この記事では解雇の「意味」や「種類」「手続きのポイント」について、特定社会保険労務士内海正人さんの著書『今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方』よりご紹介します。
解雇とは
解雇とは退職と異なり、有効に存在していた労働契約を会社から一方的に解約することです。
一方的に解約されると、社員は路頭に迷うかもしれません。なぜなら、社員は会社から毎月もらう給料で生活しているからです。よって、一方的な打ち切りで生活を脅かされては、安心して生きていけません。そのため、解雇については労働基準法でいろいろな制限が加えられ、社員、労働者の保護を図っているのです。
まず「解雇」となると、「面倒くさい」と頭をよぎる社長が多いです。これは、「法律の知識が正確に伝わっていない」、「解雇でこじれると裁判になる」など、実施するには高いハードルを越えていかないといけないイメージがあります。
解雇の制限が発生する事由
実際、解雇の手続きは、法律で決められた「解雇を制限している」事由に該当するかどうかの確認が必要です。解雇の制限が発生する事由とは、次のような法律があります。
- 労働基準法
- 男女雇用機会均等法
- 育児介護休業法
- 労働組合法
それぞれ、解雇の制限について以下のように記載されています。
労働基準法による制限
・仕事の影響により病気やけがとなり、休職している期間とその後30日
・産前産後の休職している期間とその後30日
・国籍、信条などによる解雇
・労働基準監督署等に「垂れ込んだ」ことを理由に解雇
男女雇用機会均等法の解雇制限
・女性であることを理由とした解雇
・女性社員が結婚、妊娠、出産したことを理由とする解雇
育児介護休業法の解雇制限
・社員(男性含む)が育児介護休業を申請または取得したことを理由とする解雇
労働組合法の解雇制限
・労働組合の組合員であることを理由とする解雇
・労働組合に加入、または組合を結成しようとしたことによる解雇
・不当労働行為の申立、または証拠を提出したことを理由とする解雇
解雇には3つの種類がある
「解雇」についてもう少し考えてみましょう。まず、解雇には3つの種類があります。
- 普通解雇
- 懲戒解雇
- 整理解雇
この3つは、解雇理由に大きな違いがあります。それぞれの意味と解雇理由の違いについて確認してみましょう。
普通解雇
普通解雇は、労働契約の契約を継続しない事情により解雇を行うことです。
普通解雇の解雇理由となり得ること
- 社員の労務提供の不能
- 社員の規律違反行為
参考:普通解雇とは?手続きのポイントや懲戒解雇との違いを解説
懲戒解雇
懲戒解雇は、社員が服務規律に違反し、懲戒処分の1つとして行われる解雇です。
懲戒解雇の解雇理由となり得ること
- 経歴詐称
- 職務怠慢
- 業務命令違反
- 職務規律違反
- 私生活上の非行
- 無断欠勤
- 横領
- 暴力行為
- セクハラ
整理解雇(リストラ)
そして、整理解雇とは、リストラのことです。経営上の理由により、人員整理のために行うことです。
整理解雇の解雇理由となり得ること
- 倒産
- 会社整理
- 事業の縮小
- 部門の閉鎖
解雇手続きを行う時の3つのポイント
解雇を行う時に抑えておくべき3つのポイントについて解説します。
解雇予告は退職日の30日前までに行う
辞めてもらう日(つまり退職日)から30日前に解雇予告を行わなくてはなりません。方法は口頭でも書面でもどちらでもOKです。しかし、トラブル防止のためには書面の提出がいいでしょう。
解雇予告通知書の例
また30日前というのは、予告した当日は含まれません。例えば、11月30日に辞めてもらいたい場合は、遅くとも10月31日までに解雇予告を行わなければなりません。そして、予告をする場合は、具体的に解雇をする日を決めないとできません。
それと、解雇予告後、社員が「解雇理由の証明書」を請求したときは、証明書を発行してあげないといけません。
解雇予告手当が必要な場合
また、解雇予告を行わなくても辞めてもらう手段はあります。
「解雇予告手当」を渡して辞めてもらう方法です。その日に解雇を実施したいのであれば、即日に平均賃金の30日分以上の解雇予告手当が必要になってきます。
解雇予告と解雇予告手当の併用
さらに、解雇予告と解雇予告手当の併用も可能です。
たとえば、10月31日の解雇を10月の20日に予告をしました。このような場合は、解雇の日(10月31日)から解雇の予定日までの19日分の解雇予告手当を支払えばいいことになります。
懲戒解雇を行うとき
懲戒解雇を行うときにこの手当を支払いたくない場合は、労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を申請することができます。この申請を行って認められれば、解雇予告手当の支払いをしないですぐに解雇できます。
退職金の支払い
基本的に解雇を行う場合にも、退職者への退職金は支払う必要があります。
ただし、懲戒解雇を行う場合には退職金を減額、あるいは支給しないということもできます。退職金規程の中にこの取扱いを記載しておけば可能です。
さいごに
この記事では解雇の「意味」や「種類」「手続きのポイント」について解説しました。
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内海正人
日本中央社会保険労務士事務所代表(https://www.roumu55.com/)
人事コンサルタント・特定社会保険労務士。人材マネジメントや人事コンサルティング及びセミナーを業務の中心として展開。現実的な解決策の提示を行うエキスパートとして多くのクライアントを持つ。著書に『会社で活躍する人が辞めないしくみ』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
Facebook:masato.utsumi1
【参考】内海正人.今すぐ売上・利益を上げる上手な人の採り方・辞めさせ方