「新規事業を立ち上げようとは思うもののアイデアが思いつかない…」という経営者の方は多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では「新規事業のアイデアの出し方」について紹介していきます。

事業の多角化で50事業年商160億円の企業グループを構築した山地章夫さんの著書『会社を強くする多角化経営の実戦』で解説している内容をもとに編集しています。
【著者】山地章夫 ヤマチユナイテッドグループ代表

新規事業とは?

新規事業の話を始める前に、そもそも新規事業とはなにか?をおさえましょう。

新規事業とは、新たに始める事業のことです。「企業が既存の事業以外の事業分野に新たに参入する場合」や、「起業し新たに事業を始める場合」などを指します。

この記事では「企業が既存の事業以外の事業分野に新たに参入する場合」を想定して「新規事業のアイデア」についてご紹介していきます。

新規事業のアイデアの出し方

新規事業の3つのパターン

『会社を強くする多角化経営の実践』では、多角化の方向性を、縦軸に「技術(ノウハウ)」、横軸に「市場(顧客)」を取り、それぞれ「既存」と「新規」に区分しています。

多角化の方向性

多角化の方向性

新規事業発想の具体的な手法

新規事業発想の具体的な手法

2つの図の、「現在の技術」「現在の市場」の部分が現在展開している事業だとすると、多角化のパターンは、次の3つに分けられます。

  • 商品開発戦略での多角化
  • 市場開拓戦略での多角化
  • 異業種進出戦略での多角化

それぞれ確認していきましょう。

商品開発戦略での多角化

自社が抱えている顧客に新しい商材を売ることです。

自社の顧客はすでに商材について「好きだ!」と言ってくれているわけですから、期待を裏切らない新商材を開発して事業化すれば、成功する確率は高いといえます。

多角化のアプローチとしては、最もオーソドックスで、難易度も低いといえます

市場開拓戦略での多角化

現在の事業をベースに、新しい市場を開拓するケースです。

これまで企業向けに販売していた商品を一般消費者向けに販売するケースなどがこれに当てはまります。自社の得意な商材・サービスを新しいお客様に売る、というアプローチです

異業種進出戦略での多角化

これまでの事業とは関連のない異業種に進出するケースです。たとえば、居酒屋チェーンの和民が介護事業に進出したケースは、まさに異業種に進出した例です。

まったくの異業種に進出するため、難易度が高いように感じるかもしれませんが、FCに加盟したり、代理権を取得したりするのは、それほど難しいことではありません。

3つのパターンとそれぞれのアイデアの出し方

ではそれぞれのパターンに沿ったアイデアの出し方を見てみましょう。

商品開発戦略~現在の事業に新しいなにかをプラスする~

このパターンの多角化を成功させるには、既存の事業に「何かをプラスする」という発想が重要です。

すでにそれなりの売上を稼いでいる会社であれば、すでに顧客と市場が存在するはずです。その顧客が「何を求めているか?」「どうすればもっと喜んでもらえるか?」を考えることによって多角化のアイデアは生まれるのではないでしょうか

創造的模倣について

商品開発戦略での多角化を実践するには、「創造的に模倣する」といった手法も効果的です。

創造的模倣とは、ドラッカーの著書に出てくる言葉で、「最初にイノベーションを行った他社の商品やサービスにひと工夫を加えて、自社オリジナルの商品・サービスを普及させること」で、もっと簡単にいえば、「他社の成功事例をマネする」ということです。

現在の事業をベースに、他社の成功事例をマネして取り入れることによって、顧客に新しい価値を提供できるというわけです

市場開拓戦略~現在の市場をベースに新しい市場を開拓する~

このパターンでは「市場を切り分ける」ことが重要です。具体的に次の4つに分けることができます。

  • 市場を限定する
  • 市場を他に求める
  • 川上・川下へ進出する
  • BtoB、あるいは BtoC に変化する

市場を限定する

既存事業が展開している市場(顧客層)を細分化して切り分けることによって、新しい市場を生み出す手法です。自社の事業を切り分けて考えてみることで、新しい顧客のニーズと多角化のアイデアが生まれてくるのです。

市場を他に求める

現在の事業がもっているノウハウをベースに、新しい顧客を他の市場に求めるのも多角化戦略のひとつです。既存のノウハウや自社の強みを発揮できる市場が他にないか、常にアンテナを張っておくことで、多角化のアイデアは生まれてきます

川上・川下へ進出する

ビジネスプロセスの川上・川下に進出する方法です。メーカーが小売りや卸売りを始めるために新事業を立ち上げるケースや、小売業がメーカーに進出する事業を立ち上げるケースなどが、これに該当します。

BtoB、あるいは BtoC に変化する

企業を相手に商売をする BtoB の企業であれば、一般ユーザーを相手にビジネスをする BtoC に挑戦してみる。逆に、BtoC の企業が、BtoB に変化してみる。そうすることによって、これまでとは異なる顧客を相手にした新規事業を立ちあげることができます。

異業種進出戦略~異種業に展開~

関連のない事業に手を出す際は次の4つの手法が考えられます。

  • FC(フランチャイズ)に加盟する
  • 代理権を取得する
  • ノウハウを買う
  • コラボレーションする

FC(フランチャイズ)に加盟する

FCに加盟すれば、成功のための「ノウハウ」「時間」「ブランド」「営業エリア」を本部から買うことができます。新規事業を成功させるには、たくさんのハードルがありますが、そうしたハードルを取り除いてくれるのがフランチャイズのシステムです。

完成されたビジネスモデルなので、まったくの異業種であっても、成功する確率は高くなりますし、多角化を進めるうえで、フランチャイズ加盟が一番の近道ともいえます。

代理権を取得する

主に他社の会社の商品の代理店になることです。代理権を取得する場合、自分で商品を開発する必要はないので、わりと手っ取り早く多角化を図ることができます。

海外メーカーにアプローチして「日本の総代理店から始める」という発想も大切です。

ノウハウを買う

「うまくいっている他社の事業を自社で真似をする」というものもあります。しかし、見よう見まねで新規事業を始めても、表面的な真似になって、あまりうまくいきません。

それよりも、「お金を出すので、ノウハウを教えてほしい」と正面からお願いしたほうが、新規事業はうまくいく可能性は高くなります。事業を行う地域が違えば競合になることはないので、教えるほうの警戒心もとけて、あっさりとノウハウを教えてくれるものです。

コラボレーションする

ノウハウをもった会社(人)、あるいはすでに市場をもっている会社(人)とコラボレーションし、新しく開発した自社の商品・サービスを新しい市場に売るというアプローチです。

まとめ

この記事では、山地章夫さんの著書より「新規事業のアイデアの出し方」をご紹介しました。

ひとくちに新規事業と言っても展開方法はさまざまです。実際に新規事業のアイデアを出す際には自社に合ったプランで考えてみるのがよいでしょう。

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