この記事では、経営資源における「ヒトの重要性」について、リクルートエイブリック(現在のリクルートキャリア)で支社長、人事ゼネラルマネージャーなどを歴任し、現在は株式会社ミライフの代表を務める佐藤雄佑氏の著書『いい人材が集まる、性格のいい会社』よりご紹介します。

重要な経営資源はヒト、ヒト、ヒト、ヒト

経営の教科書などには、四大経営資源として「ヒト・モノ・カネ・情報」と書いてあります。私も経営学部だったので、大学の授業でそう習いました。でも、それから20年近く経っていますが、私は「ヒト、ヒト、ヒト、ヒト」ではないかと思っています。1にも、2にも、3にも、4にも人であると。

わかりやすいところからいくと、情報なんて、今やインターネットでかなりのことがわかります。昔は情報を持っているか、持っていないかというのが大事な経営資源だったわけですが、今やなんでもGoogle で調べるわけです。

カネも環境が変わってきました。昔は起業するのに資本金を貯めておかなきゃいけませんでしたし、創業間もないベンチャーがお金を貸してもらうのは相当難しかったかもしれません。でも、今や、1円でも会社はつくれますし、事業計画をしっかりつくれば、国やベンチャーキャピタルなどから投資、融資も受けやすい状況になってきています。

最後はモノですが、昔はモノづくりには設備面においても大きな初期投資がかかりましたし、職人のような経験も必要でした。それが今では、3Dプリンターで、いつでも、どこでも、小ロットでモノがつくれたりしますし、ネット系のビジネスにおいては、かなりのものが無料で使えます。

例えば、これからはAI(人口知能)であらゆるものが進化していくと言われていますが、このAIですら、Google は無償で公開しています。開発力がなくても、いきなりGoogle が開発したAI搭載のシステムがつくれるわけです。すごい時代だと思いませんか? つまり、これからの時代の変化に対応していける人がいる会社が生き残り、いなければ苦しくなっていきます。変化対応していける人材こそが、経営資源であると言えそうです。

自分より優秀な人材を採用しろ

リクルートでは「自分より優秀な人を採用しろ」というのが採用基準として、代々引き継がれています。もちろん、全てが全て、この通りうまくいっているとは言いませんが、採用の考え方としては手前味噌ながら、素晴らしいと思っています。

この考え方の起点は、強い会社、組織、新しいビジネスをつくっていくうえで「人が命」だということです。自分がコントロールできる、マネジメントしやすい社員ばかりを採用していたら、いつか会社は衰退します。だからこそ、いい人材を採用し、変化に対応していくこと、そして新しいものをつくっていくことが求められます。

少し脱線するかもしれませんが、私の好きな本に『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』ジム・コリンズ著(日経BP社刊)という本があります。特にこの本の第3章の「だれをバスに乗せるか」という内容が好きなのですが、このようなことが書いてあります。

「このバスでどこに行くべきかはわからない。しかし、わかっていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人はそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはずだ」

すなわち、「何をすべきか」ではなく、「誰を選ぶか」から始めれば環境変化に適応しやすくなるということです。まさにこれからの時代を見通したような内容でびっくりしますが、変化の時代だからこそ、人が大事だということです。私はこの本、そしてこの言葉を当時の社長から教わったのですが、とても本質的ないい言葉だと思っています。

シリコンバレーの人材獲得競争は熾烈

話を海外に移してみましょう。昨年、シリコンバレーに行った際に、Google、Twitter、Dropbox といった日本でもおなじみの会社から、スタンフォード大学関連のインキュベーションオフィスなど、いくつもの成長企業の話を聞く機会がありました。そこで聞かせていただいたスタートアップの秘訣や、ビジネスモデル、チャレンジする風土などに刺激を受けました。その中でも一番驚いたのは「人材採用」についてです。

シリコンバレーにあるIT系の成長企業に共通しているのが、人材獲得命と言っても過言ではないくらい、採用に力を入れていることでした。まさに採用イコール経営戦略です。

もちろん、年収も日本では考えられないくらいの高額を提示していますし、オフィス環境、働き方の多様性なども、どうやったらいい人材が採用できるかというところにフォーカスして、ここまでやるのかと正直驚くほどの手厚い対応をしていました。

例えば、オフィス内には食堂、バーがあり、そこでの食事はいつでも無料で食べられます。社内にジムが併設されていたり、野菜ジュースや健康ドリンクなどがあるなど、社員の健康を気遣っている取り組みも多かったです。また、会社によってはビールなどのお酒まで置いてある会社もありました。

私はこれを日本の企業も真似するべきとは全く思っていません。彼らシリコンバレーのIT系の成長企業はこのようにして、優秀な人材を集める一方で、会社に合わなくて出ていく人材もたくさんいます。半年で退職というケースも結構ありますし、3年いたら長いという印象です。

ですので、例えばFacebook、Google、Apple みたいに企業を渡り歩いている人はたくさんいて、常に人材流動化しています。日本とは雇用環境の違いがありますので、一概に真似したからと言ってうまくいくとは限りません。また、高額な待遇や手厚い福利厚生で招き入れた人は、やはりもっといい条件のところがあったら移ってしまうかもしれません。

ただ、この「人に対する考え方」は真似できると思っています。高い報酬は別として、多様な働き方を認めたり、働く環境を整え、パフォーマンスが発揮しやすい環境をつくっていくことにこだわっています。

シリコンバレーの成長企業の「人に対する考え方」

日本企業では「釣った魚には餌はやらない」「入社したら会社の言うことは絶対」といった考え方に近い会社もまだまだ多い気がしますが、このように社員を起点に、個人のキャリアであり、個人の人生を尊重している会社に人が集まってくるというのはなんとも自然な流れだと思っています。

さいごに

この記事では、経営資源における「ヒトの重要性」について解説しました。より詳しい内容を知りたい方は『いい人材が集まる、性格のいい会社』(佐藤雄佑 著)をお読みください。

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『いい人材が集まる、性格のいい会社』では、今回ご紹介した内容の他にも、働きがいを備えた、多様な働き方が可能な会社を実現するための方法が紹介されています。「いい人材が集う会社にしたいが具体的に何をしたらいいのかわからない」と悩んでいる経営者の方は是非チェックしてみてください。

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佐藤雄佑

株式会社ミライフ 代表https://www.miraif.co.jp/
2016年、株式会社ミライフ設立。働き方変革事業、戦略人事コンサルティング事業などを展開している。事業構想大学院大学 プロジェクトディレクター、米国CCE,Inc 認定GCDF-JAPAN キャリアカウンセラー、NPO法人ファザーリングジャパン会員。

Facebook:yusuke.sato.716

 

【参考】
佐藤雄佑.
いい人材が集まる、性格のいい会社
ジム・コリンズ.ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則