会社や商品の「ストーリー(物語性)」を社内外に発信していくことで行うブランディング手法をストーリーブランディングと呼びます。
ストーリーが持つ「人の感情を動かす力」を活用したこの手法は、効果的なブランディング手法として注目されています。
そこでこの記事では、ストーリーブランディングの意味や効果について『モノを売るバカ』や『一行バカ売れ』の著者である川上徹也さんが、著書『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』で解説している内容をもとにご紹介します。
川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所代表。大手広告代理店にて営業局、クリエイティブ局を経て独立。フジサンケグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。現在は、広告制作にとどまらず、クライアントの企業理念構築からブランディングまでのサポート・コンサルティングを中心に大きな成果を生み出している。湘南ストーリーブランディング研究所
ストーリーブランディングとは
冒頭でもご紹介したように、会社や商品の「ストーリー(物語性)」を社内外に発信していくことで行うブランディングをストーリーブランディングと呼びます。
では、この「ストーリー」とはどのようなものなのでしょうか?
ストーリーの定義
『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』では、ビジネスにおけるストーリーを次のように定義しています。
生活者、取引先、社員などに対して語ることで、聞き手の想像力を刺激し共感を呼ぶ、フィクションではない、個人・商品・お店・企業などにまつわるエピソードやビジョン
この定義をより明確に理解するために、具体例を挙げてみましょう。
ストーリーの例
リンゴが A 、B 、C の3つ置いてあり、「どれかひとつ好きなリンゴ選んでください」と言われたとします。その時に、それぞれのリンゴにこんな説明が書いてあった場合、あなたはどのリンゴを選びますか?
どこにでもあるごく一般的な農法で育てたリンゴです。
まわりの葉を取らずに栽培し、果実に十分な栄養をいきわたらせたリンゴです。そうすると見た目は少し悪くなりますが、断然甘くおいしくなるのです。
「奇跡のりんご」でおなじみの木村秋則さんがつくったリンゴです。木村さんは絶対に不可能と言われていたリンゴの無農薬無肥料栽培を、8年の歳月をかけ長年の極貧生活と周囲からの孤立を乗り越えて、試行錯誤の末にようやく実現しました。
おそらく、多くの方が C のリンゴを選ぶのではないでしょうか?
この C のリンゴの説明のように、”聞き手の想像力を刺激し共感を呼ぶ、商品にまつわるエピソード”がストーリーの一例です。
参考:ストーリーブランディングで人の心を動かすための3つのポイント
・ストーリーブランディングとは、「会社や商品のストーリーを社内外に発信していくことで行うブランディング」のこと。
・ストーリーとは、「個人・商品・お店・企業などにまつわるエピソードやビジョン」のこと。
ストーリーが持つ効果
ストーリーには、人の感情を動かす効果があります。
C のリンゴの例からもわかるように、誰かが困難を乗り越え目標を達成する姿には、多くの人の感情を動かす力があります。感情に訴えかけることで、興味を持ってもらったり、記憶に残ったり、人に伝えたいとおもってもらうことができます。
結果、リピートにつながったり、口コミで広まったりする可能性も高まります。
ストーリーブランディングが注目されるようになった理由
近年、ストーリーブランディングが注目されるようになったのには様々な理由があります。例えば、以下のような理由です。
・普通で当たり前の広告が効きにくくなった
・情報発信が容易になった
・超高齢化社会に突入する
普通で当たり前の広告が効きにくくなった
インターネットの普及によって、私たちが一日のうちに受け取る情報量は膨大なものになりました。
人間は、あまりに情報量が多すぎると、思考停止に陥ってしまうという習性があります。だから、余程、関心のあることでないと、スルーしてしまうのです。
ただでさえ、生活者は「広告メッセージ」に対して、常に警戒心を抱いています。広告する側の主張よりも、買った側の意見の方がはるかに信用できると思っているのです。
このような状況下で、あなたが普通の広告をうったとしても、まず見向きもされません。
情報発信が容易になった
一方で、インターネットの普及は小さな会社や個人や、地方からでも全世界へ向けた情報発信を可能にしました。実際に、地方の小さな会社やお店が、日本中をマーケットに、また世界相手に商売しているケースも少なくありません。
もちろん、ただ普通に情報発信をすれば、誰もがそのような存在になれるわけではありません。そこには、人の心を動かすストーリーが必要となってきます。
超高齢化社会に突入する
日本はこれから、かつてどの国も経験したことのないような超高齢化社会に突入していきます。
2020年には全人口の1/4が 65 歳以上の高齢者になると見込まれています。
しかもそのときの高齢者は、倹約や節約が美徳と思うようなかつての高齢者のイメージとは違います。旺盛な消費意欲をもった新しいシニア層です。
消費の中心がそのようなシニア層になる可能性も高いのです。当然、あなたの会社やお店も、彼らの存在を無視するわけにはいかなくなるでしょう。
一般的にシニア層は、消費経験が長く、お金を持っている場合が多いので、安物は買いたくないと思っています。かといって、その商品が持つ、スペックや特性に興味がある人は少数でしょう。彼らにとってどのようなメリットがあるかが重要なのです。それが感じられれば、他よりも少々高くても買おうと思います。
だからこそ、彼らがなるほどと思うストーリーが必要になってくるのです。
ストーリーブランディングが注目されるようになった理由
・普通で当たり前の広告が効きにくくなった
・情報発信が容易になった
・超高齢化社会に突入する
人の心にグサッと突き刺さる「ストーリーの黄金律」
ストーリーの黄金律とは、ハリウッド映画をはじめとするエンターテインメントの世界で使われている、感動を呼ぶのに必要な3つの要素のことです。
1.何かが欠落しているまたは欠落させられた主人公が、
2.何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標やゴールに向かって
3.数多くの葛藤、障害、敵対するものを乗り越えていく
この3要素が含まれていると、人はそのストーリーに心を動かされてしまうことが多いのです。いわば、人類共通の感動のツボです。
「ストーリーの黄金律」については、『ストーリーブランディングで人の心を動かすための3つのポイント』で詳しくご紹介しています。興味のある方は、是非こちらもチェックしてみてください!
まとめ
ビジネスやマーケティングにおけるストーリーとは、「個人・商品・お店・企業などにまつわるエピソードやビジョン」のことでした。
ストーリーを活用することで、多くの人に「興味を持ってもらう」「記憶に残る」「人に伝えたくなる」などの効果を得ることができます。
今回ご紹介した「ストーリーの黄金律」を活用することで、あなたの会社やお店を効果的にブランディングしていきましょう。
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