この記事では「利益を生むチームとリーダーシップの条件」について株式会社チームダイナミクス代表三浦将さんの著書『才能スイッチ』より解説します。

高い利益を生むチームの条件

著書『Give and Take』で有名な、ペンシルベニア大学ウォートン校のアダム・グラントとノースカロライナ大学チャペルヒル校のデイビッド・ホフマンは、アメリカの宅配ピザチェーンである調査を行いました。調査では、各店舗あたり平均6人から7人の従業員にアンケートが実施されました。

ポイントは「リーダーシップとメンバーシップの組み合わせ」

その結果わかったことは、上司が外向的(指示をテキパキと出すタイプ)で、従業員が受動的であると、利益が有意に高く、従業員が能動的だと有意に低くなるということです。そして、上司が外向的で、従業員が能動的な店舗は、上司が内向的(指示をテキパキと出すというよりも、任せるタイプ)で、従業員が能動的な店舗に比べ、利益が14%も低くなることが判明したのです。

利益の高い順の組み合わせは以下の通りです。

  1. 内向的上司+能動的な従業員
  2. 外向的上司+受動的な従業員
  3. 外向的上司+能動的な従業員
  4. 内向的上司+受動的な従業員
上司が外向的で、従 業員が能動的な店舗は、上司が内向的(指示をテキパキと出すというより も、任せるタイプ)で、従業員が能動的な店舗に比べ、利益が 14%も低 くなることが判明

 

ピザ店舗での仕事は、どちらかというとオペレーショナルな側面が多い仕事です。この調査にもあるように、オペレーショナルな仕事というのは、指示をテキパキと出すリーダーがいて、部下が受動的に効率的にそれを実行することで、ある程度の高い成果を出すことができます。「リーダーが答えを持っている」状態であれば、これはこれでちゃんとワークするのです。この構造は、リーダーは指示を出す人→チームメンバーはそれを効率的に実行する人という構造で、リーダーの指示が的確で、メンバーがそれを忠実に実行している限りは、高い成果に結びつきます。

リーダーに必要な資質

たとえば、高度成長期時代の日本はこの状態で、「部下は俺の指示に従っていればいい」というようなストロングリーダーが、従順な部下たちをグイグイと引っ張ることで、結果を残すことができました。この構造では、部下たちはあまり俯瞰的にものを考える必要がなかったり、疑問を持つ必要がなかったりするのです。逆にそれらを考える能動的な部下は、「出る杭」として疎まれるような状態にもなり得るのです。

一方、「不確実性の時代(VUCA)」といわれる現在は、リーダーが答えを持っていない(持てない)ケースが多い状態です。そのため、イノベーションを生み出すためには、チームメンバー一人ひとりが能動的で自主自立的になっていく必要があります。そのためにも、必要以上に指示を出さないことで、メンバーが自然と自主的になるようにしていくことが大切です。

「横の関係」で、メンバーの潜在能力を引き出す

そして、能動的で自主自立的なチームメンバーたちを持つリーダーは、メンバーと「横の関係」で、メンバーの潜在能力を引き出すことによって、成果を上げていくのです。

ここで勘違いしていただきたくないのは、外向的な人がイノベーションを目指すリーダーに向いていないということをいっているのではないということです。必要以上に指示を出すことを抑え、しっかりと横の関係で、傾聴や承認(目の前の人の可能性を承認すること)をしながら、チームメンバーの潜在能力を引き出すことをしていけばいいのです。

メンバーの能動性や自主自立性がまだまだ育っていない場合に成果をあげるには、2つのやり方があります。1つは、傾聴や承認を丹念に行い、それらを育てることに注力するやり方。もう1つは、テキパキと指示を出し、手っ取り早く効率を上げていくやり方。後者は手っ取り早く、前者には忍耐が必要です。しかし、イノベーションを起こすためにはどちらのやり方を取るのがいいかは、もうおわかりですね。

チームメンバーの成長に大きな影響を及ぼすことは、リーダーの大切な仕事なのです。これができれば、実は子育てもとても良い形で進めることもできます。大人もこどもも「人を育てる」ことにおいて、その基本に違いはないのです。

新時代のリーダーには、ビジョンより大切なものがある

創造的なことに挑戦するとき、前例のないことに挑戦するとき、先のことはなかなか見えません。ベンチマークにするものもなく、模倣する成功例もありません。もしあったら、イノベーションにはならないからです。そんな挑戦の過程では、深い霧のなかを進んでいるような感覚を覚えるような場合もあります。イノベーションというそれまでにないエポックメイキングなことを目指しているチームが、確証性の高いことだけをやっていたのでは、目標にはなかなか到達しません。ましてや、「実績のあること」が意思決定の判断基準になっていては、エポックメイキングなものを産めるはずもありません。

イノベーションを目指すリーダーには、チーム全体の天才性を引き出しながら、「四の五の言わず、とにかく進む」という態度が必要になってきます。革新的なチームは前もって進むべき道を計画するよりもまず行動を起こすのです。

そして、注目すべきはビジョンについての考え方です。ハーバード大学のリンダ・ヒル教授は、こう言います。

「方向性を定めるリーダーシップは、問題の解決法がすでにわかっており、単純な場合にはうまく機能する。しかし、本当に独創的な対応を必要とする問題の場合、どのように対応すべきかを前もって決められる者はいない。ならば当然、人々にビジョンを受け入れさせ、ともかく実行させるという方法でイノベーションを引っ張ることは不可能だ」「ビジョンを設定し、それを追求するように社員を鼓舞することは、イノベーションを引っ張るリーダーの役割ではない」

新時代のリーダーの役割は「強固な関係性を持つ共同体をつくること」

ヒル教授は、世界トップクラスのイノベーションリーダーたちのリーダーシップスタイルを研究するなかで、トップリーダーたちが最も心がけていることについても述べています。それは、

「リーダーの役割とは、新しいアイデアを生み出す意欲があり、また、実際に生み出せる共同体をつくることなのだ」

ということです。ヒル教授の言葉は、ビジョンを設定することを否定しているわけではありません。チームメンバー全員が共感できるビジョンを設定することは、とても大切です。

ただ、イノベーションを目指すリーダーには、ビジョンを設定して、メンバーを鼓舞することよりも、もっと大切な役割があるといっているのです。

それは、メンバー同士で価値観を共有し、強固な関係性を持つ共同体をつくることです。この共同体をつくることが、リーダーの最も大切な仕事だということです。

もし、あなたのチームが明確なビジョンを持てる状態であれば、共同体をつくるという仕事を全うしつつ、全員が共感を持てるようなビジョンを設定して、全員に浸透することをおすすめします。

このとき、「会社のビジョンでは共感を得られないんだよな」と感じている方は、それをチームメンバーの共感を得られるものに翻訳するのも、リーダーとしての大事な仕事です。ビジョンとは「気持ちが高ぶる目標」。この高ぶりが感じられないような、ただ目標数字が並べられているようなものをビジョンとは呼びません。この高ぶりを全員と共有できるような、チームとしてのビジョンを、打ち出してみてください。

一方、もし、あなたのチームが明確なビジョンを持てないような、前人未到のイノベーションに挑戦している状態であれば、共同体をつくるという仕事を徹底させることが、活路を開きます。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

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三浦将

株式会社チームダイナミクス 代表取締役http://www.teamdynamics.co.jp
著書『自分を変える習慣力』『相手を変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)の習慣力シリーズは、累計20万部を突破。他に『人生を変える最強の英語習慣』(祥伝社)『一流の人が大切にしている 人生がすべてうまくいく習慣38』『「できる自分」を呼び覚ます一番シンプルな方法』(PHP研究所)がある。

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【出典】三浦将.
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