切になります。
①採用段階でのカルチャーフィット
採用段階で社風にマッチした人、カルチャーフィットした人材を見つけることができればミスマッチを減らすことができます。採用面接時にはついつい能力に目がいきがちですが、いくら能力が高くても会社の社風にフィットしていなければ、離職につながる可能性が高くなります。
そのため、まず把握するべきことは自社の社風がどのようなものか、どういう人材が自社の社風にフィットするのかをきちんと分析することです。それらをきちんと把握した上で採用応募者にも適性検査を受検してもらい、面接時に適切な質問をして人間性を見ていくことが重要です。社風とあまり相性のよくない人に社風と合うような人物になってもらうことはそもそも難しいですし、たとえ可能だとしても時間も労力もかかります。であれば、社風を定量的・定性的に可視化し、相性のいい人をきちんと採用できる仕組みを整えるほうが有益です。
②相手に適したコミュニケーション
組織と人の相性の次は、人と人、つまり社員同士の相性にも気を配ることです。よく社内の人間関係を向上させようと、交流会や社員旅行に力を入れる企業がありますが、そんな企業努力も虚しく、離職率に変化が見られないということもあるのではないでしょうか。そもそも「社員旅行なんか参加したくない」なんていう社員がいるという話も耳にします。交流会や社員旅行などのイベント行事は、当たり前ですが好きな人もいれば苦手な人もいる。重要なことは相手に合わせたコミュニケーションです。
社風にマッチした社員同士といっても、性格や価値観は様々です。ですから、相手の性格や行動傾向などを把握し、相手に合わせたコミュニケーションを取ることで、「上司と合わない」といった理由での離職を減らしていくことができます。そのためには、適性検査の結果など、相手ことを理解できる客観的なデータがあると非常に役に立ちます。せっかく適性検査を行っても採用面接のときにしか活用していない企業が多いですが、入社後に社員同士がお互いのことを理解する際にもデータは大いに活用できます。
実際に、表氏が提供する「ミツカリ」を導入した企業が、採用から配属、その後のマネジメントに適性検査の分析を活用した結果、離職率が半分以下になった事例がいくつもあるそうです。
相性を考慮すると生産性向上につながる
社内の人間関係が改善されることによって得られるのは、離職率の改善だけではありません。心理的安全の確保にもつながるのです。
心理的安全性とは、幅広い概念ですが、職場で誰もが恐怖や不安を感じることなく、自分の意見を自由に発言できる状態です。心理的安全性が確保された職場では、主体性が高まり、社員同士や部下上司間の意見交換が活発になってアイデアの共有が盛んになるため、生産性向上につながると言われています。
組織と人の相性を考え、社内の人間関係を改善することで人材定着率を上げ、さらに心理的安全性を確保することで、生産性を向上させていきましょう。
代表者さまからのメッセージ
早期に退職されてしまうと、採用にかけたコストや時間が無駄になってしまいます。「ミツカリ」のように、組織や人の相性をデータ化して活用できれば、採用・人事などの人に関する経営の問題は大きく前進するはずです。「ミツカリ」は社員を大切にする企業様にこそぜひ使っていただきたいサービスです。
表 孝憲(おもて・たかのり)
株式会社 ミツカリ 代表取締役社長CEO
URL:https://mitsucari.com/
東京都渋谷区恵比寿2-28-7サテライトフロア1422