この記事では、「リーダーシップと引き出す力」について解説します。

人材育成・組織開発コンサルタントの三浦将さんの著者『才能スイッチ』で解説している内容をもとに編集しています。
【著者】三浦将 株式会社チームダイナミクス代表

チームに溶け込む新しいリーダーの形

この5章は、「イノベーションを目指すリーダーとしての力」と銘打っていますが、目指す目指さないに限らず、これからの時代において、リーダーとして身につけることの重要度が、どんどん高くなっていく力についての話です。そういった意味で、これからの時代のリーダーの「在り方」として、大切な示唆をたくさん含んだ内容になります。

フォロワーシップという名のリーダーシップを持ったチームメンバーたちとつくる共同体において、リーダーを務めることは、「楽しく真剣」ななかにも、リラックスした感覚をつくり出すことにあります。この感覚がチームの風土となり、そんな風土のなかで日々働くことにより、メンバーの心のなかにある様々な枠組みが外れていきます。

これは、私が私の会社のチームで経験し続けていることであり、前出のYさんやTさんを始めとするクライアントさんたちにも起きていることです。「楽しい」という感覚のなかで、自分自身、そしてメンバーの潜在能力が発揮され、自ずと高い業績につながっていく。そんな共同体のなかでは、リーダーは「孤独な存在」ではなく、チームメンバーと融合した存在となるのです。

マイナスの思い込みを捨てる

チームとしての集合天才性(collectivegenius)が発揮されるためには、チームメンバー一人ひとりの天才性をリーダーがどれくらい引き出せるかがポイントです。

人のなかにあるものを引き出したり、気づきを促したりことができる大前提としてあるのは、「相手に対してのマイナスのレッテルを捨てる」ということです。

成長段階にある人間の「まだできていないこと」に注目すると、この「マイナスのレッテル」が強くなっていきます。

たとえば、子育てにおいて、親からこんなことを言われたら、どんなことを感じるでしょうか?

「お前は○○ができないから、人一倍努力しなければいけない」

こどもの気持ちになって、算数なり、英語なり、あなたがあまり得意ではなかった教科を○○のなかに当てはめて、感じてみてください。

やる気は湧きますか?

人一倍努力しようという気になるでしょうか?

こう言われたとき、あなたの気持ちと体は、おそらく萎縮を感じ、その潜在意識は「安心安全」ではない状態になると思います。

この親の言葉は、親がこどもについて、「〇〇ができない子」というマイナスのレッテルを前提として強く持っていることから発生しています。そして、この言葉が日常レベルで繰り返されれば、この親のレッテルが、こども自身の「思い込み」として深く刷り込まれていきます。親としては、こどものことを思い、こどもの成長に協力しようとしているのですが、このようなレッテルがあると、先ほどあなたが感じたような思いを、こどもに持たせる結果となってしまいます。

同様に、上司からこんな言葉があったらどうでしょうか?

「あなたは創造性がないから、人一倍考える必要がある」

いろいろと発想したり、提案したりする気は起きるでしょうか?

上司としては、あなたからより良い提案が上がってくることを期待しての言葉なのだと思います。しかし、このやり取りで、より良い提案は上がってきそうでしょうか?

マイナスの決めつけは絶対にNG

ここには、相手への承認が欠如しています。

この親や上司は、「○○ができない」、「創造性がない」と、相手の今現在の状態の評価を行い、相手がそういう人間だと決めつけているのです。

果たしてこのこどもは、本当に〇〇ができない子なのでしょうか?

この部下は本当に創造性がない人間なのでしょうか?

そして、そんなことを誰がどうやって判断できるのでしょうか?

そう、これは親や上司が勝手に思っている「思い込み」で、事実ではないのです。

このやり取りは、親や上司が勝手に思っている「思い込み」により、こどもや部下の潜在能力の発揮が阻まれる典型的なケースです。

マイナスのレッテルを捨て、プラスのレッテルを貼付ける

逆にいえば、相手に勝手につけたレッテルを剥がすことにより、相手の潜在能力は発揮されやすくなるのです。

思い込みを捨て、相手の可能性、つまり潜在能力を信じることが相手への承認です。可能性とは「未来の能力」です。今、能力と発揮されていないことでも、才能にスイッチが入り、潜在能力が覚醒すれば、能力として現れます。このことを起こすことができる大前提は、相手に対してのマイナスの思い込みを捨て、相手の潜在能力を信じ、承認することなのです。あなたも相手もF1マシンなのです。そのとてつもない潜在能力の多くはまだ発揮されていないのです。相手の潜在能力を信じることが、才能のスイッチをオンにしていくのです。

反対に、相手に対してプラスのレッテルを貼ることは、ぜひおすすめします。

イスラエル防衛軍の兵士105人に対して行った実験があります。実験では、それぞれのクラスの平均能力が同じになるよう、4つのクラスがつくられました。全てのクラスを指導する教官には、「それぞれのクラスは能力別に分けられており、ハイクラスは能力の高いクラス、レギュラークラスは平均的なクラスである」と伝えられました。

学期が終了した時点で行われた能力テストでは、ハイクラスと伝えられたクラスと、レギュラークラスと伝えられたクラスの平均点の差が、100点満点のテストで、何と15点もついたのです。本当は全てのクラスが同じレベルだったのにも関わらず、教官がプラスのレッテルを貼ったクラスの平均点数が、軒並み伸びた訳です。

もし、1つのクラスを「ここはダメクラス」と伝えていたら、教官のそのマイナスの思い込みの影響で、そのクラスの平均点が軒並み低くなることも考えられるということです。

思い込みのレッテルは、プラスにもマイナスにも働くということですね。

「本当にやりたいこと」を聞く

ある大手電機メーカーさんで講演をさせていただいたとき

「チームメンバーの天才性を引き出すといっても、どうやってその天才性を見つければいいのですか?」

という質問を受けました。

どうすればいいと思いますか?

ここでもまず大事なことは、観察です。

相手を観察しながら、相手の興味のあることについて質問をしていく。興味のあることは具体的に何か?なぜ興味が湧くのか?

仕事の話に限らなくても大丈夫です。たとえば、こどもの頃からプラモデルが好きで、今でも休日はプラモデルをつくることや、ラジコンカーを走らせることを楽しんでいるチームメンバーがいたら、

「どんな瞬間が最高?」
「その瞬間のどんなところがいいの?」

など、こちら側も相手の興味に興味を持って聞いてみるのです。いろいろ質問をしていくなかで、相手の特性が見えてきます。相手の天才性は、その特性の近くに存在しています。

そして、聞いてみるのです。

「この人生や、キャリアのなかで本当にやりたいことは何?」

これは1章で、あなたが自分に対して投げかけた質問です。相手がこの「本当にやりたいこと」に気づけば、その天才性は引き出しやすくなっていきます。

たとえば、プラモデルを好きな人のその好きな理由が、「集中して没頭できること」や「できあがっていくプロセスの興奮感」などで、「本当にやりたいこと」が、「こどもや大人に限らず、没頭しながら、何かを一つひとつつくり上げる興奮を提供すること」であったとします。ここには、この人の特性が存在し、天才性の芽が宿っているのです。

天才性を引き出すこともリーダーシップ

私がある方から伝えられた言葉のなかで、とても感銘を受けた言葉があります。

それは、親の仕事とは「本当にやりたいことは何でもできる」と、こどもに伝え続けること。

目の前の相手を、「やりたいことは何でもできる存在」と承認し、その天才性を引き出してあげることは、親の役目であり、リーダーの役目でもあります。

そして、ここで大事なのは、「伝え続けること」。天才性は、いつ芽吹くかわかりません。多くの場合、それなりの時間はかかります。相手の可能性への承認を深く持ち、伝え続けることが重要なのです。

いかに待つことができるか

メンタルコーチングは、相手の気づきを引き出す仕事です。気づきを引き出すときに一番やってはいけないことがあります。

それは、引き出そうと必死になること。

気づきは、自然の行為です。メンタルコーチの方が必死になって引き出そう引き出そうとすると、クライアントの潜在意識が「安心安全」を感じなくなってしまうのです。だからクライアントのなかに抵抗が発生し、引き出されるものも、かえって引き出されなくなってしまいます。

大事なことは、重要な質問をした後は、クライアントの可能性を信じ(承認し)、心穏やかに、気づきが出てくることを待つことです。

同様に、イノベーションを目指すリーダーには、相手からアイデアが生まれてくるまで忍耐強く待つ力が必要なのです。ミーティングの場でもそうですし、プロジェクトの全体のスケジュールを鑑みて、できるだけ早く提案が欲しいときもそうです。いたずらに急かすような態度や言葉で、必死に引き出そうとするのではなく、相手を信頼して待つことです。

もちろん、相手があなたの協力が必要なときもあるので、観察をしながら、必要そうであれば、「進捗はどう?困っていることはある?力になれることはある?」と穏やかに声をかけて、サポートすることも重要です。

私のクライアントのみなさんの例からいっても、仕事ができて、仕事のスピードが速い人ほど、この「待つ」ということをトレーニングする必要があります。実は私も、基本、非常にせっかちな人間なので、この「待つ」というトレーニングは相当やってきました。これができてくると、普通に「仕事ができる人」から、「落ち着きがあり、安心感のあるリーダー」の雰囲気を醸し出し始めるのがわかります。

この「待つ」ということができるのは、こちら側に「心の余裕」があるということでもあります。こちら側に余裕があるからこそ、相手にも余裕を持たせてあげることできるのです。

「どんなに仕事のことで頭がいっぱいになったとしても、絶対に心の余裕を失ってはいけません。そんなことでは良い発想も湧いてこない」

再び稲盛和夫さんの言葉です。心の余裕を持ち、待つことができるようになることで、相手から引き出す力も増していくのです。

さいごに

この記事では、三浦将さんの著書より「リーダーシップと引き出す力」について解説しました。

才能スイッチ


才能スイッチ

『才能スイッチ』では、今回ご紹介した内容の他にも、自信を身につけ「潜在能力」を発揮するための具体的な方法が解説されています。著者が実際に行った研修の事例なども交えた分かりやすい内容です。

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