この記事では、トップ営業を目指す人が身につけておくべき「交渉を優位に進めるコツについて、箱田 忠昭さんの書籍『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ』よりご紹介します。

【書籍】『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ
【著者】箱田 忠昭
 インサイトラーニング株式会社代表

トップ営業を目指す人必見「価格交渉7つの手法」

セールスの現場で、実際に相手と交渉するときに、どのようにすれば有利に進めることができるのでしょうか。具体的手法が戦術といわれるものです。ここでは数ある戦術の中でも、特に価格交渉に応用しやすいと思われる次の7つの方法を紹介します。

7つの手法
  • 積み重ね法
  • 見返り要求法
  • 水道修理店法
  • 徹底同意法
  • 覚え書き法
  • 錯覚誘引法
  • チワワ法

積み重ね法

長期にわたって交渉をするときの鉄則は、決めやすいところから決めていくという方法です。

反対に最も決めづらい価格については一番最後でいいのです。その方法は逆じゃありませんか? 価格が決まらなければ後は何も決められないじゃないですか、と思うかもしれません。でも、いいのです。まずは、決めやすいこと、例えばスペック、納期、デザイン、色、サイズなど、どちらかといえば、どうでもいいことから決めていくのです。

交渉の手法としては、非常にうまいやり方といえます。なぜならば、価格以外の99%ほどが決まってしまった場合、買い手はせっかくここまできた交渉をムダにしたくないために、結局まとめようとするからです。

「ここまで決めてきたのだから、何とかまとめよう」という気になるのです。人は時間や労力を使った分だけ回収したくなるものです。その心理を巧みに使って、相手に時間や労力を投資させるのです。投資させれば投資させただけ、あなたの交渉は優位になるわけです。従って、まずはお互いに同意を得られることから交渉するのがよい方法といえます。

例えば、パソコンの買い替えをしようかどうか迷っているお客がいたとします。あなたは、総額で135万円の見積書を提出し、お客から90万円まで値引きしてほしいと要求されました。そのとき、「そうですか、値引きについては私の一存では決められません。部長と相談しないといけないのですが、来週の水曜日まで海外出張で戻ってきません。どうでしょう、それまでに決められるところだけ決めておきませんか?」と言ってみるのです。そして、

「メモリの容量はどのくらい必要ですか?」
「CPUはどのくらいにしましょうか?」
「ディスプレイは何インチにしますか?」
「納期はいつ頃ですか?」
「あ、そうそう、最新型のパソコンの活用方法が載っている面白いWebサイトがあります。私もよく見ていますが、こちらのサイトをご覧になって少し研究してみたらいかがですか」

など、どんどん決めていき、そして相手に時間と労力も使わせます。来週の水曜になるころには、せっかくここまで交渉し、時間もかけてきたのだから何とか決めようという方向が見えてきます。

人は、時間や労力を投資すればするほど、それを回収したくなります。

薄型テレビを買いに家電量販店に行ったとします。同じ42インチの液晶テレビでも種類豊富です。メーカーにより機能の違いがあったり、同じメーカーでも少し前の型もあれば、最新モデルでも機能に微妙な差があります。そこで店員を呼んで機能の違い、操作方法、42インチと45インチ、あるいは37インチとの違いなどいろいろ質問します。

「前のモデルと今のモデルの違いは何?」
「この機能はムダだね、いらない」
「あ、もっと操作が簡単なほうがいい、これじゃダメだ」

店員はもうあなたに付きっ切りで説明し始め、2時間が経っています。ここまで時間と労力を投資したら、店員は当然のごとく何がなんでも買ってもらわないと、と思うでしょう。そこで、「それじゃ、これにしようかな。でも予算が15万しかない。2万円値引きしてよ」と言えば値引きしてくれる可能性は大いにあります。なぜなら、店員はこの2時間の労力をムダにしたくないからです。ここまできて売り上げゼロになるくらいなら、多少利益が減ってもここは決めたいとなるわけです。

相手に時間と労力を投資させれば、その分あなたは優位に立てるということなのです。

見返り要求法

これは、“フェイント法”ともいわれています。

どうでもいいことを、さも重要な問題であるかのようにフェイントをかけるやり方です。つまり、本当に得たいものがほかに何かあるのに、とりあえず違うものを要求するふりをする戦術です。

例えば納期の面で、本当は簡単に譲ってもいいものでも、「いま難しい状況で、絶対に納期の面では譲歩できない」と徹底的に言い張ります。そして最後に、納期を譲歩する代わりに、相手にも大きく譲歩を求めるのです。つまり、価格面で考慮してくれるように交渉するやり方です。

セールスパーソンであるあなたは、お客が「納期が遅い」「保証期間が短い」「タイプが気に入らない」などと難癖をつけてきたら、要注意です。見返り要求法を使って価格を下げようとしているかもしれません。このような場合はひと言、「価格はもうこれ以上下げられないんですよ」と釘を刺しておくのも効果的です。交渉の場では、買い手も交渉のテクニックを駆使してくるということを常に頭に入れて交渉に臨んでください。

この戦術のポイントは、どうでもよいことを譲歩して相手に大きな譲歩を求めるやり方です。売り手側が使う場合は、非金銭譲歩をフェイントに使うと非常に有効な手段となります。

例えば、テレビを購入しようとしているお客に対して、取り付け料、配送費など、本来なら譲歩しても構わない項目を有料であると言い張り、それを譲歩する代わりに価格面は定価でお願いしたいというやり方です。

水道修理店法

サービスの価値は、サービスを受けた後よりも、受ける前のほうが圧倒的に高いということは、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

私が子供のころ、自宅の水道の蛇口が壊れたことがありました。最初のうちは、水がポタポタと垂れている程度でした。しかし、いくら水道の栓を閉めても水は止まりません。そのうち垂れる量はだんだん多くなり、遂にジャーッと出っ放しになってしまいました。私の父は驚き、困り果て、いろいろといじくり回していましたが、水の勢いは一向に止まりません。父は電話帳を調べて水道の修理店に電話しました。夜中でしたが、すぐに飛んできてくれました。さすがプロです。あっという間にバルブを取り替え、簡単に直してしまいました。父も私もほっとしました。

料金を払うことになって、修理店の人は4千円の請求書を出したのです。父はびっくりして、「ずいぶん高いな。たった1、2分で直してしまって4千円は、ちょっと法外じゃないですか」と文句を言ったのです。修理店の人は怒って、「だって、いまは夜中の12時です。夜間の緊急修理には特別出張費がかかるんですよ」と答えました。父はさらに怒って、「そんなことは聞いていなかった。最初に言っておくべきことだろう」と大声を出したのです。修理店の人も怒って、「そんなことを言うなら、水道を元の壊れた状態にしておきますから、どこかほかの修理店に電話して直させてください」と言いました。父は「いまさら、それはないだろう。仕方がないな」と言って、しぶしぶ4千円を払ったのです。

この事例からもわかるように、サービスの価値は、サービスを受けた後よりも、受ける前のほうが圧倒的に高いということです。

そして、もうひとつ大切なことは、セールスパーソンはサービスの提供が終わった後も、しっかりとアフターフォローを行うべきだということです。サービス後の価値が下がっている状況で、声をかけたり、質問をしたり、笑顔で接したりというサービスを行うのです。そうすることによって、少しでもお客に「サービスを受けてよかった」という満足感を持ってもらうよう働きかけましょう。

徹底同意法

これは、“フィール・フェルト・ファウンド(Feel Felt Found)法”と呼ばれている方法です。

お客が「少し値段が高いようですね」と言ったときに、「そう思われるのが当然です。あなたはそう思っているのですね。(Feel)」と同意するのです。決して反論してはいけません。

さらに、「いままで購入された方はみなそうおっしゃっていました。それが普通なんですね(Felt)」「そこで実際に使ってみて、全然違うことがわかりました(Found)」というように話を進めるのです。つまり、徹底的にお客の意見に同意し、他人も同じであることを言い、その他人が実はこの商品を買って喜んでいるのだというふうに持っていくやり方です。

私たち人間は感情の生き物です。自分の意見に反論されたらもうその時点で臨戦態勢に入ってしまい、人の話を聞くどころではありません。次にどう切り返そうかとそればかり考えるようになります。ですから、まずはお客の意見に徹底的に同意して、交渉をスタートさせるのです。

例えばお客が、「2日間で一人9万円のセミナーは高いですね」と言ったとします。そのとき私の会社の営業担当者は、

「そうですね、そう思われるかもしれません」
「実際に今まで出席した人は最初にそういうふうにおっしゃる方がとても多かったんです」
「実は発表以来、もうすでに250回、何万人もの方々が参加してくださっています。そして今でも毎月公開コースを開催させていただいております。その上、F社、N社、T社と日本の一流企業で全面的に取り上げていただいております。結局、9万円の価値はあると認めていただいているのではないかと思います」

というように応答するのです。

覚え書き法

セールスパーソンは、日ごろから商談の際は必ずメモを取るべきです。「いゃー、いちいちメモを取らなくても覚えているし大丈夫、それに面倒だから」などと考えないでください。もし、そうした習慣のない人がいたら、ぜひ明日からメモを取るようにしてください。そうすることによってこれから紹介する覚え書き法が使えます。

覚え書き法とは、あなたの側が契約書や覚え書きを作る方法のことです。交渉の後、その内容を書いたもの、つまり覚え書きや契約書といった形で文書にまとめるということは、大型の商談などではよくあります。

商談の際、例えば価格や納期など重要な事柄は双方納得いくまで話し合い、結論を出します。しかし、比較的小さな事柄や、それほど突っ込んだ話し合いが行われなかった事柄、気がついていない小さなポイントもあります。そこで、商談の際にメモしていたそのような小さなポイントをうまくまとめ、自分が書いてお客に送るのです。ここで大事なのはお客に書いてもらうのではなく、自分で書くということです。

話し合いでセールスパーソンは、次のように言えばよいのです。

「大体の話はまとまったと思います。私どもに法務課というのがありまして、こういうのを専門にやっている者がおりますので、間違いのないように私どものほうで簡単に覚え書きを作らせていただきたいと思います。もちろん費用はかかりません」

仮に外部の弁護士や専門家を使って費用がかかる場合でも、自分の側に有利な契約書なり覚え書きの表現をすることによって、断然有利になるはずです。

商談中にメモを取ることによって、まずお客に安心感を与えることができます。「あ、このセールスパーソンはとても丁寧な仕事をしてくれそうだな」という印象を持たれます。さらに、メモしたことを見ながら相手の話し終わりに、相手の話したことを繰り返すことで話の内容を確認することができます。

例えば、「今日はどうもありがとうございました。お話をまとめると、ひとつは○○という点、2つ目は○○と△△のことについて、他に何かございませんか?」ということで、相手の話を促すことができ、商談をスムーズに進行させることができます。

逆にメモを取らずにいれば、「大丈夫かなこのセールスパーソンは。ちゃんと仕事してくれるのかな。後になって“言った、言わない”“聞いた、聞いてない”なんてことになったら困るな」などと思われてしまいます。

メモを取る習慣のない人は、明日からでもさっそく始めてみてください。メモを取っているあなたの姿を見ていたお客は、後に提出される覚え書きを見て、「ここはおかしい」などと反論する可能性も低くなり、トラブル防止にも役立つでしょう。

錯覚誘引法

「1日わずか、これだけの負担で買えます」といったうたい文句はよく聞きます。コーヒー1杯分ですとか、タバコ1箱分で買えますという表現です。

マイホームを建てる場合にセールスパーソンはよくこの方法を使います。4000万円と4500万円の建て売り物件を勧める場合、「わずか500万円の差で、設備にこれだけ違いがあります」とは言いません。「この家にこれから50年住むとしたら、500万円は1年間わずか10万円、1カ月あたり8000円ぐらいにしかならないのです。8000円でこれだけの違いがあるんですよ」

と説明するでしょう。そして、ほとんどのお客は「1回飲みに行くのを控えればいいんだな!」と納得してしまうのです。これを、錯覚誘引法といいます。言葉による錯覚を起こさせる戦術です。

チワワ法

これは、既成事実法といってもよいでしょう。

ペットショップでは、実際に気に入った子犬を触ったり、抱っこしたりすることができます。小さな子供などは一度抱っこしたらなかなか放しません。気に入ったチワワの子を抱っこしながら親にねだるわけです。親としても即決はできません。悩んでいると、すかさず店員が近寄ってきてこう言うのです。

「お嬢ちゃん、この子犬気に入った? もしよかったら1週間貸してあげるよ。もし気に入らなければ、次の日曜日に返してくれればいいからね」

親も、借りるだけならいいか、と考えて家に持ち帰ることを承諾します。しかし、当然のことながら、その犬を1週間持ち帰ったお嬢ちゃんは絶対に返すはずがありません。

このチワワ法、クロージング・テクニックとして交渉の場ではよく使われる手法です。子犬でなく、普通の商品なら「とりあえず、この商品をお持ち帰りください。1週間ぐらい使ってみていただいて、もし気に入らなければいつでも返品してくださって構いませんから」と言うのです。

また訪問セールスならこうです。ミネラルウオーターのサーバーのセールスパーソンは「1週間無料でお貸しします。1週間後回収に来ます」と言ってサーバーを置いていきます。1週間使ってしまうと、人間不思議なものでなくなるのは寂しいという気持ちになります。「ま、いいか。どうせコンビニで水を買ってくる手間が省けるし」となるわけです。

クーリングオフのあるネット通販などもそうです。いざとなれば返品もできるしと思って買ってしまうのです。購入した商品が気に入れば問題ありませんが、仮にそれほど気に入らなくても返品するのが面倒くさい、となって結局は購入ということになります。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

「高いなぁ」と言われても
売れる営業のしかけ


新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ

営業に行くとお客さんに必ず言われるのが「高いなぁ、もっと安くならないの?」という一言。そうなると値下げしてでも売れればいいと思ってしまうかもしれませんが、大きな間違いです。 どんなときでも、より高く売るのが営業マンの仕事です。本書では、お客の心理を利用して、値切りを封じ込める「提案営業のやり方」と「価格交渉のスキル」を紹介しています。

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