「健康経営」という言葉の定義や、具体的な取り組みの事例を『いい人材が集まる、性格のいい会社』(佐藤雄佑 著)よりご紹介します。

リクルートエイブリック(現在のリクルートキャリア)で支社長、人事ゼネラルマネージャーなどを歴任し、現在は株式会社ミライフの代表を務める佐藤雄佑氏によって、わかりやすく解説されています。

健康経営とは?

健康経営という言葉をご存知でしょうか。1980年代、アメリカの経営心理学者のロバート・ ローゼン氏によって「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」という〝ヘルシーカンパニー〞思想が提唱されたところから来ていますので、考え方としては歴史があるのですが、実際に日本においてよく聞かれるようになってきたのは最近かもしれません。

昨今、まずは大企業から動き出しており、2015年に経団連が発表した資料によるとスポーツイベントの開催など体力増進を狙ったものや、社員食堂で健康メニューを提供するなど食事・生活習慣病対策を狙ったもの、禁煙推進やがん検診受診キャンペーンや復職支援体制の構築、そしてメンタルヘルスへの取り組みなど事例が増えてきているようです。

中小・ベンチャー企業では、健康経営を掲げて、なにか施策を打っているところはまだ多くないと思いますが、社員の人数が多くない分、心身を病んで働けない社員が出てきたときの影響が大きいですので、予防策を打っておくというのはとても大事だと思っています。

また、「心身ともに健康」である状態が一番パフォーマンスを発揮してくれると思います。体調管理も仕事のうちというように、会社としても支援していく、予防していくことが大事になってくるでしょう。

この予防という考え方は、医療だけではなく、ビジネスにおいてもとても大事です。病気でもそうですが、何も起こっていないときから予防するというのは意識が高くないとできないことですが、予防の負荷は低いです。一方で、治療というのは、既に病気になってからの対処なので、やらざるを得ない状況であり、負荷が高いです。ですので、私は健康においても、ビジネスにおいても、先手先手で予防していくことが、結果として安定してパフォーマンスを発揮できる組織づくりにつながるのではと思います。

サトーホールディングスの取り組み

サトーホールディングス株式会社は創業が1940年、スーパーマーケットや配達伝票などのバーコードや電子マネーや乗車券でおなじみのICタグなど、自動で情報を認識したり、入力することができる「自動認識技術」でさまざまなソリューションを提供しているリーディングカンパニーです。これからのIoT時代に欠かせないソリューションを提供する世界が注目する超優良企業であるサトーホールディングスは、歴史のある企業であり、伝統的な産業を行いながらも、働き方改革に積極的に取り組んで、個の強さを活かす会社です。

サトーホールディングス伝統の三行提報

サトーホールディングスの社風を語るうえで、最も特徴的な制度がこの「三行提報(さんぎょうていほう)」です。日本国内を中心に、全社員(約2400人)が毎日社長宛に「127文字以内(3行)」で提案を書く文化があり、1976年より継続しています。これにより経営トップはいち早く社内外の情報や問題点を把握し、必要な施策を講じることができます。

役職や勤続年数に関係なく提案できるこのしくみは、経営トップの迅速な意思決定に役立つだけでなく、社員が経営者と同じ感覚でものを考える「全員参画の経営」を実現しています。運営面でもちゃんと「三行提報システム」をつくり、報告とフィードバックのサイクルがデイリーで行われています。ちなみに全社員の提出率は99.8%と脅威の浸透率です。

ベンチャー企業などでは、社長や経営陣との距離が近いというフラットな会社はありますが、この歴史、この規模でありながら、社員と経営者が直接のパイプでつながっているという企業は多くありません。サトーホールディングスはまさに全社員の声を日々集め続けて、現場の声から会社を変革していく社員を起点としたボトムアップ型の経営をしているお手本ではないかと思います。この文化によって、かなり風通しが良くなっていると思いますし、さまざまな制度、働き方改革に関する取り組みも、この三行提報から生まれてきています。

最高健康経営責任者

「健康経営」の登録商標を持っているNPO法人健康経営研究会の定義では、「健康経営」とは「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践すること」と書かれています。

最近では、日本でもこの健康経営に取り組んできている企業が増えてきました。サトーホールディングスは社内に最高健康経営責任者(Chief Wellness Officer)を置くとともに、全国の拠点・部門に約200名の健康経営推進責任者・推進担当者を配置し、健康的な働き方に関するさまざまな取り組みを社員全員参加で推進しています。

私は健康経営というのは、「人を起点」として、継続して、変化、成長していくというコミットメントだと思っています。社員の仕事が将来的に機械やAIなどのITの進歩で代替されるという考え方であれば健康経営なんて言いません。その点で、「人を起点に」「中長期的な視点で」経営をしていくというサトーホールディングスのスタンスはとても本質的だと言えるでしょう。

サトーホールディングスの働き方改革とダイバーシティ

サトーホールディングスでは社員の健康増進や効率的な業務遂行という観点で、働き方改革を進めています。特に2104年以降、立て続けに施策を実行しているところに、その取り組みの本気度を感じます。

勤務時間はフレックスで、各部門によって自由に決めてOKだったり、朝型勤務推奨施策をやっており、朝早く来ると朝食を無料で提供しています。オフィス環境もフリーアドレスや在宅勤務を導入して、場所にとらわれず、生産性高く仕事をすることにチャレンジしています。

また、ダイバーシティについては積極的に取り組んでおり、2013年には経済産業省主催の「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれています。既に女性役員が3名いるなど女性活躍推進はもちろんのこと、外国人の雇用、障がい者雇用、65歳で定年した後の再雇用などさまざまな人材が活躍できる職場環境を整えています。文字通りのダイバーシティ推進であり、とても本質的な取り組みをたくさんしています。

採用においても、筆記試験をしない人物採用であったり、退職した人材の再雇用(出戻りOK)であったり、あらゆる施策において、「人(社員・仲間)を大事にしている」というのが一貫しています。

また、2020年英語公用語化を目指しており、社員が英語習得に関するさまざまなプログラムを受けられたり、就業後に希望者が集まり、気軽に英会話を楽しむイベントを定期的に開催しています。

このようにサトーホールディングスの取り組みはすべて「人を起点」とした一貫した考えで、社員が主役のボトムアップ経営を行っている会社です。

さいごに

この記事では、「健康経営」という言葉の定義や、具体的な取り組みの事例について解説しました。詳しい内容を知りたい方は『いい人材が集まる、性格のいい会社』(佐藤雄佑 著)をお読みください。

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書籍『いい人材が集まる、性格のいい会社』では、今回ご紹介した内容の他にも、働きがいを備えた、多様な働き方が可能な会社を実現するための方法が紹介されています。「いい人材が集う会社にしたいが具体的に何をしたらいいのかわからない」と悩んでいる経営者の方は是非チェックしてみてください。

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佐藤雄佑

株式会社ミライフ 代表https://www.miraif.co.jp/
2016年、株式会社ミライフ設立。働き方変革事業、戦略人事コンサルティング事業などを展開している。事業構想大学院大学 プロジェクトディレクター、米国CCE,Inc 認定GCDF-JAPAN キャリアカウンセラー、NPO法人ファザーリングジャパン会員。

Facebook:yusuke.sato.716

 

【参考】佐藤雄佑.いい人材が集まる、性格のいい会社