「お金をかけずにお客様の心を動かし、売上アップを実現する方法」として、衝動買いを促すことはとても効果的です。
しかし、商品に衝動買いする価値があるとお客様に認められなければ、接客売場づくり、イベント、価格設定でいくら努力してもムダに終わってしまいます。衝動買いには、お客様の心に衝動を与える商品を揃えることがとても重要です。
そこでこの記事では、株式会社SIS 代表取締役・カスタマーリレーショナルマーケター 齋藤孝太さんが著者『衝動買いしてもらう21の法則』で解説している、「お客様が共感する商品、5つのタイプ」をご紹介します。
メーカーの商品開発の皆さんには、「衝動買いを促しやすい商品とは、どんな商品なのか?」という視点で、読んでいただければと思います。
共感できる商品、5つのタイプ
企業・お店がお客様の心情を深く察して商品展開を行うことで、お客様が企業・お店に共感してくれ、衝動買いを促すことができます。
ここでは、お客様が共感する商品を5つのタイプに分けて説明します。
お客様の声ダイレクト反映商品
お客様から共感をいただく商品としてまず考えられるのが、お客様の声を反映して開発された商品でしょう。
大丸ではネット上の消費者アンケートを踏まえて、「マルコレ・ビューティポーチ」を開発しました。東急百貨店では、同社が運営している携帯サイトの会員550名がアンケートや試飲会に参加し、20~30代女性向けのワイン、ビールを開発しました。高島屋では、すそ直し伝票を分析して、また下を丁度良い長さに設定した婦人用パンツが息の長いヒット商品となっています。
お客様の声を反映した品揃えは、衝動買い促進に効果を発揮します。
また、あるアパレル会社では多数のお客様を集めるセール会場で、試作品の人気投票を実施しています。この結果をもとに次の季節商品の仕入数量を調整します。
この方法を実施してから、“外す”ことが少なくなったとのこと。
お客様の声で正確な情報を収集し、確実にお客様の共感を獲得できる商品を、数多く品揃えすることを実践しています。
ターゲットニーズ深堀商品
ターゲットニーズを深く掘り下げることで、お客様から共感をいただき、衝動買いを促すことができます。
成熟市場である冷蔵庫は、店頭価格の下落を待って販売量が増える「遅咲き型」の商品です。そんな中、20万円を超える新商品の冷蔵庫が好調な売れ行きを示していました。その理由は、「10センチの構造改革」によるものでした。野菜室、冷凍室の引き出しを全開できるようにしたのです。それにより、冷蔵庫内の死角をなくしました。たかが10センチですが、毎日使う主婦にとってアピール度満点です。
成熟市場では、このような一見地味なひと工夫が競合商品との差別化ポイントとなり、大きな共感を得ることにつながります。
時代ニーズキャッチ商品
近年、地球規模の環境問題は、日々メディアで取り上げられています。レジ袋の有料化など、消費者の身近な世界にも影響を及ぼしています。
アンケートによると、環境に配慮した商品を購入する層が年を追うごとに増えています。そんな時代が到来する中で、エコ商品を積極的に揃えることで、共感を得ることが大切になっています。
2007年冬、ダイエーでは、環境に優しいとされる暖房具、ガスヒーターやハロゲンヒーターの売れ行きが好調でした。それだけではなく、湯たんぽ等の懐かしい商品が飛ぶように売れました。
もう一つ、ここ数年言われているのが、少子化問題。少子化が進み、子供一人一人への期待や想いが膨らんでいます。そこで、伊藤忠都市開発が発売したのは「子供の頭がよくなる家」を設計コンセプトにしたファミリー向けマンションで、評判は上々だったようです。
時代ニーズにあった商品は、メーカー側の発想だけでは生まれにくくなっています。新しいコンセプトの商品は、商品開発部門・生産部門から反発があるからです。
一定規模の小売チェーンであれば、メーカーと共同開発することで、時代ニーズをキャッチした商品の品揃えを実現できます。
ランキング商品
今、お客様から人気があって支持されているランキング商品は、お客様から共感いただいているという事実があります。その事実がお客様を安心させ、衝動買いにつながります。特に、健康や美容、ダイエット等の効果が気になる商品において有効です。
東急が運営している「ランキンランキン」というお店があります。東急ストア、東急ハンズ、東日本キヨスク等の売上をベースに、食品・生活雑貨・美容用品等の商品を売上ランキング別に陳列しているお店です。私も定期的にお店を訪れているのですが、「こんな商品が売れているんだ…」等の新しい発見があり、つい長居をしてしまいます。ランキングというコンテンツのパワーを感じます。
また、通常実施されているのはお店でのランキングやチェーン全店でのランキングですが、それだけではありません。自分のお店とは違う業種もしくは業態のランキング商品を揃えることで、新しい展開が実現します。
ローソンでは、楽天の人気商品(人気お菓子・人気商品を具材にしたおにぎり等)を期間限定で品揃えしています。さらに、国内最大級の料理口コミサイト「クックパッド」の人気レシピの商品もローソンで発売されました。ローソンは、コンビニエンスストアという業態の枠を超えた発想で、ランキングを切り口とした品揃えを行っているのです。
メーカーの商品開発の方々は、自分の業界内のランキング商品に重点を置いて新商品の構想を考えがちですが、業界の枠を超え考えることで新しい発想が生まれるでしょう。
お墨付き商品
特定分野の専門家からお墨つきをもらうことで、お客様の共感を得ることができます。
例えば、有名デザイナーおすすめのファッション、あこがれの女優が効果を実感している化粧品、テレビドラマで好きなタレントが着ていたジャケット、有名料理人が監修した商品、高級ホテルの冷凍食品などです。UCCでは自社の優秀バリスタが監修したチルドコーヒーを発売しています。
お店で販売している商品、自社が開発した商品にお墨つきを与えてくれる人はいますか? もし、存在していれば活用しない手はありません。
さいごに
記事の内容について詳しく知りたい方は、こちらの本をお読みください。
衝動買いしてもらう21の法則
予算も体力も時間もない、ナイナイづくしの小売業に対し、伸びない市場で売上・利益を上げ、現場と会社を劇的に変える知恵と手法を提案する本。 消費者の心理・行動という視点からはもちろん、現場視点からもお店でどのようなアクションをすればいいのかを説明しています。
齋藤孝太
株式会社 SIS(ストラテジックインテリジェントシステム)(https://sisys.jp/)
カスタマーリレーショナルマーケター。店舗ビジネス(小売業・サービス業・SC等)において顧客との関係を深め、継続的な売上拡大を目指す企業を対象に、顧客育成/CRMの「販売現場の教育・研修・セミナー」を通じた人材育成を行っている。
【参考】齋藤孝太.衝動買いしてもらう21の法則