この記事では「退職勧奨とは何か」をご紹介します。人事コンサルタントの内海正人さんが著書今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方で解説している内容をもとに編集しています。

裁判における判例などをもとに、退職勧奨の意味や実際に行うときにトラブルを防ぐためのポイントを確認していきましょう。

目次

  • 退職勧奨とは
  • 「退職勧奨」と「解雇」の違い
  • 退職勧奨に関する裁判の事例
  • 退職勧奨のトラブルパターン

内海正人

人事コンサルタント。日本中央社会保険労務士事務所 代表。

退職勧奨とは

業績が悪い場合に、社員に退職を勧めることがあります。これを専門用語で「退職勧奨」(たいしょくかんしょう)といいます。

この退職勧奨について、詳しくみていきましょう。

「退職勧奨」と「解雇」の違い

「退職勧奨」と対で使われる言葉が「解雇」です。

「解雇」とは、会社が社員を「クビ」にすることです。一方、「退職勧奨」とは、会社が社員に「肩たたき」をして、「辞めて頂く」ことをいいます。

ちなみに、退職勧奨そのものに法的効果はありません。しかし、実際の現場で使われるのは「解雇」よりも「退職勧奨」なのです。これは社員本人の意思を引き出すことで、解雇よりも退職へスムーズに運べるからより多く使われているのです。

退職金・失業手当について

もちろん、退職勧奨を受けた社員は退職に応じる義務はありません。しかし、これを受けて退職すると、次のようなことになる場合があります。

  • 退職金の割り増し
  • 失業手当が通常の自己都合退職よりも手厚い

退職勧奨によるトラブル

逆に、退職勧奨に応じなければ、

  • 仕事を取り上げられる
  • 配置転換、遠隔地への異動

などの嫌がらせなどをされることがあります。

最近は不況の影響もあり、リストラが増え、この退職勧奨がトラブルとなるケースが増えています。その理由は、退職勧奨が法的にグレーな部分を含んでいるからなのです。

解雇には法的なルールが存在する

このグレーゾーンを考える前に、解雇について見てみましょう。解雇には法的なルールがあり、次のことがポイントになります。

  • 就業規則に書かれている解雇理由に該当するか(社員側の問題)
    → 例:業務命令違反、横領など
  • 社員のリストラが必要な条件に該当するか(会社側の問題)
    → 例:事業の縮小、営業所の閉鎖など

これらに該当しないと、法的には解雇をすることができないのです。そこで、会社は退職勧奨という方法を使っています。辞めて欲しい社員に対して、退職の誘いをかけるのです。

「辞めて欲しい社員」とは、主に「給料は高いが、能力は低い社員」です。

「退職勧奨」と「退職強要」

もちろん、社長が単に気に入らないという理由だけでも退職勧奨することは可能です。しかし、社員に退職の意思がないならば、それ以上に勧奨する行為は「退職強要」となり、問題が発生するのです。なぜならば、退職強要は損害賠償の対象になる可能性があるからです。

では、退職勧奨が退職強要にならないためにはどうしたらいいのでしょうか? 大きなポイントは「回数」と「時間」です。

これに関して、参考となる判例があります。

退職勧奨に関する裁判の事例

全日空事件 大阪高裁 平成13年3月

  • キャビンアテンダントがタクシー事故でむち打ち症になり、休職
  • 復職に関して、退職勧奨を実施
  • 5人の上司から、4ヶ月にわたり30数回の退職勧奨
  • 8時間もの長時間の退職勧奨もあり

結果、会社はキャビンアテンダントを退職に追い込みました。しかし、納得のいかないキャビンアテンダントが裁判所に訴えたのです。そして、次のような結果となりました。

裁判所の判決「この退職強要は違法」

  • この退職強要は違法である
  • 精神的損害に対する慰謝料として80万円を支払う

退職勧奨が違法とならないためのポイント

このような結果にならないために大切なことは何でしょうか? それは、

  • 退職勧奨に至った経緯
  • 退職するにあたっての優遇策(例:割増退職金など)

などを、誠意を持ち、プライドを傷つけないように伝えることです。

退職勧奨のトラブルパターン

退職勧奨がトラブルになるのは、社長や上司が上から目線で対応することも大きな原因の1つです。

社員からすれば、退職の場面では社長も上司もありません。ここでの感情のもつれが生じ、トラブルになるケースが多いのです。問題が大きくなれば、裁判、労働組合の交渉となる場合もあります。だから、やりすぎの退職勧奨は避けるべきなのです。

あくまでも退職勧奨は、法的にグレーな部分を含む行為なのです。

退職勧奨によるトラブルを防ぐ

そのため、トラブルを防ぐために次のようなことも検討しましょう。

  • 社会保険労務士、弁護士などの専門家に意見を聞く
  • 再就職の支援をする

不況の影響もあり、退職勧奨がトラブルの火種となっているケースが増えています。繰り返しになりますが、退職勧奨には法的な効力はありません。しかし、やりすぎると、損害賠償の対象になってしまうのです。

そして、実際の現場では解雇の前に退職勧奨を打診するケースが圧倒的に多いのです。ここはよく憶えておかないとヤケドしますので、注意してください。

さいごに

 この記事では、内海正人さんの著書より「退職勧奨とは何か」についてご紹介しました。

この記事のポイント

  • 退職勧奨とは、業績が悪い場合に、社員に退職を勧めること。
  • 退職勧奨そのものに法的効果はない。
  • 「退職強要」とみなされると、損害賠償の対象となる場合もある。

『今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方』
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