この記事では、「事業計画書に資金計画を書く時のポイント 」を解説します。

ベルシステム24の元社長である園山征夫さんの著書『勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方』で解説している内容を参考にもとしています。
【著者】園山征夫 ベルシステム24元代表取締役社長。

必然の繁栄を築く中期的視点での資金確保

事業計画を作成するときには、社長も社員も皆ハッピーになる、以下のような「中期的経営プラン」を資金面も含めて描きます。

工場、機械設備、棚卸商品など主要な事業資産の購入とそれらに必要な資本、借入金など資金の調達を中期の期間にわたり計画するためです。

中期的経営プランの例

構成 主な内容
1.ヴィジョン 世界に類を見ない特色ある会社づくりを通じて、××分野でNo.1になる
2.シナリオ フェーズ1:会社再建、経営の骨格整備、ビジネスモデル構築期
フェーズ2:ビジネスモデルの深化、事業拡大期
フェーズ3:収益構造見直し、次の飛躍期(5年後)
3.事業で目指すこと ××領域でNo.1になる
業界に新しいビジネスモデルを構築
自由闊達に働ける環境、企業風土づくり
4.基本方針 1.変化への対応と新しいことへのチャレンジ
2.顧客第一主義
3.現場主導のマネジメント
4.人材の育成に投資
5.戦略骨子 1.クオリティーで差異化を図り、闘いで勝つ
2.付加価値を付け、値付けを高くする
3.工場やセンター内部のシステム化を図る
6.利益・売上目標 1.フェーズ1で累損一掃
2.フェーズ2で売上×××億円、利益率×%
3.フェーズ3で売上××××億円、利益率××%
・限界利益率:××%
・労働分配率:××%以上(5年後)を目標とする
7.設備やシステムなど 1.生産現場に最新鋭のシステム導入
2.新規事業への投資
3.業務のシステム化
4.多様な契約スタイルの雇用を実現し3万人雇用(5年後)
8.資金の調達 5年後の総投資額××億円
調達方法増資××億円借入金×億円
自己資本比率××%

(a)設立後、ある程度事業が軌道に乗り出すと不足資金を金融機関などに頼ることも致し方ないが、借り入れ依存体質にならないよう資本と借入金の適正な比率を保つことを計画したい

(b)特別な固定的投資を除き、5年以内に毎年の事業計画を確実に達成してその利益から経常的な資金を稔出する計画とする。その後も継続して利益を出して、長期的資金をできるだけ確保する計画とする

研究開発型の企業や、固定資産投資の大きくなる事業等の例外もありますが、固定設備や商品を多く持たない計画にすることが肝要です。資金の長期の固定化は、経営の迅速なかじ取りに支障をきたします。

今の時代、潮流に乗り遅れたら、その遅れを取り戻すことは容易ではありません。事業展開のスピードこそが命です。「利益を出すまでには時間がかかるものだ」と悠長なことを言っておれないのです。

資金を何に使う計画かにより、調達方法や金額の大きさが決定します。長期に固定化する資産、すなわち工場、機械設備などすぐにお金を生み出さない資産に資金を使う場合、長期の借入金や増資で賄うのが望ましい。それぞれメリット、デメリットがあるので、比率のバランスを考慮しながら決定すべきですが、創業の頃は、いきなり長期の借入は無理なので、増資に頼ることになり資本比率が高くなります。

中期的に資金を増資で確保する計画のポイントは次の通りです。

  • 会社の長期的な発展にどう有効に使われるか
  • 会社が成長発展した暁には株主にどういうメリットが還元される計画か
  • 増資資金の受け手と出し手の双方が満足するスキームになっているか

増資で資金を増やす場合、「資本政策」を考えなければなりません。

理想は持ち株比率67%で、社長自身ができるだけ大きな株主比率を維持したいところです。自らが引っ張る覚悟を見せるため、骨身を削ってでも自分の資産を会社に増資金としてつぎ込むことでこの比率を維持してください。

自分だけでこの比率を維持できない場合は、どんな株主構成にするかをじっくり考慮しなければなりません。いざという時に備えて、自分と友軍と見なせる株主の合計比率を、67%以上としてください。いずれにしろ、増資資金の出し手も満足する「中期的経営プラン」でなければなりません。

さいごに

この記事では、「事業計画書に資金計画を書く時のポイント 」について解説しました。

以下のページでは、企業経営において必要不可欠な事業計画書作成における、「3つの構成と10の骨子」について記載したチェックシートを公開しています。

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園山征夫

ベルシステム24元代表
84年CSKに入社。CSK創業者、故大川功会長より経営危機のベルシステム24の立て直しを託され、86年専務、87年43歳で同社社長に就任。就任早々、社員に「6つの約束」として会社の将来像を示し、94年店頭公開。99年には東証1部上場を果たし、テレマーケティング業界No.1の企業に成長させた。

 

【出典】園山征夫.勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方