この記事では、「人事評価の基準」について書籍『会社で活躍する人が辞めないしくみ』よりご紹介します。

【書籍】『会社で活躍する人が辞めないしくみ
【著者】
内海正人 日本中央社会保険労務士事務所代表 / 人事コンサルタント・社会保険労務士

「目標達成率」と「成績」どちらを評価するのか?

多くの会社が仕事の成果を重視し、「目標管理」を基準に人事評価を行っています。目標管理は、面談でも目標に対しての到達度や達成度が測りやすく、上司も部下も理解しやすい制度です。

しかし、この制度を始めた会社からよく相談を受けることがあります。それは、「多くの社員の目標設定が、低めに設定されています。これでは、成長を促すとか、頑張るとか、そういうことを推奨するものにはならないような気がするのですが……」という内容です。

目標達成率のみによる評価の実態

例えば、同期入社で、同じ営業職のAさんとBさんがいました。この2人を比較してみましょう。Aさんの営業目標は100で、Bさんの営業目標は150と設定していました。Aさんはその期間とても頑張って、120の成果を出しました。

ではBさんを見てみましょう。Bさんもとても頑張ったものの成果としては140となったのです。結果からするとAさんは達成率120%となり目標達成となりましたが、Bさんは93%の達成率となり目標未達となったのです。

営業会議ではAさんは目標達成を称賛され、Bさんは発破をかけられていました。

目標達成率と実績は違います

おそらく、この目標設定の背景には、前期の成績、営業エリア、属性、取り扱う製品の違いなど様々な要因があるでしょう。しかし、一律に目標管理による評価となった場合、Aさんの評価が高くてBさんの評価の方が低いのでしょうか? 達成率ということではAさんが明らかに目標クリアで上回っていますが、成績ではAさん120に対し、Bさんは140と20ポイントも上回って実績を出しているのです。

この場合、会社としては目標管理による評価だけであれば、AさんがBさんより評価されてしまいます。しかし、実績ベースであれば、Bさんの方が評価されるべきなのです。

成績ベースの目標も付け加えての評価

この場合の考え方ですが、もし、成果に対する評価を重視するという考え方であれば、成績ベースの目標も付け加えて結果を出すべきです。

もし、これが実施されないと、いびつな評価制度となってしまうからです。この落とし穴に陥りがちな会社は、急成長し、社員が短期間に増えて、急いで人事制度を入れて運用を始めた会社などです。

このケースでは、人事評価がまだ成熟していないので、「とりあえず走り出す」ということで評価基準を1本で運用しているケースです。

このような会社だと、社員数が100人前後はいるので、社長をはじめとする経営層が「人事制度を導入すれば大丈夫」と考えがちですし、現場と社長の間に距離ができていて、人事評価の矛盾に気がつかない場合が多いからです。

達成率だけで評価すると
・実績が高い社員より実績が低い社員が評価されるという矛盾が発生する
・目標を低く設定され、社員の成長につながらない

中小企業の場合

その点、中小企業の場合は、現場と経営の距離が近いので人事評価の矛盾も気がつきやすいです。ただし、この距離感だと「すぐに社長が口出しして、制度が運用しきれない」という話もよく聞きます。

この場合、社長が口を出したい気持ちもわかりますが、「なぜダメなのか?」をよく考えて口出しをしましょう。

目標設定は社員を成長させるためにある

話を冒頭の目標設定に戻しますが、低く目標を設定する社員については、成長に至るまでのプロセスがわからないので、自信がないケースが多いです。

だから、会社や上司が「具体的に、何をすればよいか」をアドバイスすることをおすすめします。

そして、目標設定については「高い目標設定は、本人が高い成長を望んでいることの証明だ」ということも伝えましょう。

人事評価制度はあくまでも社員を成長させるためにあるのです。そうしないと「できる社員」からそっぽを向かれてしまいます。

目標を高く設定してもらうには
・成長に至るまでのプロセスがわからず、自信がない社員には、アドバイスをする
・「高い目標設定は、本人が高い成長を望んでいることの証明」であることを伝える

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

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