会社が成長することによって、どこにたどり着こうとしているのかを社員と共有するために必要なのが「事業計画」です。
はっきりとした事業計画を示すことで、社員の成長ステップを「見える化」することができます。すると、成長のスピードも格段に速くなります。
そこで今回は、ベルシステム24を倒産寸前から1000億円企業にまで成長させた、同社元代表の園山往夫さんの著書『勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方』から一部を抜粋し、”事業計画における「経営理念」の役割”をご紹介します。
第1回 「事業計画」は、会社の夢を計画的に実現するための物語
第2回 「中期的経営プラン」を計画性をもって実行することこそ成長への近道
第3回 事業計画書における「成長デザイン」の描き方
第4回 事業計画書を作成するべき9つの理由
第5回 「経営理念」の下に事業計画や中期経営戦略を展開
「経営理念」は、会社経営の軸となるもの
会社を成長・発展させるには、経営哲学が必須です。それは会社経営にあたっての骨格、背骨部分に相当し、これがしっかりしたものでなくてはなりません。会社繁栄の土台となるものです。
この経営哲学は「経営理念」とも表現され、簡単に言えば、「社会的な使命」や「存在意義」です。
たくさんの会社が競争して生きている中で、自分の会社はこういう存在意義のある経営をして社会的な使命を全うしていくという、経営の根幹となる部分です。この中に社長の野望・思い・志などの抽象的なものがヴィジョンとして包含され、それをデザインした形で具体的に表現されます。
個別の企業で具体的な表現方法に違いがありますので、私自身の具体例で説明します。私は、1987年から2008年までベルシステムの社長をしており、同時に、期間は違いますが、CSK(現SCSK)、セガ・エンタープライゼス(現セガサミーホールディングス)、アスキー(現KADOKAWA)の社外取締役もやっておりました。
経営理念における「ヴィジョン」
私はベルシステムの経営を引き受けた後、最初に「6つの約束」として「夢」を掲げました。
これは経営理念における「ヴィジョン」と位置付けられるものです。
この「ヴィジョン」を実現して、社会的使命を全うするための自社の「ミッション」を社会に約束しました。「ヴィジョン」と「ミッション」を遂行し、会社の存在意義を確立するために経営の背骨の部分にあたる「経営理念」を定めました。その理念の下に「中期経営戦略」や「年度事業計画」を展開します。社員を雇用し、システムや設備に投資し、資金を借り入れて経営を行うという関係となります。
経営理念における「ミッション」
そして、会社の社会的使命たる「ミッション」を、「新しいヴァリューを発見・創造します」と設定しました。
社会に付加する新しい価値を生まなければ、社会的使命は全うできません。自社が属する業態は以前からあるとしても、その業態に新機軸をもたらしたい思いが強く、この表現になったのです。
価値は既に存在するのに、我々が気づかないものもあります。それを「発見する」という表現にしました。また、既存の環境にはないが、事業を遂行するにあたりゼロからつくっていかなければならないものを「創造する」と表現したのです。
この「ミッション」は、かなり厳しい要求を社長の自分自身や社員に課したものでした。なぜならば、会社は、マーケットに常に新しいものを生み出さねばなりません。日々の業務を通じて何か新しいことを付加していかなければならないことを要請しているからです。
「社是」と経営理念
会社の経営の軸を「社是」と「経営理念」とし、「社是」は「サービスでリーダーシップ」としました。
特定(当時は、テレマーケティング業)のサービスでナンバーワンになろうという決意の表れです。また、サービス分野には進出するが、決して不動産や物的商品には会社として手を出さない縛りを決意したものです。
「経営理念」として、
一、「行動と感性で常に第一ページを拓く経営」
一、「自由闊達、創造性を重んずる経営」
一、「個人を尊重し、個人と会社の目標を一致させる経営」
を掲げました。内容の詳細は省きますが、経営側の経営姿勢を表明し、「社是」と一緒に経営の軸となるものです。一条一句吟味して決めました。
世の中、美味しそうな話や隣の芝生の青さについ目移りがします。経営層が本来使うべきところから離れたところに大切な経営資源を使わないように、また、経営の軸を修正する際に必ず戻ってこられる原則を作りました。
これによって、中期経営戦略の策定や毎年度の事業計画書の作成にあたり、経営の軸がブレることが少なくなります。
同時に、「経営目標」を達成するにあたり、会社の構成員全員が仕事をする姿勢を明確に明示したのです。「ミッション」、「社是」と「経営理念」は、毎朝の朝礼や研修、イベントなどの会合では必ず唱和することに決め、最初から口語体で唱和しやすい文章にしていました。
初めの頃は意味が分からず唱和していた社員も、時間の経過に伴い、各条文で社長が社員に何を要求しているのかが腹の底にストンと落ちるようになります。会社の経営理念を全社員が共有できることになるので、戦略や戦術をはるかに落としやすくなります。
【出典】園山征夫.勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方
第1回 「事業計画」は、会社の夢を計画的に実現するための物語
第2回 「中期的経営プラン」を計画性をもって実行することこそ成長への近道
第3回 事業計画書における「成長デザイン」の描き方
第4回 事業計画書を作成するべき9つの理由
第5回 「経営理念」の下に事業計画や中期経営戦略を展開
会社を成長拡大に導く、事業計画チェックシート
以下のページでは、企業経営において必要不可欠な事業計画書作成における、「3つの構成と10の骨子」について記載したチェックシートを公開しています。