この記事では、「リーダーに必要なファシリテーターとしての力」について解説します。

人材育成・組織開発コンサルタントの三浦将さんの著者『才能スイッチ』で解説している内容をもとに編集しています。
【著者】三浦将 株式会社チームダイナミクス代表

一人ひとりが自分の意見を出せる環境をつくる

リーダーは、舞台演出家です。

リーダーの演出によって、舞台のフレームが決まります。メンバーはこのフレームに影響され、その潜在能力が発揮できるか、できないかが決まっていきます。

では、最高の舞台というのは、どんな舞台でしょうか?

最も大切なことは、チームメンバーがより素直に、より自然体になることができる環境づくりをすることです。それには、まずリーダー自身が素直に自然体になっていく日々の習慣をつけること。そのためにも、バカになり、空っぽになり、失敗する勇気を持つこと。

そして、普段のコミュニケーションや、会議の場などで、メンバー一人ひとりが、安心して自分の意見を出せる場をつくることです。その場には、張り過ぎず、緩み過ぎない適度なリラックス感があり、常識にとらわれないバカなことも言え、失敗もできる舞台です。

この舞台ができれば、チームの一人ひとりが、その潜在能力を発揮するシナジーが炸裂します。全体がフロー状態に入るような感じになるのです。「燃える集団」と呼ばれた創業時のソニーは、この状態にあったといわれます。

一人ひとりが安心して自由に自分の意見を出せるということは、本当に大切です。特に若い人たちや、経験の浅い人たちが、遠慮せず、自分の意見を出せることは、チーム全体の血流の流れを活性化させます。

事例で見るリーダーの「舞台作り」

以前、私がある病院のチームビルディングを任されたときに痛感したのは、医療界という業界、そして病院という組織の権力格差の大きさでした。

これは「人の命に関する仕事」という性質上、自然にそうなっていくのだと思います。院長を頂点に、医師や看護部長、看護師、介護師などのヒエラルキーは、伝統的に非常に厳格なものです。

この構造があるゆえ、現場の声は、トップである院長にはなかなか届きません。規模が大きくなれば、なるほどそれは顕著です。比較的小さな組織でも、上下の情報伝達の流れは、なかなか自由闊達とはいきません。

しかし、その病院は改革を必要としていました。院長に改革への覚悟を確認したとき、こんなことをお伝えしました。

「まず院長から、現場のみなさんの目線に降りていくことはできますか?」

院長はおっしゃいました。

「できますよ。私は普段からそうしているつもりですが、なかなかスムーズにいかないのが現状です。そういう場をぜひつくりたいと思っています」

何事もまずは小さな一歩からです。

研修の場では、院長も小グループの一員としてディスカッションに加わりました。4名程度からなる小グループには、看護師や、事務方の社員、そしてパートの社員もいます。あるテーマについて、それぞれの小グループで意見を出し合い、短いプレゼンテーションをしていきます。

ディスカッションでは、まずはブレーンストーミングに近い形式で、いかにたくさんのアイデアを出せるかを重視します。付箋を使い、できるだけたくさんのアイデアを出し、それをグループメンバーの一人ひとりがグループ内で発表できる形を取る創発的会議です。5分とか10分とかの非常に短い時間で、1つのテーマについて、グループで結論を出し、発表するというとてもスピード感溢れる会議。

大事な点は、テーマごとにグループリーダーを交代することです。テーマが4つあれば、誰もが1回はリーダーをやる順番が回ってきます。

院長のいるグループでは、院長がリーダーを務めるテーマもあれば、パートの社員がリーダーを務めるテーマもあります。パートの社員がリーダーを務めるテーマでは、院長がフォロワーになります。そして、リーダーの役目として「自由闊達に意見が出る舞台をつくること」、そしてフォロワーの役目として「フォロワーシップを発揮すること」を徹底していただきました。

最初は少し遠慮がちでしたが、徐々にエンジンがかかり始めると、非常に活発な場が各グループにできあがってきました。院長のいるグループでも、「横の関係」で熟議が進み、みなさんの表情も生き生きしてくるのが、見て取れました。

「とても清々しい気持ちで、望むことができました。こんな短い時間で、想像を超えるようなものを、みなさんと生み出せるとは思ってもみませんでした」

そのパート社員の方は、研修の後、非常に明るい表情で答えてくれました。ディスカッションの最中は、一種のフロー状態に入っていたといいます。

院長からはこう伝えていただきました。

「このような場を日常ベースでつくっていけば良いのだと、何だか嬉しい気持ちになりました」

舞台をつくることで、実際にどんなことが起きるかを体験したことによって、舞台をつくることの価値と、素晴らしさを体感していただけました。リーダーとして、自分自身の在り方を成長させ、まわりのメンバーに影響を及ぼす最高の舞台をつくりあげることによって、チームの創造性は生まれていくのです。

リーダーに必要なファシリテーターとしての力

自由闊達に意見が出てくる舞台を設定すると、協働するなかにも、激しい意見の対立が出てきます。知的多様性を基に、知的対立が起こることは、創造性の発揮に向けて、むしろ喜ばしいことであると同時に、リーダーとしてはこのような場を仕切っていくリーダーシップが求められます。

このとき、必要とされるのは、ファシリテーターとしての力。ファシリテーターとして、知的対立(歓迎すべき)が起こる場をいかに仕切ることができるかが肝心なのです。

「仕切る」というと、どうしても管理するイメージを持ってしまう人がいますが、ここでいう「仕切る」は、「管理する」のではなく、「最高のものを生み出すことをどうやって促進していくか?」ということです。

あえて放任する

まずファシリテーターとしては、対話や議論を通じて、チーム内のいくことが大切です。いわゆる喧々囂々、侃侃諤諤という状態をつくり出すのです。そこには、自由な雰囲気と、考え方の多様性(ダイバーシティ)を受け入れる雰囲気を持った舞台設定が必要です。そして、ときには、意図的に介入しない、「意図的な放任」も必要になってくるのです。

これを可能にするのは、

  • 意見がどんどん拡散していく時間を設ける(結論づけしようとしない)
  • リーダーが設定しているゴールをいったん手放す
  • 過度な即効性を求めない

つまり、会議の前半は、簡単にことを収束させようとしないことです。

ファシリテーターであるリーダー自身が、最初から結論や落としどころを持って関わると、舞台は活性化しません。そして、結果が出ても「そこそこ」の結果に留まり、ブレイクスルーにはおよそ到達しないでしょう。

チームメンバーそれぞれの自由闊達な意見を引き出す時間を十分に取り、そのための舞台づくりを徹底させるのです。そういった意味では、ファシリテーターとしてのリーダーは、出てくる意見やアイデアを安易に評価しない、非常にフラットな立場として、その場に存在することが必要となってくるのです。

対話や議論を通じて、創造的摩擦が起き、その産物として、多くのアイデアが出て、熟議が繰り返された後は、リーダーとしての統合的意思決定が必要になってきます。ここがある意味一番大変なところ。異なるアイデアを組み合わせて統合的に意思決定をし、一つのプランとして結晶化する。場合によっては、あるメンバーの案は、ボツになり、あるメンバーの案は全面的に採用されることにもなります。ここをどうメンバーの納得のいく形で行うかがキーとなります。

統合的意思決定は、ちょっとしたスキルで一朝一夕でできるようなものではありませんが、よりスムーズにする方法はあります。

その方法とはどんな方法でしょうか?

フォロワーシップという名のリーダーシップ

それは、メンバーのフォロワーシップを育てることです。

たとえば、先ほどの創発的会議では、非常に短い時間でグループとしての結論を出す必要があります。全員が協力体制を持ち、ゴールへのコミットを共有していないと、課題の達成は、ままならなくなってしまいます。

これまで研修で、何百という場に立ち会ってきましたが、この形式の会議を行うと、参加者のフォロワーシップの感覚が芽生えてくるのがわかります。リーダーたちの集まる研修はもちろんのこと、新人研修の場でも、グループのゴール達成に向けたフォロワーとしてのリーダーシップ(フォロワーシップ)が、参加者のなかからむくむくと起き上がってくるのです。フォロワーシップが出てくると、非常に主体的な参加と、ゴール達成に向けた貢献の行動がどんどん増えていきます。

ここで注目したいのは、メンバーのフォロワーシップが養成されてくると、メンバーはリーダーの意思決定に対して、全面的に協力するようになるということです。フォロワーシップとともに、全体の成果と利益の視点を持てるようになってくるため、個人の意見やアイデアに拘泥することがなくなります。さらには、オープンディスカッションを通じて「グループとしての結論のために何がベストか?」というリーダーと同じ目線を持つようになります。そして、非常に困難な意思決定をしなければいけないリーダーの意思決定を助けるために全力を尽くしてくれるのです。

創発的会議でのリーダー役として、このプロセスを経験した参加者は、口を揃えてこんな感想を述べます。

「フォロワーシップがあるチームのなかでは、リーダーというのは、孤独な立場ではないということが体感できました。まさにチームなのです。リーダーであることが楽しいとまで感じます」

このようなチーム状態のなかでは、たとえ困難な意思決定でも、フォロワーのみなさんに支えられながら、統合していくことができます。この舞台を地道につくりあげることが、リーダーとしての大きな仕事の一つなのです。

フォロワーシップを育てるためには、まずフォロワーシップの概念をチームにしっかりと説明すること。フォロワーシップがいかに大切か、そしてフォロワーシップを持つことが、一人ひとりの将来にいかに役に立つかを知ってもらうことです。そして、さらに大事なことは、チームメンバーの一人ひとりの「本当にやりたいこと」を丁寧に聴いてあげること。

「本当にやりたいこと」を認識することで、自分自身の人生をしっかりと歩む、自分自身へのリーダーシップが強化されていきます。このリーダーシップの強化が、チームにおいてのフォロワーシップの強化にもつながっていくのです。また、1章にも書いたように、「本当にやりたいこと」を聴くことによって、一人ひとりの天才性の片鱗を知ることもできるのです。

私がチームビルディングの研修を行うときは、このフォロワーシップの育成が強力に進むようにプログラムを設計します。ここは本当に徹底します。このことにより、チームメンバー一人ひとりのリーダーシップが、フォロワーシップという形で芽生え、一人ひとりの潜在能力の発揮が進み、そして、チームとして最高の統合的意思決定が行われることになるのです。

さいごに

この記事では、三浦将さんの著書より「リーダーに必要なファシリテーターとしての力」について解説しました。記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

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三浦将

株式会社チームダイナミクス 代表取締役http://www.teamdynamics.co.jp
著書『自分を変える習慣力』『相手を変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)の習慣力シリーズは、累計20万部を突破。他に『人生を変える最強の英語習慣』(祥伝社)『一流の人が大切にしている 人生がすべてうまくいく習慣38』『「できる自分」を呼び覚ます一番シンプルな方法』(PHP研究所)がある。

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【出典】三浦将.
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