この記事では、就業規則に「休職」に関するルールを記載するときのポイントを、社会保険労務士 寺内正樹さんの著書『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』よりご紹介します。
【書籍】『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』
【著者】寺内正樹 社会保険労務士 / 行政書士
休職とは
「休職」とは、雇用契約を維持したまま、長期間の労働義務を免除する状態を言います。
これは、法律上は必ずしも社員に認めなければならない制度ではありませんが、実際にほとんどの会社で認められています。
通常、身体・精神の障害等で長期間の休暇が続く場合には、解雇事由にあたるとしている会社が多いですが、「休職」の制度を設けることによって、一定期間の雇用が保証されていることになり、社員にとってメリットが生まれます。
しかし他方で、安易に「休職」の規定を設けると会社にとっては大変なことになります。
適切な休職期間とは
私のクライアントの自動車部品製造業の会社があります。現在は、先代の社長から息子さんが引き継いで、2代目社長として経営を行なっています。社員は比較的、中高齢者が多いです。ある時、50代の社員が身体を壊し、長期間の療養を余儀なくされました。実は現社長は、まだ自社の就業規則を読んだことはありませんでしたが、就業規則が、すでに先代の社長の頃につくられていたのは知っていました。そして、実際に、金庫の奥から就業規則を取り出して確認してみると、休職期間は「2年間」となっていました。
これは、その社員の雇用を2年間保証することを意味しています。その間、会社の社員であることは変わりありませんので、社会保険料は発生し続けます。会社は、実際には働いていない人の分まで負担をしなければならないのです。
さらに、代わりに人を雇ってしまった場合にも社員が戻ってきた段階で、原則として復帰させなければなりません。代わりの人を解雇するわけにもいきませんので、その時に会社の人件費の負担は大きくなってしまいます。
だからこそ、休職のルールを定める時は、自社の体力を考えて、休職期間を考えなければなりません。一般的な中小企業であれば、1~6ヶ月ぐらいが現実的でしょう。
また、より長く会社に勤めている社員に、厚い待遇をしたいと思う会社もあるはずです。その時には、勤続年数を考慮し、1年未満は休職なし、1年以上3年未満は1ヶ月、3年以上は3ヶ月と段階的に休職期間を変えていく方法も有効です。
うつ病社員の休職にはどう対応すべきか
また、最近はうつ病などのデリケートな問題で頭を悩ませている会社も多くあります。
その際には、ルールの定め方によって、休職の条件に該当することを理由に会社を休んでもらうということも可能です。
休職は、社員の請求で会社が認めるものではなく、会社が社員に対して命じるものとルールで決めてしまうのです。この場合、本人がどんなに出勤を望んでも、会社の判断で休ませることができますし、復帰を望んでも必ずしもそれに応じる必要はありません。
先日もあるメーカーの営業の方が病気で休むことになりました。彼は、仕事中でも極度のストレスを感じると突然、大声で騒ぎ出すような症状が見られました。会社としては取引先と話をする営業がそのような状態では困ります。そこで、休職の規定を理由に休んで治療に専念してもらうことにしました。休職期間は2ヶ月となっていましたので、期間満了時に医師の診断書を提出してもらいました。しかし、診断からも復帰は難しいということになり、就業規則に従い退職という結果になりました。
今回のケースでは、本人は復帰を求めていたので本意ではなかったのかもしれませんが、あらかじめ休職のルールが定められ、全社員への周知が徹底していたので、トラブルにはなりませんでした。休職は、一定期間社員の地位を守ると同時に、裏を返せば、一定期間待つことで退職を適切に進めることができる会社自体を守る制度でもあるわけです。
休職について就業規則で定める時の6つのポイント
さらに、休職を効果的に活用するためのポイントは、以下の点です。
- 休職期間を短めに設定する(1~6ヶ月)
- 休職期間中は給料が発生しないようにする
(休みの理由によっては、健康保険から給付を受けられるため) - 復帰の条件を明確にする
(会社指定の医師の診断書を求めるなど) - 短期間に休職を繰り返す場合、期間を通算できるようにする
(うつ病などは、良くなったり悪くなったりを繰り返すため) - 休職期間満了時には解雇でなく退職とする
(解雇とすると解雇予告手当支払いの必要が出てくるため) - 社会保険料の負担を決めておく
(全額会社負担とするか、一部社員負担とするかを明確にする)
以上の点に注意して、休職の制度をつくりこみ、ルール化することで、同じ休職制度であっても全く異なる意味や効果を持たせることができます。
さいごに
以下のページでは、「就業規則」を会社の成長拡大に役立つものにするためのチェックシートを公開しています。
記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。
仕事のあたりまえは、
すべてルールにまとめなさい!
『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』では、今回ご紹介した内容の他にも、あなたの会社に合ったルールの作り方や、会社の成長につながるヒントを紹介しています。会社にルールがなく社内にまとまりがないと感じる方や、会社の急成長に対して体制が整ってないと感じている経営者の方は、是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
寺内正樹
シリウス総合法務事務所代表(http://www.kaisha-teikan.com/)
2002年11月より行政書士事務所を開設。2005年10月、社会保険労務士の登録も行い、企業の法務・人事労務をトータルにコンサルティングしている。中小企業の新会社法対応、会社設立には特に力を入れており、従来の業務に加え、個人情報保護法対策・プライバシーマーク取得支援などの新分野にも積極的に取り組んでいる。
Facebook:terauchimasaki
【参考】寺内正樹.仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!