「今のままではいけないとはわかっているけど、何をやればいいかわからない」

「資金が潤沢にあるわけではないし、人的リソースも限られているため、新しいことにチャレンジできない」

多くの中小企業経営者がこのようなお悩みを抱えています。

コロナの影響をはじめ激変するビジネス環境の中で、既存事業だけでは持続的な成長を見込めないと考えているのであれば、今こそ「事業再構築」について考えてみるべきではないでしょうか。事業再構築補助金など国からの援助を受けられる可能性もあります。

そこで今回は、「事業再構築」に向けて中小企業経営者が今どのようなことに取り組んでいくべきかについて、『TOMAコンサルタンツグループ』のグループ代表である市原和洋氏への取材を元に解説していきます。

 

事業再構築のための3つの視点

あらためて事業再構築とは、経済環境の変化に応じて企業が成長を維持するために、収益性を高めるために、その名の通り自社の事業を再構築することです。

この事業再構築に向けて、中小企業が持つべき視点として市原氏は「ゼロベースで考えること」「経営理念・ビジョンへの立ち返り」「DXへの取り組み」の3点を挙げます。

変化のスピードが速い現在、これからの未来はこれまでの延長線上にはない世界だと言えるでしょう。そういった時代だからこそ「ゼロベース」で考え、ビジネスモデルそのものを再構築していくという発想が必要だと考えています。

このような話を聞くと、何か新しい事業に取り組まなければいけないのかと考えてしまいがちですが、新しいことに目を向ける前に、まず既存の事業をもう一度見直してみることが重要です。

今日から取り組める事業再構築

事業再構築にあたって「ゼロベース」で考えるとは、「これまでの当たり前に疑問を持ち、物事の本質に立ち返り、自分たちの事業はなんのためにやっているのだろう」と原点を見つめることです。

このように考えることにより経営者としての価値観が整理され、経営理念に包含されている目的や使命を見直すことにつながります。

普段は業務に追われて「目的や使命、経営理念」の見直しなどはなかなか手が付けられないという中小企業の経営者の方がほとんどだと思います。なかには創業時に作った経営理念を一度として見直したことがないという方もいるかもしれません。しかし大事なことは、まず経営者として経営観をアップデートすることなのです。

TOMAコンサルタンツグループも過去に、成長の踊り場があったそうです。そのときに踊り場を抜け出すきっかけになったのが、理念をあらためて見直したことでした。そして、見直した理念をしっかりと社内に共有し、浸透させていった。そうすることで徐々に経営が軌道に乗り、成長へ向けて歩み出すことができたのです。

目的や使命をあらためて整理することで、今、会社として何をやるべきか、会社として目指すべきゴールはどこなのかが明確になります。つまり再構築すべきビジネスモデルが見えてくるということです。

イメージできないことは実現できないでしょうし、また目的や使命と合致しないことをやっても、なかなかうまくいきません。ゴールを明確にし、ゴールと現状のギャップを埋めるための戦略・戦術を考え、それを計画に落とし込み、会社全体に共有する。

こういった過程を経る中で、売上を上げる仕組みを構築しなければいけない、財務体質を強化しなければいけない、人材育成に力を注がなければいけないなど、いくつかの課題が見えてくるはずです。それらの課題の中で優先順位をつけ、ひたすらPDCAを回すことで課題解決を図ります。これにより新たなビジネスモデルを軌道に乗せていくのです。

そのため事業再構築においては、PDCAをいかにスピード感をもってリアルタイムで回せるかが肝になります。そして、そのためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠なのです。

事業再構築のカギはDX

PDCAは、ご存知のように仮説を立て計画をつくり、それを実行し、検証・改善を繰り返すサイクルです。デジタル化を図り、DXを促進することで、このサイクルをより速く回すことが可能になります。

例えば、アンケートを取るときにアンケート用紙を作り、それに配布して記入してもらい集計するとなると、多くの時間を要するでしょう。しかし、デジタル化されたWebアンケートシステムを使えば、Web上に展開されたアンケートにユーザーが回答すると、リアルタイムで集計された結果を閲覧できるようになります。

また、営業活動としてセミナーを開催する場合にも、現時点でどれくらい参加申し込みがあるのか、仮にそれが集客目標に対して少ないのであれば、案内文を変更したり、広告を打ったりと、すぐに改善に取り組むこともできます。

このようにデジタル化することで、リアルタイムで情報が見られるようになり、効率化、情報共有、データ活用が促進され、経営が大幅にスピードアップするのです。

DXがゴールではない

経済産業省は「DX推進ガイドライン」の中で、以下のようにDXを定義しています。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

つまり、「DX」は単にペーパーレスにするなどのデジタル化をすることではなく、デジタル化を手段としてビジネスそのものを変革するということです。

DXを推進しようと言うと、デジタル化すること自体が目標になってしまう企業を目にすることがあります。しかし、DXはあくまでビジョンや目的・使命を果たすための手段だということをしっかりと理解しておきましょう。

読者へのメッセージ

経営者のみなさまには、ぜひ長期的な視点を持って事業に取り組んでいただきたいと思います。売上や利益など目に見えるものを追いたくなる気持ちはわかりますし、日々目の前の業務に忙殺されている経営者の方も多いでしょう。しかし、経営は長期的に戦略を考えていくことがとても大切なのです。

中小企業では、資金調達も考えないといけないし、営業も自分でしないといけない、従業員に任せらないことが多すぎるためそもそもじっくりと考える時間を持てていない経営者の方が多く見られます。

こういった方には、ぜひ外部の専門家を使っていただきたいと思います。外部の専門家は、専門的なアドバイスはもちろん、社内にはいない対等に意見を言い合える相手にもなります。話しているうちに自分の抱えている本当の悩みが見えてきたという方もいらっしゃいます。

経営者は孤独なことが多いです。独りで経営に関する様々なことについて考えていかなければならないのは大きな負担となるでしょう。

ぜひ社内のことを相談できる相手を見つけて、この激動の時代を乗り越えてください。

市原 和洋(Kazuhiro Ichihara
TOMAコンサルタンツグループ グループ代表
会社URL:https://toma.co.jp/
東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館3階
事業再構築補助金解説ブログ:
https://bit.ly/tomablog_saikouchikuhojo
事業再構築の方法や事例を専門家が解説した座談会レポート:https://bit.ly/tabloid_TOMA_saikouchikuPDF