この記事では企業のデータ分析に欠かせない「ABC分析」について、データ分析、IT活用を得意とするコンサルタント 平井明夫さんと石飛朋哉さんの共著書『データ分析できない社員はいらない』よりご紹介します。
ABC分析とは?
ABC分析とは、重要度が高く、重点的に管理すべき対象を明らかにするために、A、B、Cという3つのランクに分ける方法で、それぞれのランクによって、管理方法を選択します。
ABC分析のやり方
例えば販売管理では、商品や得意先、曜日や時間帯別にABC分析を行なって、売り場構成や販売方法、販促頻度、発注方法などを変えていくといったことに使えます。
ただし、Aランクだけを重視するというわけではなく、各ランクそれぞれの管理方法を考えていくことが大切です。
実際に売上高による販売店のABC分析を実施する場合には、累積売上高と売上構成比累計という2つの数値が必要となります。
累積売上高は、販売店の売上高を高い順に並べ、それぞれの売上高を積み上げたものです。数式は以下になります。
売上構成比累計は、累積売上高が全体の何% を占めているのかという、累積売上高に対する構成比率です。数式は以下になります。
そして、ABCのランク分けは分析対象や利用目的によって変わりますが、一般的には構成比累計の値によって以下のようなランク分けが使われます。
図1は、ABC分析の結果を表形式にまとめたものです。
図1 ABC分析結果の表
この表で見ると、1位の販売店「cycle cycle」から5位の「アウトドア王国」までが売上構成比累計が80%の中なのでAランクになります。
そして、6位「あだちサイクル」と7位「サイクルショップりんりん」が売上構成比累計が80〜90%の中なのでBランク、残りの8〜13位の販売店がCランクとなります。
ABC分析結果のパレート図
ABC分析の結果をよりわかりやすく表現できるのがパレート図です。上の表をパレート図にしたものが図2です。
図2 ABC分析結果のパレート図
パレート図とは、棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた複合グラフで、棒グラフは数値の大きいものから順に並べ、構成比の累計を折れ線グラフで表したものです。ABC分析の結果を視覚的に捉えることができます。
パレート図を使ってABC分析を行なった結果は、おおよそ次の3つのパターンに分類されます。
- 標準型
- 集中型
- 分散型
標準型
図3のように、Aランクに20~30%の管理する対象項目が含まれます。Aランクがある程度の比率を持っているので、Aランクを重点的に管理していくことにより、全体の数字を管理することができます。
図3 標準型のパレート図
集中型
図4のように、Aランクが少数の管理する対象項目で構成されています。数少ない管理対象項目に頼った状態となっているため、BランクやCランクのものをAランクに加えていけるように対策を検討する必要があります。
図4 集中型のパレート図
分散型
図5のように、管理する対象項目のそれぞれの数値にあまり差がない状態です。何に重点をおくのか、判断が難しくなります。そもそも対象項目が少ないときにはバランスよく取引されていると判断できますが、多いときに分散型のグラフになっている場合には、分析の視点を変えてみるなどして、どういった状況になっているのか慎重に判断する必要があります。
図5 分散型のパレート図
ABC分析による在庫管理
ABC分析は、在庫データにも応用することができます。
在庫高の高いものから順に並べ累計額を計算して、全体の80%を占めるに至ったところまでの品目をAランク(主力)、90%までをBランク(準主力)、残りをCランク(非主力)とし、ランクごとに扱いを変えるといった具合に活用することができます。
重要度の高いものに管理を集中して、限られた経営資源を有効活用することがこの分析手法の主な目的です。
図6 在庫ABC分析の例
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ぜひ、貴社の経営分析にもご活用ください。
さいごに
この記事では「ABC分析」について解説しました。
記事の内容について詳しく知りたい方は、『データ分析できない社員はいらない』(平井明夫・石飛朋哉 著)をお読みください。
データ分析できない
社員はいらない
平井明夫
DEC(現、日本HP)、コグノス(現、日本IBM)、日本オラクル、アイエイエフコンサルティングにおいて、一貫してソフトウェア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。特にBI (ビジネスインテリジェンス)を得意分野とする。
石飛朋哉
「情報活用を経営力に」を命題にBI の布教活動に勤しむが、”分かりやすいか””伝わるか”と、日々苦悶しながら過ごしている。
【引用】平井明夫・石飛朋哉.データ分析できない社員はいらない