この記事では、「人材の募集方法」「募集のコツ」について、リクルートエイブリック(現在のリクルートキャリア)で支社長、人事ゼネラルマネージャーなどを歴任し、現在は株式会社ミライフの代表を務める佐藤雄佑氏の著書『いい人材が集まる、性格のいい会社』よりご紹介します。

5つの人材募集方法、「人材紹介エージェント」「リファーラルリクルーティング」「ソーシャルメディア」「Wantedly」「indeed」について、それぞれの特徴や募集のコツを解説します。

人材紹介エージェントとの上手な付き合い方

日本における採用メインチャネルは求人広告と人材紹介

社員・契約社員といった社員としての雇用形態の採用においては、求人広告と人材紹介というのが二大採用チャネルです。

求人広告はリクルート、マイナビ、enジャパン、インテリジェンスといった求人広告媒体を持つ企業にお願いすることになりますし、人材紹介はこちらも大手ではリクルート、インテリジェンス、JACといったところをメインに、エグゼクティブクラスなのか若手なのかといったレイヤー、業界、職種などに特化した人材紹介エージェントを活用している会社が多いのではないでしょうか。

これらパートナー企業との付き合い方はとても大事です。特に中小・ベンチャー企業においては、求人広告に載せてもなかなか欲しい人材が受けてくれず、結果として人材紹介をメインチャネルとして使っている企業が多いのが実情だと思うので、人材紹介エージェントとの付き合い方がとても大事です。

人材紹介エージェントとの上手な付き合い方

では、どのように人材紹介エージェントと付き合っていくのがいいのでしょうか。大事な点は大きく分けて3つで、「パートナーとして付き合うこと」「応募者にとっての自社を受ける理由を伝えること」「コミュニケーション頻度」です。

パートナーとして付き合うこと

エージェントの方を外部の人だと置くのではなく、内部の人だと思い、できるだけしっかりと背景や組織状況など情報共有をしていくことで、エージェント側もいろいろと提案ができます。

応募者にとっての自社を受ける理由を伝えること

会社概要・事業内容も大事なのですが、中小企業においてここだけで差別化できて、自社に応募がたくさん来るということはないので、少し俯瞰して見たときに、自社で働く意味、やりがいが何かというのをエージェントに伝えます。そして、エージェントの方が自社の良さを理解してくれて、ファンになってくれたらご紹介が出てくる確率はかなり高まります。

コミュニケーション頻度

多くのエージェントはいろいろな案件を抱えて動いているので、その中で優先順位が下がってしまうとなかなか紹介も出てきません。そうならないためには、優先して自社の活動をしてもらえるように、細かく進捗共有などをしながら、コミュニケーション頻度を保つことが必要です。

参考:元リクルート幹部が解説!人材紹介会社との上手な付き合い方

採用チャネルが多様化してきた

昨今のように、採用市場全体が拡大しているうちは引き続き、求人広告と人材紹介がリクルーティングチャネルにおいてメインであることは当分は変わらないと思っています。

一方で、2010年くらいからHRTech やソーシャルリクルーティングという文脈で新しいサービスが成長してきています。恐らく市場全体が伸びていることから、当面はシェアを食い合うということではなく、共存しながらいろいろなサービスが増えていくのではと私は思っています。

特徴としてはDBやビジネスSNSという形でプラットフォームを形成して、そのプラットフォームを介して、企業と候補者が直接繋がれるしくみをつくっていることです。具体的な企業としては、ビズリーチ、Linkedin、Wantedly であったり、インターネット上にある求人情報を集めて、まとめて見れるアグリケーション型の求人検索エンジンで、求人版Google とも呼ばれている indeed なども急成長を遂げています。

リファーラルリクルーティングがさらに伸びていく

採用活動というと、人事部の仕事で、事業計画や現場からのニーズが人事に集まってきて、それを人事がコントロールしていくといったイメージがあるかもしれませんが、最近はトレンドが大きく変わってきています。一言でいうと全員人事であり、全員で採用に取り組んでいくことになります。

実際、海外ではリファーラルリクルーティングは盛んに行われており、日本でも間違いなく伸びてくると思っています。「リファーラル」とは、いわゆる社員紹介・OB紹介などによる採用で、日本的に言えば縁故採用です。

この古くて新しい採用手法はSNSの浸透などもあり、形を変えて進化しています。日本でもSNSの浸透により、人とのつがなりが見えやすくなってきていますし、自社社員の友人は、同じような志向性だったり、学校・学部での勉強やビジネス経験をしていたりするので採用レベルである可能性も高いですし、何より社員自身が第一スクリーニングをして、紹介してきますので精度は高いです。

実際、リクルートキャリアでもそのような取り組みで成果が出てきてますし、最近急成長しているメルカリやfreee でも採用の多くはリファーラル採用です。

ポイントは「社員が自社のことを好きかどうか」

リファーラル採用が成功する会社と、そうでもない会社というのがあるのですが、その要因はシンプルで、「社員が自社のことを好きかどうか」です。

友人を紹介するわけなので、いくらお金やご馳走などのインセンティブをもらったとしても、自分自身が自社のことを好きだと思っていなければ、友人に勧めることはできません。

ソーシャルメディアの活用

Facebook が設立されたのが2004年、Twitter が設立されたのが2006年、この2社に代表されるようなSNSはこの10年で全世界に浸透し、私たちの生活に大きな影響を与えています。それと同じくして、採用の世界でもSNSを活用していこうという動きが顕著になってきました。

情報発信の場としては、企業がFacebookページやTwitterのアカウントをつくったり、YouTubeやUstreamなどの動画配信サービスを活用して情報発信をしていくケースなども多く見かけるようになってきています。

SNSでの情報発信は、フォロワーに対する情報発信はもちろん、シェアされ、拡散していくということが特徴です。そこで、大事になってくるのがコンテンツソーシャルリクルーティングになります。

Wantedly はリクルーティングビジネスのゲームチェンジャー

ビジネスSNSの出現

Facebook やTwitter のような一般的に使われているSNSとは別に、ビジネスSNSというジャンルのサービスが出てきました。代表企業はアメリカのLinkedinです。Linkedinは2003年にサービスを開始したビジネスSNSで、2016年5月現在4億人以上が登録しているSNSで、日本では2011年よりローカライズしてサービス展開をしています。

ただ、海外ではスタンダードであるビジネスSNSですが、日本での登録はわずか160万人程度であり、浸透しているとは言えません。日本の雇用慣習などを考えると、自身の経歴をオープンにして、新しい機会を待つという考え方がそもそもない、馴染まないことと、それをすることで周囲から転職するつもりだとレッテル貼られてしまう懸念があることが起因しているのではないかと思っています。なので、海外のよう採用のインフラとして使われるような状態まではほど遠い状態です。

それに対して、2010年に日本で生まれたサービスがWantedly です。このサービスが爆発的に利用企業社数、登録ユーザー者数が増えてきています。そして、私はこのWantedly の成長に、中小・ベンチャー企業の採用の勝ち方が詰まっていると思っています。

Wantedly はリクルーティングビジネスのゲームチェンジャー

Wantedly(ウォンテッドリー株式会社)は2010年に設立された新しい会社です。私はWantedly はこれから日本の採用マーケットを大きな影響を与えていく可能性があると感じています。

ビジネスモデルとしては、企業が自社の採用情報をWantedly に掲載し、それをSNSで拡散し、候補者が自身のタイムラインに流れてきたコンテンツに目が留まり、サイトを閲覧し、興味を持ってもらったら、企業とコンタクトを取り、相互理解を深め、選考に進んでいき、双方合意で入社決定するというサービスなのですが、いくつも画期的だと思えることがあります。

1つ目はリーチする対象が転職を考えている転職顕在層ではなく、「転職潜在層」であることです。転職潜在層にリーチできるメリットは、そもそも転職を考えていないような、現職で評価され、満足しているような優秀層にリーチできる点です。SNSでの拡散を利用した展開であり、社長、社員を起点にそのネットワークで広がっていくので、基本的には近い属性の人達にリーチすることができます。

2つ目は「費用対効果の高さ」です。従来、求人を1案件、求人広告に掲載すると、それだけで70万〜100万円くらい掛かりますし、人材紹介では年収の30%だとして、年収500万円の人を採用したら料金は成功報酬で150万円掛かります。それに対して、Wantedly は月額3万円(トライアルは無料)から使えて、しかも成功報酬がありません。仮に年間使ったとして36万円であり、ここから1人採れただけでも圧倒的に安いのですが、Wantedlyは求人課金ではないので、求人も出し放題なのです。つまり、Wantedlyで採用できればできるほど、1人当たり採用単価は圧倒的に下がってきます。

また、その他料金体系としては、基本料金の他に、オプションがあり、より広告効果を高めることができるようになっています。Wantedly社長の仲さんがFacebook出身であり、従来のリクルーティングビジネスの発想というよりは、異業界からの参入だったからこそ、全く違うビジネスモデルであり、まさにゲームチェンジャーとしての美しい新規参入だったと思います。

最後、3つ目は「ビジョン、社風が表現しやすい点」です。Wantedlyではまさに、経営理念である「シゴトでココロオドル人をふやす」に沿ったインターフェイスになっており、人ややりがい、ビジョンや社風といったところで企業が選べる仕様になっています。

逆に、求人広告等では必ず記載されている『給料』『条件』の記載はNGで、従来の求人広告や人材紹介のアプローチとは一線画すものとなっています。この仕様を一言でいうと「性格」勝負なわけです。

私自身、この仕様を見たときに、「これは素晴らしい!」と思ったのと同時に、新しい採用のスタイルが生まれたと確信したのを覚えています。

Wantedly自体、これからもっと成長していき、日本のリクルーティングビジネスに旋風を起こしていくと思いますし、Wantedlyが広がっていくことで、より「性格のいい会社」も増えていくのではと思っています。

アグリゲーション型求人検索エンジン indeed

業界のディスラプター(破壊者)としてのindeed

ダイレクトリクルーティングと言われる、企業が直接候補者と接点を持って採用していく手法には2つの流派があって、1つは人材データベースに対して、スカウトメールを送り、そこから採用につなげていくというもので、このモデルは古くからあります。

もう1つが、アグリゲーション型求人検索エンジンであるindeed経由で、直接自社採用サイトで募集をして、そこからダイレクトに採用をしていくモデルです。私はこのindeedがリクルーティングサービス業界を大きく激変させるディスラプター(破壊者)としての影響を持つと思っています。

indeedは2004年にアメリカのテキサス州オースティンで設立された会社で、アグリゲーション型求人検索エンジンを運営している会社です。2012年にリクルートが買収し、現在はリクルートグループになっています。2016年現在、60カ国、28言語でサービス展開していて、掲載JOB数は1600万件と世界最大の求人サイトになっています。

企業の人材採用にとってindeed の何がすごいかというと、大きく3つあります。

1つ目は世界トップレベルのSEO技術により、Google やYahoo! といった検索エンジンで求人を探していたり、転職しようとしている転職顕在層に対して、圧倒的にリーチできること。

2つ目はindeedから直接、企業採用サイトにリンクを張ることで、求人広告や人材紹介エージェントを介さず、ダイレクトにリーチできること。ずっと採用に携わってきた私の感覚では、自社の採用サイトでいい人材が採用できるなんて、これまで夢にも思わなかったですが、indeed の登場によりそれが実現できるようになりました。

3つ目は今までの料金体系とは大きく異なり、案件ベースではなく、クリック課金となっており、料金も自分で利用上限などを決めることができることです。もちろん、採用できるかどうかで、採用単価は変わりますが、多くの場合は求人広告や人材紹介に比べて、費用対効果が上がるのではと思います。

企業が採用チャネルを選ぶポイントは「いい人材を、楽に、安く採用したい」ということに尽きるのですが、indeedはまさにこれに対して三拍子揃ったサービスであり、今後はそれであれば、求人広告や人材紹介エージェントは使わないという会社が多く出てくると思っています。それで私はindeedが業界の構造を大きく変えていくディスラプター(破壊者)だと呼んでいるわけです。

indeedですべての求人が採れるとは限りませんが、転職顕在層の採用では、ファーストチョイスとして、まずはindeed+自社採用サイトで採用しようという流れになってくるでしょう。

そして、ダイレクトリクルーティングをするということは、よりエージェント頼みではなく、自社で採用ブランディングしていく力が求められます。

さいごに

この記事では、「人材の募集方法」「募集のコツ」について解説しました。より詳しい内容を知りたい方は『いい人材が集まる、性格のいい会社』(佐藤雄佑 著)をお読みください。

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書籍『いい人材が集まる、性格のいい会社』では、今回ご紹介した内容の他にも、働きがいを備えた、多様な働き方が可能な会社を実現するための方法が紹介されています。「いい人材が集う会社にしたいが具体的に何をしたらいいのかわからない」と悩んでいる経営者の方は是非チェックしてみてください。

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佐藤雄佑

株式会社ミライフ 代表https://www.miraif.co.jp/
2016年、株式会社ミライフ設立。働き方変革事業、戦略人事コンサルティング事業などを展開している。事業構想大学院大学 プロジェクトディレクター、米国CCE,Inc 認定GCDF-JAPAN キャリアカウンセラー、NPO法人ファザーリングジャパン会員。

Facebook:yusuke.sato.716

 

【参考】佐藤雄佑.いい人材が集まる、性格のいい会社