この記事では「従業員の解雇で失敗しないためのポイント」について雇用契約書の書き方を中心に、社会保険労務士 寺内正樹さんの著書『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』よりご紹介します。

【書籍】『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!
【著者】寺内正樹 
社会保険労務士 / 行政書士

「解雇」はトラブルが生じやすい

3つの種類の「退職」

雇用契約を結ぶ際、法律上「退職」に関する事項は、書面による明示が必要とされています。大きく分ければ、

①定年制
②自己都合退職の手続
③解雇の事由及び手続

について記載がなされるのが一般的です。①と②については「就業規則」に記載するときのポイントを、退職について記載するときのポイントで解説しています。

解雇とは

そして、「退職」に関連して最もトラブルが生じやすいのが「解雇」です。「解雇」とは、会社側の一方的な意思表示によって雇用契約を終了させることです。「解雇」はよく「普通解雇」と懲罰的な意味を持つ「懲戒解雇」に区別して考えられます。

とは言え、どちらも解雇である点は同じです。解雇は問題のある社員を会社のメンバーから外すという方法ですから、ある意味、社員とのトラブルを回避するための最終手段と言えます。だからこそ、厳格なルールに従い慎重に行なう必要があるのです。

参考:解雇とは?意味や種類、解雇予告について解説

解雇で「失敗しない」ための3つのポイント

有効に解雇を行なうためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

解雇で失敗しないためのポイント
  • 解雇事由を雇用契約書(または就業規則)に明確に定めておく
  • 権利の濫用に当たらない
  • 法律上の手続を守る

順番に詳しく確認していきましょう。

解雇事由を雇用契約書(または就業規則)に明確に定めておく

1つめは、「解雇事由を雇用契約書(または就業規則)に明確に定めておく」ことです。

書面の明示は法律上求められているだけではなく、これにより、社員にどのような場合に解雇となるのかを認識させ、それらを避けるよう注意を促すことができます

例えば、普通解雇の事由として挙げられるのは、

① 精神または身体の障害により業務に耐えられないとき
② 勤務成績、業務能率、勤務状況などが著しく不良で向上・改善の見込みがなく就業に適さないと認められるとき
③ 懲戒事由に該当するとき
④ やむを得ない事業上の都合があるとき
⑤ その他前各号に準じるやむを得ない事由のあるとき

などです。

③は、懲戒解雇と理由が重なる部分がありますが、状況によってどちらにでも対応させることができます。さらに、⑤の包括的な規定は予想外の解雇事由の発生に対応するためにもぜひルールとして設けておくべきです。

懲戒解雇の事由については懲戒解雇とは?解雇理由や手続きについて解説で解説しています。

権利の濫用に当たらない

2つめは、解雇を行なうことが「権利の濫用に当たらない」ことです。

解雇は社員にとって重い処分となるため、解雇をすることに「客観的・合理的理由がある」ことが必要です。

理由を証明する証拠が必要

ただし、理由があってもそれを証明できなければ意味がありません。ですから、解雇事由が存在することが客観的に証明される証拠があればいいのです。

私の顧問先の運送会社で、何度注意をしても、配送中に信号無視を繰り返す従業員がいました。運良く事故にまで至らないものの、いつ会社に損害を与えることになっても不思議ではない状態でした。これは、会社の服務規律に違反する行為だったため、最終的には解雇もやむなしと考え、社長は口頭で注意を繰り返していたのですが、これでは証拠が残りません。

注意は書面を利用して行なった

そこで、懲戒処分は書面で必ず通知するルールを設け、注意は必ず書面を利用して行なうようにしました。これにより、服務規律違反という解雇事由に該当していることを示す客観的な証拠ができたのです。

「社会通念上相当」であるか

さらに、解雇が「社会通念上相当」であることも必要です。つまり、服務規律に1度違反しただけで即解雇というのは常識的に考えても処分が厳しすぎます。それが、注意が繰り返されたり、減給処分などを経て最終的に解雇であれば、誰が見ても解雇処分もやむを得ないと判断される状況になってくるでしょう。

法律上の手続を守る

3つめは、「法律上の手続を守る」ことです。これは当たり前のように感じるかもしれませんが、こと解雇になると感情的になり、手続を踏まずに思わず即時の解雇を言い渡してしまうケースも見られます。

30日前に言い渡すことが原則

解雇は30日前に言い渡すことが原則です。それが30日前に言えなかった場合は、過ぎてしまった日数分の「解雇予告手当」を支払わなければなりません。

例えば、20日前に解雇を言い渡したのであれば、過ぎてしまった10日分の解雇予告手当の支払いが必要となります。ですから、明日から来なくて良いという即時解雇ならば、30日分の手当が必要となるのです。

以上のように、法律を守り、雇用契約書によって「ルール」を決めていくことで、トラブルなく解雇手続を進めることができるようになるのです。

さいごに

この記事では寺内正樹さんの著書より、「従業員の解雇で失敗しないためのポイント」を雇用契約書の書き方を中心に解説しました。

この記事のポイント
  • 解雇事由を雇用契約書(または就業規則)に明確に定めておく
  • 解雇の手続きは、権利の濫用に当たらないように行う。また「解雇予告」など、法律上の手続を守って行う

以下のページでは、「雇用契約書」を会社の成長拡大に役立つものにするためのチェックシートを公開しています。

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寺内正樹

シリウス総合法務事務所代表http://www.kaisha-teikan.com/
2002年11月より行政書士事務所を開設。2005年10月、社会保険労務士の登録も行い、企業の法務・人事労務をトータルにコンサルティングしている。中小企業の新会社法対応、会社設立には特に力を入れており、従来の業務に加え、個人情報保護法対策・プライバシーマーク取得支援などの新分野にも積極的に取り組んでいる。

Facebook:terauchimasaki


【参考】寺内正樹.
仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!