五年、五億、 五十人の壁。年商五億円の壁を破るとは、この壁を乗り越えることです。壁は突然やって来ます。今まで最高にうまくやってこれたのに、です。その時に、今までの運営方針を全く変えられるか、考え方を180度変えられるかどうかで、これから大きな壁を越えられるかどうかが決定します。

そこでこの記事では「年商五億円のレベルまで大きなった会社が、やってはいけない組織づくり」を、株式会社フロイデ会長兼シニアパートナー 坂本 桂一さんの著書『年商5億円の「壁」のやぶり方』をもとにご紹介します。

社長は組織づくりのプロではない

社長を中心とした創業メンバーが必死で売上を伸ばし、手が足りなくなると必要に応じて社員を増やしていく。初期の会社というのは、だいたいこんな具合に大きくなっていきます。いくつか部署があっても、実質は社長が率いる営業部がひとつあるようなものだといっていいでしょう。

そして、年商五億円がみえてくるころになると、気がつけば社員の数もかなり増えて五十人近くになっている。こうなると、それまでスムーズにいっていた社内のさまざまなことが、だんだんとそうではなくなってきます

社員が十数名のときは、社長が指示を出せばすぐ全員に伝わるし、社長が何を考えているかも社員はおおよそ理解しているので、いちいち説明しなくても大丈夫でした。ところが、社員数が五十を超えるとそういうわけにはいきません。入社して日の浅い社員は社長の性格も、営業スタイルもよく知らないので、社長の意思が以心伝心で届くと期待しても、土台それは無理なのです

年商五億円までは社長の営業力

そこで、社長はようやく、「ウチもそれなりに大きくなってきたので、このあたりで会社らしい組織にしよう」と思い始めます。

これ自体は間違っていません。問題は社長が年商五億円を超える会社を、機能的に運営させるための組織のつくり方を知っているかどうかです。私の経験からいえば、ベンチャー企業の創業社長でこのことを理解している人は、ほとんど皆無だといっていいと思います。

しかし、それは考えてみれば当然のことなのです。なぜかというと、自分で会社を起こして年商五億円のレベルまで大きくした社長というのは、抜群の営業力があったからそれができたのであって、その社長が経営や組織について詳しいかどうかは、また別問題だからです

だいたい、昨日までどうしたらもっと売上を拡大できるかしか頭になかった人が、自分の知っている知識の範囲で組織をつくっても、うまくいくはずがないではありませんか。社長はあくまで営業のプロであって、組織づくりのプロではないのです。

最初に組織図をつくってはいけない

社内を組織化しようとすると、社長は最初に下図のような構造を思い浮かべます。

組織図

社長の下に部長、課長、係長、平社員がピラミッド型に広がっていく、いわゆる軍隊型組織です。

次は、この組織図を前提に、どんな部署があればいいかと考える。

たとえば経営企画、営業、製造開発、仕入れ、管理の五つを思いついたとしましょう。そうしたら、それぞれの部署を統括する部長を社内から選びます。おそらくほぼ全員が創業メンバーから選ばれると思います。

そして、さらに組織図と社員名簿をにらみながら、課長や係長のところに既存の社員を割り振っていき、全員の配置が決まれば晴れて組織の完成です。

その職務を全うできる人材がいるとはかぎらない

けれども、この組織が社長の思うように機能する可能性は、きわめて低いといわざるを得ません。なぜなら、こういう組織のつくり方は、ベンチャー企業に適さないからです。

厳しいセレクションを受けて入社した社員が千人以上いるような大企業なら、初めに組織図をつくってそこに人を配置するという順番でもできないことはありません。

キーになるポストを任せられる人材が、社内にいる可能性が高いからです。

しかし、社員数が数十人で、しかもその大半はここ数年で入社した人たちばかりだと、ポストだけを先につくっても、その職務を全うできる人材が社内にいるとはかぎりません

それなのに、リーダーシップや管理能力のない人を、創業メンバーだという理由だけで部長に据え、それまで社長がやっていた仕事の一部をその部署に任せたら、確実に売上は下がります。

社員が五十人になったら、本当は売上も、社員が五人のときの十倍にならなければおかしいのです。ところがほとんどの会社では売上は五倍にも届かない。つまり生産性が半分以下に下がってしまっているのです。それは、増えた分の社員が戦力として機能するような組織になっていないからだといってもいいと思います

さいごに

年商5億円の「壁」のやぶり方


年商5億円の「壁」のやぶり方

『年商5億円の「壁」のやぶり方』では、「組織」「コミュニケーション」「マネーマーケット」「間接部門」「クオリティ」などの項目から、企業が「年商5億の壁」にぶつかる理由とその解決策が紹介されています。中小・ベンチャー企業の経営者におすすめの書籍です。

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坂本桂一

㈱フロイデ会長兼シニアパートナーhttps://www.freude.bz/
事業開発プロフェッショナル。山形大学客員教授。アドビシステムズ㈱(当時社名アルダス㈱)を設立しページメーカーをはじめて国内に独占契約で導入、日本のDTP市場をゼロから創造した。専門は、新規事業創出、ビジネスモデル構築、M&A。


【引用】坂本桂一.
年商5億円の「壁」のやぶり方