この記事では企業の在庫管理に欠かせない「需要予測の手法について、データ分析、IT活用を得意とするコンサルタント 平井明夫さんと石飛朋哉さんの共著書『データ分析できない社員はいらない』よりご紹介します。

需要予測とは?

需要予測とは、前もって売れる量を推測することです。

需要予測の必要性

なぜ、需要を推測する必要があるのでしょうか?

それは、基本的に顧客が商品を手にするまでに我慢できる時間より、調達・生産し、顧客の手に届けるまでの方が時間がかかるので、事前に在庫を準備しておく必要があるからです。しかし、在庫は多すぎるとコスト・資金繰りに悪影響を与え、少なすぎると機会損失につながるため、事前に丁度いい量を推測し、準備しておかなければなりません

需要予測の基本的な2つの考え方

需要予測の方法は、大きく2つに分類できます。一つは“統計的な予測”で、もう一つは“人的な予測”です。

統計的な予測は、過去の実績を基に未来の予測値を弾き出します。モデルには移動平均法、指数平滑法、回帰分析など多数存在します。

人的な予測は、顧客数や見込み客、商談や受注状況のデータを積み上げた上で、経験とある程度のカンで予測します。統計的な予測に比べて近い将来を高い精度で予測でき、状況の変化にも対応しやすく、短いスパンで見直しができます。

需要予測の3つの手法

ここでは、一般的な3つの需要予測の手法を紹介します。

需要予測の3つの手法
  • 移動平均法
  • 指数平滑法
  • 回帰分析

移動平均法

少しずつ移動しながら平均を取っていく方法を移動平均法といいます。

例えば、過去3ヶ月で移動平均を取る場合、当月(第n期)の売上予測は過去3ヶ月(第n-1、n-2、n-3期)の平均で求め、来月(第n+1期)の売上予測は過去3ヶ月(第n、n-1、n-2期)の平均で求めることを指します。

図1は、移動平均法の例です。この図から、計算の対象が1ヶ月ずつ移動していることがわかると思います。

図1 移動平均法の例
7-1 移動平均法の例

直近の状況を反映しやすいという利点がありますが、過去データが多く揃っていたとしても、一部分のデータしか活用されていないということもできます。

指数平滑法

前期の実績値と予測値を利用し、重みづけをした上で、今期の予測をする方法を指数平滑法といいます。もっとも単純な指数平滑法の予測は以下の式のとおりです。

今期予測値とは?
今期予測値
= α × 前期実績値 + (1 – α) × 前期予測値
= 前期予測値 + α × (前期実績値 – 前期予測値) ( 0<α<1 )

係数αを平滑化指数と言い、この例ではαが1に近いほど直前の実績重視の予測となり、0に近いほど過去の経過を重視した予測となります。前期予測値に何を使うか明確な基準はありませんが、多くは過去の実績の平均値などを利用します。

図2 指数平滑法の例7-2 指数平滑法の例

回帰分析

回帰分析とは、因果関係があると思われる変数(例えば、時間や販売数量など)間の関係を、Y = a + bX といった直線の形で記述する統計手法です。

結果となる変数は1つですが、原因となる変数の数により、単回帰分析、重回帰分析と呼び分けたりします。

ここでは、期と販売実績という2つの変数を使って、回帰分析の方法をご紹介します。

下のグラフでは、期ごとの販売実績を折れ線グラフで表し、その折れ線グラフのはじめと終わりの点を結ぶことで、下記の数式で表される直線ができました。

Y = 66.084X + 5095.5

図3 回帰分析の例7-3 回帰分析の例

求められた直線をもとに、図4の表の予測対象と書かれた部分の需要予測をしてみたのが下の数式になります。

66.084 × 13 + 5095.5 ≒ 5955

図4 回帰分析の例(データ)7-4 回帰分析の例(データ)

3つの手法の中でどれを選択すべきか、また使用されている係数にどのような値を設定すべきか検証が必要ですが、それには過去データを利用します。

過去データからそれぞれの手法で過去を予測し、すでに確定している実績値と比較した結果、一番誤差の少ない手法(もしくは係数の値)を利用するのがよいでしょう。

 

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さいごに

この記事では「需要予測の手法」について解説しました。

需要予測のポイント
商品の過去の販売実績データを使って、在庫の最適化を図るために必要な商品の需要を予測することができます。

記事の内容について詳しく知りたい方は、『データ分析できない社員はいらない』(平井明夫・石飛朋哉 著)をお読みください。

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平井明夫

DEC(現、日本HP)、コグノス(現、日本IBM)、日本オラクル、アイエイエフコンサルティングにおいて、一貫してソフトウェア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。特にBI (ビジネスインテリジェンス)を得意分野とする。

石飛朋哉
「情報活用を経営力に」を命題にBI の布教活動に勤しむが、”分かりやすいか””伝わるか”と、日々苦悶しながら過ごしている。


【引用】平井明夫・石飛朋哉.
データ分析できない社員はいらない