経営者ならば能力給と定期昇給ではどちらがいいか悩んだこともあるのではないでしょうか。現在は能力給が主流ですが、果たして理にかなっているのはどちらでしょうか。

そこでこの記事では、岩松正記税理士事務所代表の岩松正記さんが著書『経営のやってはいけない!増補最新版』で解説している「能力給より定期昇給がよい理由」をご紹介します。

能力給より定期昇給がよい理由

能力給は会社に有利だが不満もでやすい

個人の業績が良かった時にはたくさん賞与を出すが、業績が悪い時には賞与を減らすという会社と、賞与は夏冬1ヶ月分だけだが毎年必ず定期昇給5%を行うという会社。会社として目指すべきはどちらでしょうか。

単純に資金繰りだけを考えれば、実は前者のほうが会社経営にとっては有利です。なぜならば、業績や能力による評価というのは、評価する側が十分に操作することができるから。

多くの会社で採用されているのも前者です。この他に、支給する賞与の総額はあらかじめ決めておき、その中で従業員ごとの分配を決めるという方法もあります。この場合、会社の業績に関係なく賞与が支給されることになります。

能力給のデメリット

正直、賞与額の目安を確約しない方式を採用すると、従業員のモチベーションは上がりません。なので、従業員間で格差を付けることで、多少のガス抜きをすることになる。業績給や能力給というのは、言わば強者の理論で、会社内で敗者になってしまった者に残された道は退職しかありません。

いったん賞与を支給してしまうと、会社は業績が悪いからといってなかなか下げられなくなります。それをクリアするのが予算内での分配方式というわけです。

ただ、この方式だと金額の多寡で従業員の間に不満が募りがち。そこで、定期昇給重視の考え方もあります。

定額昇給のメリット

たとえば毎年5%の定期昇給をする場合、月25万円の給料で夏冬1ヶ月分の賞与を支給すると、従業員1人当りの給料総額は、1年目350万円、5年で447万円(当初の1・27倍)、10年目で570万円(1・62倍)となります。

この方が、本来は従業員にとっても生活設計しやすいはず。しかも会社が5%以上の成長をした場合、理論上は成長よりも人件費を抑えた形になるので、会社にはより多くの利益が残ります。さらにこれだと従業員にとって取り分が下がるということは無いので、分配方式よりは不満を抑えることができます。

そう考えると定期昇給の方がいいように思えますが、今度は逆に、業績が上がっているのにその伸びよりも昇給率が低い、といった不満が出る場合があります。

いずれにしても、より不満が少なく、より会社としてのコストがかからない方を採用するとすれば、多くの場合は定期昇給になるでしょう。

さらには、後者の方が計算も簡単ということがあります。複雑な支給計算などせずシンプルにいく方が、会社にとっても従業員にとっても利益になるはずです。

まとめ.自社の状況に合わせて考える

この記事では、岩松正記さんの著書より「能力給より定期昇給がよい理由」をご紹介しました。

定額昇給のメリットを大きくご紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。最終的には自社の状況に合わせて会社に都合がよく、従業員にとっても不満の少ない方を考えてみてください。

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岩松正記

岩松正記税理士事務所代表
東北税理士会仙台北支部所属。現在は紹介のみを受け付けるスタイルで活動している。地方在住ながら東京から米国・東南アジアにまで顧客・人脈を持つことから、税務だけでなく様々な投資情報の提供も行っている。ロータリークラブ、青年会議所等で役員を歴任し、有数の人脈を誇りつつ地元経済界に貢献している。税理士会の役員に就く他、元査察の税理士に仕えていたため税の世界の裏事情にも詳しい。
Facebook:iwamatsu twitter:@iwamatsumasaki

 

【引用】
岩松正記.
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