この記事では「定款の「事業目的」を決めるときに気を付けるべきこと」をご紹介します。この内容は、社会保険労務士の寺内正樹さんが著書『仕事のあたりまえは、すべてルールにまとめなさい!』で解説している内容をもとに編集しています。

事業目的を決める時のポイントを知っておくことで、無駄な手間を省き、事業を円滑に進めることができるはずです。

寺内正樹

2002年11月より行政書士事務所を開設。2005年10月、社会保険労務士の登録も行い、企業の法務・人事労務をトータルにコンサルティングしている。

事業目的の書き方

定款に記載される「事業目的」とは、簡単に言えば、会社の行なう事業の内容のことです。それらをわかりやすく「日用品雑貨の販売」などシンプルに表現していきます。

会社法の施行後は幅広い記載が認められている

2006年5月に会社法が施行される前は、事業目的には具体性が要求され、以前にすでに登記されている事例の記載を使用したり、どのような記載が具体的であるかを申請する法務局で確認する方法をとることが一般的でした。

しかし、現在では、「事業目的」の記載は、かなり幅広く認められています。「販売業」「マーケティング業」、さらには「その他商業全般」といった抽象的で以前ならば認められていなかった表現でも、実際に認められている例があります。実質的には、一般的な業務であれば、ほとんどのケースで認められるようになっています。

ただし、無償で行なう営利性のない業務日本語として意味が通じない不明確な業務などは認められませんので、注意する必要があります。

事業目的の例
認められた例のあるもの
「販売業」「マーケティング業」「その他商業全般」など
認められないもの
「無償で行なう営利性のない業務」「日本語として意味が通じない不明確な業務」など

どこまで詳しく書くべきか

逆に、どこまで詳しく書いてよいのかという問題もあります。

例えば、実際にあったご相談ですが、「インダストリアル・エンジニアリングのコンサルティング」をしたいという社長がいました。「インダストリアル・エンジニアリング」とは、「工場などの現場で、人・物・金といった経営資源を効率的に運用できるよう作業工程・手順等を見直して、再編成すること」で、業界的には一般的な表現なのだそうです。しかし、最初に聞いた時には、私には内容がまったくわかりませんでした。

辞書などに記載があるものは認められやすい

このような一般的にあまり知られていない専門用語・業界用語をどこまで記載できるのかは悩ましいところですが、1つの基準として、辞書などに記載があるものであれば、認められる可能性は高いと言えます。

最終判断は法務局

しかしながら、最終的な判断は、登記の申請を行なうあなたの会社の所在地を管轄している法務局で判断されます。判断に迷った場合は、自分勝手な判断をせずに、事前に相談しておくことがポイントです。

事業目的の書き方のポイント
・辞書などに記載のあるものは認められやすい。
・判断に迷った場合は、事前に法務局に相談する。

事業目的を決める時に知っておきたい3つのポイント

ここまでの内容を前提として、「事業目的」を決める際には以下の3つの点に気をつけてください。

  • 将来の事業目的
  • 事業目的の数
  • 絶対に記載すべき事業目的

順番に詳しく確認していきましょう。

将来の事業目的

会社の行なう事業ということであれば、まずは、会社を設立して「すぐに行なう」事業の内容が思いつくでしょう。しかし、それに加えて「将来行なうつもり」の事業の内容も記載しておいてください。

定期変更の手間を省くことができる

例えば、私の顧問先の社長は、昔から飲食店を経営するのが夢でしたが、まだ飲食店経営のための資金はありません。そのため、人材派遣の仕事をしながら資金をためることにしました。この場合、事業目的には、まず現在行なう事業である「労働者派遣事業」という記載を入れました。さらに、将来行なうつもりの「飲食店の経営」もすでに入れてあります。こうすることで、将来、飲食店の経営を始める際にわざわざ定款を変更する必要がなくなるのです。

定款の事業目的を必ず行う必要はない

「でも、もし人材派遣事業がうまくいかなくて飲食店を開業できなかったら・・・」と考える人もいるでしょう。心配はいりません。定款の事業目的に記載があるからと言って、必ずその事業を行わないといけないということではないのです。

POINT
・将来の事業目的を定款に入れておくと、後々の変更の手間を省くことができる。
・定款の事業目的を必ず行う必要はない。

事業目的の数

「それなら、何でもできるようになるべく多くの事業目的を書いておこう!」と考える方もいます。実際に、30個も40個も事業目的を準備する社長もいるのです。

しかし、いくら記載の事業を始めなくてもいい、といっても限度があります。原則として「事業目的」は、その会社が行なっている業務の内容が記載されるべきものです。そこで、多数の目的の中で実際に行なっているものが1、2個しかないということでは、実態からかけ離れていることになります。

多すぎると悪印象につながる場合もある

取引先や融資担当者などが登記簿謄本を見た時にも何をしようとしている会社かよくわからないため、あまり良い印象を持たれません。

総合商社でもない限り、1つの会社であれもこれもという形で事業を行なうことは、まれなはずです。ですから、特に決まりはありませんが、5~10個ぐらいが妥当なところでしょう。

POINT
・事業目的は、5~10個ぐらいが妥当。

③ 絶対に記載すべき事業目的

また、事業目的を決める際に、絶対に記載すべき目的が発生することがあります。それは、あなたの行なう事業が、許認可を必要とする事業の場合です。

具体的には、建設業、宅地建物取引業、運送業、古物商、労働者派遣事業、飲食業、倉庫業、旅行業などです。

許認可の必要な事業であるのかを事前に確認する

許認可を申請する際は、その事業が目的に記載されているのが原則です。そのため、まずは行なうビジネスが許認可の必要な事業であるのかを確認し、事業目的にどのような記載をすれば良いのかを申請を行なう役所で確認する必要があります。

POINT
・「許認可を必要とする事業」は必ず記載する。
・許認可を必要とする事業かどうかは、事前に役所に確認する。
・許認可を必要とする事業の例
建設業、宅地建物取引業、運送業、古物商、労働者派遣事業、飲食業、倉庫業、旅行業など

まとめ.定款作りのポイント

この記事では、寺内正樹さんの著書より「定款の「事業目的」を決めるときに気を付けるべきこと」についてご紹介しました。

今回ご紹介した「事業目的を決める時に知っておきたい3つのポイント」を振り返ってみましょう。

事業目的を決める時に知っておきたい3つのポイント
将来の事業目的
・将来の事業目的を定款に入れておくと、後々の変更の手間を省くことができる。
・定款の事業目的を必ず行う必要はない。
事業目的の数
・事業目的は、5~10個ぐらいが妥当。
絶対に記載すべき事業目的
・「許認可を必要とする事業」は必ず記載する。
・許認可を必要とする事業かどうかは、事前に役所に確認する。

会社の根本原則となる定款は、あらかじめ会社の将来や成長の過程を考えて作りこんでおくことで、後々の手間を省き、事業を円滑に進めることにもつながります。

これから新しく会社を設立する場合だけでなく、すでに設立が終わっていても現在の「定款」を再チェックしてみてはいかがでしょうか。

以下の記事では、今回ご紹介した「事業目的」について以外にも定款を作るうえで抑えておくべき、様々なポイントをご紹介しています。
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