この記事では、「営業トークのコツについて、箱田 忠昭さんの書籍『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ』よりご紹介します。

【書籍】『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ
【著者】箱田 忠昭
 インサイトラーニング株式会社代表

売れる営業トーク7つのコツ

交渉の場で使われているセールステクニックはさまざまあります。お客の反論に対する営業ストークとして、特に私が有効と思う7つの方法を紹介します。あなたの商品、サービスにあてはめて、ぜひ実践してください。

売れる営業トーク7つのコツ
  • 高値設定法
  • セルダウン法
  • 高値再提案法
  • 折り返し電話法
  • 業界慣習法
  • 雲の上法
  • セルアップ法

高値設定法

バイヤーは、ともかくまけさせたいと思っていますから、セールスパーソンが言う通りに値引きすれば、バイヤーとしては大いに自己満足するのです。

従って、セールスパーソンは見積もりの段階で、少し高めに金額を設定しておき、その後の交渉で値引きをすればよいのです。280万円欲しかったら、初めの見積もりを320万円にしておき、その後、値引きを要求されたら、40万円引くという具合です。

「わかりました。そこまでおっしゃるなら、今回だけですよ。40万円お引きして、280万円で結構です」と、バイヤーの要求通りに値引きすれば、お互い満足のいく結果が得られます。

セールスパーソンとしては、当初の予定通り280万円で契約することができるし、バイヤーとしては40万円の値引きに成功したことになります。相手に花を持たせ、自分は実を取る方法です。

セルダウン法

例えば、あなたがリフォーム会社のセールスパーソンで、お客に対して240万円の見積書を出したとします。すると、「高いですね、実は予算が200万円しかないのです。どうでしょうか、40万円まけて、ちょうど200万円にしてもらえませんか?」と、値引き要求を受けました。

そのとき、「そうですか、わかりました。なんとか値引きする方向で考えてみます」と受けてしまってはいけません。「わかりました、200万円ですね、それでは仕様が少し変わります」と言って、壁紙の素材、床材など内容を極端に落としたものを持っていくのです。お客はその差に驚き、

「こんなに違うんですね、やっぱり前のやつでいきましょう。240万円の仕様でお願いします」と言ってくるはずです。

単純に値引きするのはよくありません。値段は下げられますが、その分質も下がりますと主張するわけです。初めにグレードの高い仕様を見ているお客にとって、大幅な仕様ダウンは避けたいと思うはずです。

こうしたお客の心理をついた方法をセルダウン法といいます。成功させるコツは、まず初めにお客のニーズをしっかりと聞き出した上で、ニーズに合っているものか、またはワンランク上のグレードのものを提案することです。

高値再提案法

初めに言っておきますが、このテクニックは非常に高度です。ですから、使うときは十分なリハーサルをしてから臨んでください。

例えば、ソフト開発の仕事を350万円で見積もりを出したとします。お客は「高すぎるよ、もっと安くなるでしょ。これじゃダメだな」と言ってきます。セールスパーソンは「ギリギリで300万円までなら何とかしましょう」と主張します。

お客は「それでも高いよ。250万円じゃないとダメだな」と言ってきます。そこで、お客がどうしても主張を譲らない場合、セールスパーソンが取る方法です。「わかりました。私としては250万円はムリだと思いますけれども、ともかく会社へ帰って上司と相談してみます。会社の方針として問題なければ結構です。お約束はできませんが、なんとかしてみます。明日お答えします」と返事をして一旦引き揚げるのです。

そして翌日、お客に対してあなたはこう言います。「誠に申し訳ありません。実は昨日お出しした見積もりですが、私の計算ミスがあり、誤ったものを提出してしまいました。本当に申し訳ございません。こちらが新しい見積もりです」と言って340万円と書かれた見積書をお客に見せます。

「困るよ、いまさらそんなこと言われても。300万円以上は出せないよ」

つまり、この時点で250万円という話はもうなくなっているのです。これは、ニセ取消法とも言って、相手の提案もしくは強引さにズルズル押し切られそうなときに使うと効果的なテクニックなのです。

しかし、かなりの演技力が要求されますし、計算ミスなどする会社であるという信用度にも影響する方法ですから、くれぐれも慎重に使ってください。

折り返し電話法

お客からの電話で、次のように言われることがあります。

「今、請求書を受け取りました。ちょっと高いですね。10%引きの90万くらいになりませんか?」

このような場合は、「たいへん申し訳ありません。今ちょっと手が放せませんので、こちらからすぐに折り返しお電話いたします」と言って、いったん電話を切るべきなのです。これは、電話代がどうこういうのではありません。

相手は準備万端整えて、電話をしてくるものです。最初にこう言って、こういうふうに説得しよう、反論されたらこう切り返そうと。しかし、こちらは突然受けることになり、当然オロオロしてしまいます。そこで、一旦電話を切ってからよく作戦を立て、改めて電話し直したほうがよいのです。

あなた主導で交渉したければ、まずはじっくり考える作戦タイムを作りましょう。

業界慣習法

業界慣習法とは、その業界に疎い買い手に対して「このやり方が業界の常識で、通常行われている方法です」と言って納得してもらう戦術のことです。

つまり、「われわれの業界では、この方法以外では受け入れられません」という言外の意味を持っているので、かなり効果的な戦術です。しかも、ほとんどリスクがないのに効果は絶大です。

この一番よい例が、業界で標準的に行われている共通契約書です。一般性のある共通契約書のようなものをわざわざ変更して契約する人はあまりいません。他人はこれで普通に契約しているという意味で、プレッシャーにもなります。

リフォーム業者の例

例えば、リフォーム業者が水回り工事を請け負ったとします。リフォーム業者は、工事の前に、お客に次のように言えばよいのです。「支払条件は工事開始時に30%、工事が半分済んだところで60%、工事完了時に残りの10%をお願いします」お客が「それはムリだよ。とても受け入れられない」と言ってきたら、リフォーム業者は「これは業界の標準的な支払条件です」と言って、お客に標準契約書を見せればよいのです。

雲の上法

お客が強硬に値下げを要求してきたときに使える方法が、この雲の上法です。一種の責任転嫁法といってもよいでしょう。

例えば、あなたが100万円定価のものを1割引の90万円で見積書を出したとします。お客は強硬に2割引を主張します。つまり、80万円にせよ、と言い張っているのです。この場合、いくら言い争っても平行線をたどるでしょう。その場合は、一旦引き下がるほかありません。

「わかりました。とりあえず会社へ戻ります。部長と検討して、明日お返事いたします」と言って会社に戻るのです。翌日、セールスパーソンはお客に次のように言います。「実は2割引をするには部長の決裁だけでなく、本部長の承認を必要とします。しかし、あいにく本部長が海外出張中でいないんですよ」あるいは、「実は2割引をするには社内の原価委員会が承認する必要があるんです。次の原価委員会が開かれるのが来月の15日なので、あと3週間も待たねばなりません。3週間お待ちいただいてもよいのですが、その時点で否決されるかもしれませんので、私も困っているのです」と言えばよいのです。

するとお客は、「そんな、3週間も待てないよ、今すぐ決めてくれ」と言うでしょう。そこであなたは、「私は是非決めたいのですが、私には決められません。どうでしょうか、とりあえず1割引で納品させてください。その後3週間後に、原価委員会に諮ってみます。なんとか2割引になりますよう、私もプッシュします」と答えるのです。

そして納品だけさせてもらい、3週間後に「すみません、ダメでした。やはり原価委員会で否認されてしまいました」と言うのです。

別に原価委員会でなくてもよいのです。常務会、役員会等、ともかく、会社のウンと上の人もしくは委員会のような名前を使うのです。

つまり、私では決められません。雲の上の人が決裁しなければならない、でも雲の上の人はなかなかつかまらないし、委員会もなかなか開催されない。私も実は困っているのです、というように実は自分も、ある種の被害者なのだ、と主張する方法です。

セルアップ法

セルアップ法とは、セルダウン法とは反対に、より高いものや付加的なものを提案する方法です。

例えば、ボールペンの注文を受けたとき、本体は安く価格を設定しておき、化粧箱や包装紙、リボンやのし紙を追加的に提案し、本体を安くした分これら付随的なもので稼ぐというものです。一種の抱き合わせ販売のようなものです。

それから、もっと利幅の大きい豪華なものを勧めるケースもあるでしょう。「実は、こちらのボールペンの表面に本皮を使用した高級品もあります。価格は1.5倍になりますが、とても今人気です」

自動車販売の例

身近なところでいえば、自動車の販売もそうです。あなたがお客として、自動車ディーラーを訪れたとしましょう。店頭で表示されているのはあくまで本体価格です。「本体価格200万円」とあるからといって200万円で済むわけではありません。いざ、説明を聞こうとテーブルにつけば、オプションの紹介が始まるわけです。

「カーナビはいくつか種類があります」
「それからエアロパーツはこちらがお勧めです」
「アルミホイールはぜひこちらをお付けください」

全部あわせたら結局300万円なんてこともあります。つまり、このオプションで稼ぐわけです。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

「高いなぁ」と言われても
売れる営業のしかけ


新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ

営業に行くとお客さんに必ず言われるのが「高いなぁ、もっと安くならないの?」という一言。そうなると値下げしてでも売れればいいと思ってしまうかもしれませんが、大きな間違いです。 どんなときでも、より高く売るのが営業マンの仕事です。本書では、お客の心理を利用して、値切りを封じ込める「提案営業のやり方」と「価格交渉のスキル」を紹介しています。

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