の記事では「顧客との信頼関係を構築する方法」を解説します。

経営コンサルタントの高橋宗照さんが著書『「検討します」と言われても売れる商談のしかけ』で解説している内容をもとに編集しています。
【著者】高橋宗照 (株)タカハシ&パートナーズ 代表取締役

顧客との信頼関係を構築する方法

お客との間に信頼関係を醸成する方法のひとつとして、「相手に共感する」ことが挙げられます。セールスパーソンであればよく言われる「お客様の立場に立って考えろ!」が、これに当たります。

しかし、フツーに言われていることとはいえ、これはかなり難しいことです。

そもそも価値観や年齢、育った環境などが違う者同士が、お互いを自分と同じように感じることはなかなかできることではありません。

「お客様の立場に立って考えろ!」は、実はとてもというより、めちゃめちゃハードルが高いことなのです。

仮に2人の人がある事象を同時に見ていても、一方は「え? マジで?」と驚くかもしれませんが、もう一方は「ふーん・・・だから?」と、まったく違う反応を見せることもあります。

これは、人それぞれ違うフィルターを通して見ているからなのです。

私は常々言うことなのですが、「お客様の立場に立って考えろ!」というのは所詮ムリな話。それよりも「お客様の立場に立って考えようと少しでも努力することが大切だ!」と伝えています。

相手の立場には決してなれないが、もしその立場になったらどう思うか? どう行動するか? などを考えることはできます。

私はまさにこういう努力ができることそのものが共感できることだと思っています。

では、どうやったら相手に共感できるようになるのか?

ここで大きな考え方を2つほどお伝えしましょう。

「正しい、正しくない」「白か黒」などで判断しない

相手の行動や言動に対して、「それどうなの?」と思ってしまうことがあります。

確かに価値観が違うからそう思って当然なのですが、果たして相手は本当に間違えている、正しくない、黒なのでしょうか?

あなたを含めほとんどの人は、自分が正しくない行動をしているとは思っていません。

自分は正しい行動をしていると思っているのです。

そして、あなたが相手の行動を見て「正しい」「正しくない」と判断する根拠は、あなたの価値観に沿っている行動なのかどうかなのです。沿っていれば正しいと判断し、沿っていなければ正しくないと判断します。

しかし、物事のすべてを黒か白かの二面性のみで判断を下してしまうと、相手へ共感を示すことはなかなか難しくなります。

ですからまず、白か黒かで判断しない。これを意識することが、相手に共感し、かつ尊重できるようになるための第一歩となります。

仕事だと思って割り切る

相手に共感するというのは、あなたが持つ価値観を捨てろという意味ではありません。

自分の価値観があるからこそ、あなたらしさが出るのです。

しかし、その価値観が強すぎると「オレはオレだから」「私は私よ」と独善的になってしまう傾向があります。

個人的な価値観や大切にしたいことを否定する気はさらさらありませんが、少なくとも営業という仕事においては、相手が持つ自分との違いをある程度受け入れるという姿勢が必要です。

もちろん、「これだけはどーしてもダメ!」という部分はあると思いますが、少しでも許容範囲を広げる努力をしてください。

こういった意識が、いずれどんなお客でも苦手意識を持つことなく接することができるようになるセールススキルになるからです。

個人的なプライドはもちろん大切ですが、あまりにも強すぎるプライドは少なくとも営業の仕事をやっていく上ではマイナス要素となりやすいのです。

今述べた「白か黒かで判断しない」「違いを受け入れる」、この2つができる、もしくは努力できることを前提として、実際に相手に共感を示す方法を見ていきましょう!

共感の示し方

誰かに「あなたに対してこう感じています」と思ったところで、それを表現しなければあなたの思いは相手に伝わりません。では、表現すれば伝わるかというと必ずしもそうとも言えません。

あなたも経験したことが一度や二度はあると思いますが、「相手は私の気持ちをちっともわかってくれていない」と感じることがあります。あなた自身は自分の思いを表現しているのに、それに対する相手からの理解が得られないことがよくあります。

その相手がただ単に鈍感なのかもしれません。もしかすると、相手はあなたに興味関心がないという可能性もあります。理由はともかく相手に伝わっていないことは事実です。

そして、そんなときよく聞くのが、「え? そんな気持ちでいたなんて全然わからなかった……」という相手の反応です。

相手に伝わるように表現するには、次のようにする必要があります。

  • 相手に合わせる(性格や理解のレベルなど)
  • 正しい表現をする(TPOに合わせた表現手法をする)
  • 相手の立場に立つ(立とうと努力する)
  • 適切なコミュニケーションチャネルを使う(会う、電話、メールなど)

これらを上手に取り入れないと、あなたの表現は単なる“しているつもり”と同じことなのです。

では、セールスパーソンであるあなたが、お客への共感を表現する場面では実際にどうしたらいいのでしょうか?

コミュニケーション系のワークショップで数多くの方々に実践している方法をご紹介します。

相手の話の正しい聞き方

相手の話を聞きながらうなずく

これは、前項にも出てきたスキルですが、簡単なようでワークショップで実際にやっていただくと、たいていの人が自分ではうなずいていると思っているようですが、第三者から見ると微妙にうなずいている? と感じる程度なのです。

うなずき効果は、相手に「あなたの話に共感していますよ」という思いをしっかり伝えられ、ボディーブローのようにじんわりと効き目が出てくるので、しっかりと表現しましょう。うなずき方の要領は次のようになります。

・会話において「読点(、)」は、比較的早く、浅いうなずき。

これは相手の話を促す効果があります。

・会話において「句点(。)」は、少しゆっくりめで、深いうなずき。

「あなたの話をしっかり聴いて、理解しています」という表現になります。これだけでかなり相手はわかってくれている、共感してくれていると感じやすいため、安心して話を進めてくれます。

なお、電話等でお互いの姿が見えないときはうなずきは見えませんから、意識して普段よりも多めに「ええ」「はい」「そうですか」などの返事を言うといいでしょう。

相手の感情の起伏を感じたら繰り返す

人は会話の中で感情の起伏を出すケースが多々あります。それを見逃さないことです。

感情の起伏とは、まさに喜怒哀楽です。

「先日○○ということがあってとてもうれしかったんですよね」
「まったく当社は○○部と連携がうまく取れず困っているんですよ!」
「実は弊社工場で納品ミスのトラブルがありましてね。今が一番大変なんですよ。」

などなど。

このような言葉に共感を表す方法は、「繰り返し」(オウム返し)です。

例えば、先ほどの例を「繰り返す」とこうなります。

相手「先日○○ということがあってとてもうれしかったんですよね」
自分「それはよかったですね!」「それはうれしいことですね~!」
相手「まったく当社は○○部と連携がうまく取れず困っているんですよ!」
自分「それだと困りますね……」「ご苦労されていらっしゃるんですね」
相手「実は弊社工場で納品ミスのトラブルがありましてね。今が一番大変なんですよ。」
自分「それは大変ですね……」「何かと気苦労も多いのではないですか?」

言い方はいろいろなバリエーションはありますが、大切なのは相手の感情に共感しているという姿勢を示すことです。

「うなづく」「繰り返す」という2つのことを行いながら会話を進めると、多くのお客は今まで以上にいろいろなことを話してくれるケースがほとんどです。

さらに、気づかないうちにあなた自身にもお客の話を真剣に聞こうとする姿勢ができあがります。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

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