この記事では、「強い組織の作り方」をご紹介します。
組織作りの基本とコツを身につけることで、強く一体感のある会社を作り上げることができるはずです。
この記事は山形大学客員教授の坂本桂一さんが著書『年商5億円の「壁」のやぶり方』で解説している内容をもとに編集しています。
強い組織の基本はハブ&スポーク型
文鎮型の組織は、社員数十人まで
社員数がまだ十人以下のときは、社長と他の社員の関係は下図のようになっているはずです。
社長というハブから社員数だけスポークが出ている。いわゆる文鎮型の組織といってもいいでしょう。
この段階だと、社員は日常的に社長の話を聞き、日々社長が何をやっているかを目の当たりにしているので、たとえ社長にコミュニケーション能力がなくても、社長と他の社員との間で、会社のビジョンや仕事のやり方などの認識が大きく食い違うようなことは、ほとんどないといえます。
しかし、この形はせいぜい十人が限界です。
ハブ&スポーク型の組織
そこで社員数が十を超えたら、社長は自分の代わりができる人が何人いるかを冷静に見極めます。
具体的にいうと、この状況なら社長はこう言うだろう、このように判断するはずだということがわかり、社長がするのと同じように実行できる人ということです。
社長の分身を社長の下に置く
そのような社長の分身ともいうべき人が三人いたとしたら、その三人を社長の下に置き、仮に営業部長、製造開発部長、仕入部長とします。
管理部も設けたいので、社長の代わりをするには力不足の人間を管理部長にして、先の三人と同等のポストにつけるようなことをしてはいけません。社長の分身が三人なら、あくまで社長の下の階層はその三人です。
社長の分身というかぎりは、少なくとも仕事を任された分野においては、社長がいなくても社長と同じだけの働きをしてくれないと困ります。それができる人が見つからないのなら、当面その仕事は社長が自らやるべきなのです。
とにかく社長は自分のすぐ下に、自分とビジョンや概念を共有し、自分に匹敵する能力やスキルをもつ人間を置いてください。
できれば十人くらいいるのが理想ですが、別に三人でも四人でもかまいません。三人いれば三倍、四人いれば四倍、十人いれば十倍に自分の世界を広げることができるというだけのことです。
社長の分身は、さらに自分の分身を育てる
一方、社長の下で、社長というハブからスポークで直接つながっている人は、次に自分の分身を育てます。社長と自分の関係の相似形を、今度は自分をハブにしてつくるイメージです。スポークの数は自分のコントロールできる範囲内。そうすると五から十ということになると思います。
こうして社長という第一階層の下に第二階層のハブ&スポークができたら、さらにその先に第三階層、第四階層とハブ&スポークを次々とつくっていく(下図)。これが年商五十億円、百億円を視野に入れた組織づくりの基本です。
組織の一体感を保つコツ
ハブ&スポーク型の組織の場合、ハブは自分とスポークでつながっている人とは非常に緊密な関係を築きます。
といっても、ハブの命令に忠実に従うのがスポークの先にいる人の役割ではありません。極端ないい方をすれば、ハブのコピーになり次のハブとして機能を果たすのがスポークの先に位置する人の仕事なのです。
社長が、自分の会社を「日本でいちばん大きいラーメン屋チェーン」にするというビジョンをもっているとします。
そうしたら、その社長というハブから出ているスポークの先にいる経理部長も、やはり心の底からそう思っていなければなりません。
そして、「この会社を日本一にするのだ」ということを前提に金融機関と交渉し、部のメンバーに指示を出すのです。
社長に経理の知識があるかどうかは関係ありません。とにかく、自分と同じだけの経理の知識をもっていると仮定し、その社長が経理部長に就いたとしたら、この場面ではこう考えこのように振る舞うというとおりのことをやる。それがスポークに求められている役目なのです。
自分の下に正確な自分のコピーを置く
ただし、社長が経理部に来て直接指示を出すことはありません。
社長がマネジメントするのは、あくまで自分というハブから出ているスポークの範囲のみ。これこそが、ハブ&スポーク型組織の特徴だといっていいでしょう。
社長の下で第二階層のハブとなる人は社長のコピーなのですから、ハブの指示はすなわち社長の指示。わざわざ社長が出向いてくる必要はないといえます。
要するに、社長の下にいるのは、社長の意思を再現できる子会社の社長のようなものだと思えばいいのです。
親会社の社長が、すべての子会社の社員まで管理するのは、物理的にも無理があります。
それよりも子会社の社長連中と深いコミュニケーションをとって、彼らに自分のもっているものを注入し、それをベースに経営してもらうほうが、数段効率的なのです。
このハブ&スポーク型組織の要諦は、自分の下にどれだけ正確な自分のコピーを置くことができるかにあります。
階層は少なくする
しかしながら、どれほど時間をかけても、細部に至るまで完全にコピーはできないので、階層が増えればその分劣化が進むのは避けられません。ゆえに、会社の一体感を確保するためには、階層はできるだけ少ないほうがいいといえます。
つまり、ハブとなる人はマネジメントできる最大数のスポークをもつべきなのです。
同じ階層のハブは定期的にポジションを入れ替える
また、ひとつの部署をずっと同じ人が統括していると、社長の考え方だけでなく、その人の個性に関する部分の影響も、少なからずその部署内に広がっていきます。
しかも部下にしてみれば、部長の口から出る言葉は、社長のものか部長独自のものか区別がつきません。部長のカラーが強すぎるとその部署だけが、社内で浮いてしまう可能性も出てきます。
そこで、それを防ぐために、管理部から営業部や、開発部から仕入部のように、同じ階層のハブは定期的にポジションを入れ替えるのです。
それまで管理部長だった人に営業部長が務まるかなどと心配する必要はありません。マネジメントの基本はどんな部署でも変わらないし、専門知識は勉強すればいいのです。
管理部で社内にずっといる社員は、ほとんど席にいない営業の仕事が理解できないし、営業は営業で、自分たちの売上が会社を支えているのであって、管理部は自分たちがいるから存在できるくらいにしか思っていません。しかし、部署のトップが入れ替わることで、そういう思い込みや誤解もなくなります。
社長の意思を隅々まで伝え、組織として一体感を保つ
売上の伸びと社員数の増加をシンクロさせるカギは、どれだけ隅々まで社長の意思が伝わり、なおかつ組織として一体感を保てるかにかかっているのです。
こうして組織を作る場合、想像の通り、第一階層のスポークの先にいる部下、幹部中の幹部が非常に重要です。
どんなに時間をかけて育てても、どんなにお金をかけてヘッドハントしてもかけ過ぎはないと思います。幹部にかけるコストは、確実に会社に還元されるのです。言葉は悪いですが、えこ贔屓して育てるくらいの腹積もりが必要だと思います。
私は、幹部候補はいつもカバン持ちをさせて、四六時中行動を共にするようにしていました。厳しいようですが、そのくらい、幹部のポジションが大事だと思っているということです。
さいごに
この記事では、坂本桂一さんの著書より「強い組織の作り方」を解説しました。
- 強い組織の基本は「ハブ&スポーク型」。
- ハブ&スポーク型の組織は、「社長の分身を社長の下に置き」、「社長の分身が、さらに自分の分身を育てる」ことで作り上げる。
- 組織の一体感を保つコツは、「自分の下に正確な自分のコピーを置く」「ハブ&スポークの階層を少なくする」「同じ階層のハブは定期的にポジションを入れ替える」ようにすること。
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坂本桂一
㈱フロイデ会長兼シニアパートナー(https://www.freude.bz/)
事業開発プロフェッショナル。山形大学客員教授。アドビシステムズ㈱(当時社名アルダス㈱)を設立しページメーカーをはじめて国内に独占契約で導入、日本のDTP市場をゼロから創造した。専門は、新規事業創出、ビジネスモデル構築、M&A。
【引用】坂本桂一.年商5億円の「壁」のやぶり方