この記事では雇用契約書に「就業場所」を記載するときのポイントについて、社会保険労務士 寺内正樹さんの著書『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』よりご紹介します。

従業員の就業場所を決める時のポイントをおさえて、異動時に起こりがちなトラブルを防止していきましょう。

【書籍】『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!
【著者】寺内正樹 
社会保険労務士 / 行政書士

勤務地が複数ある場合は注意

「就業場所」は、文字通り働く場所ですが、これは雇用契約を結ぶうえで書面に明記することが義務付けられています。

働く場所が1箇所であれば、その場所を記載すれば済みますが、支店、営業所、店舗などが複数あり、異動の可能性がある時には注意する必要があります

就業場所の変更によるトラブル

私の知り合いの飲食店での話です。ある店舗の店長Aさんとホール担当のBさんはソリが合わず、些細なことですぐに口論になり、店舗全体の運営にも影響を与える状態でした。見かねた社長は、現状を説明した上で、Bさんに通勤時間に10分程度の差が出る2駅先の別の店舗へ異動するように指示しました。

しかし、Bさんは「雇用契約書にも就業場所は○○店としか書いてありませんし、異動があるということも最初の契約時には聞かされませんでした。ですから、他の店舗には移りたくありません」と言ってきました。

いわゆる「配置転換」を拒否されてしまったわけです。

配置転換とは

「配置転換」とは、職務や就業場所などを会社の命令で長期にわたって変更させることです。これは、会社の人事権の行使としての「業務命令」になるため、拒否すれば業務命令違反として懲戒処分の対象になってしまうこともあります。

雇用契約書への書き方

「新宿店に限る」のように就業場所を限定する約束がある場合は別ですが、「業務上の都合により変更する場合がある」として、雇用契約書を交わしておけば、配置転換については社員の同意があったと見ることができます。

就業場所変更についての記載がないため、絶対に配置転換できないということはありませんが、個別の判断になるので、事前にルール化しておく方が安心です。

権利濫用にならないように気を付ける

ただし、変更の記載をしていたとしても、権利濫用にならないよう注意する必要はあります。その時には

  1. 業務上の必要性
  2. 従業員が被る不利益の程度
  3. 事前の説明の有無

などを総合的に考えます。今回の例ならば、

  1. 店舗の運営を円滑にする必要性があり、
  2. 異動場所が2駅先で移動時間も10分程度の違いしかなく、
  3. 事前に配置転換の内容や必要性を説明している、

ということで権利濫用とまでは言えないケースになるでしょう。

実際には話し合いの結果、Bさんが異動に同意してくれたので、大きなトラブルにまではなりませんでしたが、「雇用契約書」でルールを示しておけば、よりスムーズにことを進めることができていたはずです。

さいごに

この記事では、寺内正樹さんの著書より雇用契約書に「就業場所」を記載するときのポイントを解説しました。

この記事のポイント
  • 勤務地が複数ある場合、雇用契約書には「業務上の都合により変更する場合がある」と記載しておく。
  • 就業場所を変更するときに、職権濫用にならない為に気を付けること。

以下のページでは、「雇用契約書」を会社の成長拡大に役立つものにするためのチェックシートを公開しています。

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寺内正樹

シリウス総合法務事務所代表http://www.kaisha-teikan.com/
2002年11月より行政書士事務所を開設。2005年10月、社会保険労務士の登録も行い、企業の法務・人事労務をトータルにコンサルティングしている。中小企業の新会社法対応、会社設立には特に力を入れており、従来の業務に加え、個人情報保護法対策・プライバシーマーク取得支援などの新分野にも積極的に取り組んでいる。

Facebook:terauchimasaki


【参考】寺内正樹.
仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!