この記事では日本全国の企業に引っ張りだこの人事コンサルタント内海正人さんの著書『仕事と組織はマニュアルで動かそう』より「自分マニュアルの作り方」をご紹介します。
内海正人(人事コンサルタント)
総合商社の金融子会社にて法人営業、融資業務、債権回収業務を行う。その後、人事コンサルティング会社を経て、株式会社船井財産コンサルタンツにて人事コンサルタント、経営コンサルタントとして、コンサルティング業務を行う。平成15年に日本中央会計事務所に合流、日本中央社会保険労務士事務所代表として現在に至る。
自分の仕事をマニュアル化する
ルーチンワークは自動化する
自分自身の仕事について、効率化や整理を行う必要があるのは誰でもわかるはずです。しかし、現実はなかなか思ったようにはなりません。
- 仕事が多くて、優先順位がわからない
- 予定をたてて仕事をしているが、割り込み仕事が多い
- 書類がなくなる
- PC内の整理ができていない
このようなことは大なり小なり、あなたにも経験があると思います。そこで、仕事の整理をして、毎日行う業務とそれ以外の業務とに区分けを行うのです。そして、毎日行う業務に関しては、自動的に、決めた時間でこなすことを「体に覚えこませる」のです。
例えば、会社に出社して、PCを立ち上げたら最初にすることは何でしょうか? 多くの人はメールチェックと考えられます。実際に私自身もそうですし、他のメンバーも同じことをしています。これは、外部からの連絡事項で、緊急に対応しなくてはならないもの、予定の確認、予定の変更など、「自分の一日の仕事に影響が出るかどうか」を確認しているのです。
しかし、前述したことを考えながらPCを立ち上げている人がいるでしょうか? 答えはノーです。これは、朝出社してから何をするかが習慣となっているからです。つまり、「体にしみこんだ」行動となっているのです。だから、考えなくてもその行動をとってしまうのです。これは、メールチェックに限らず、業務日報を記載する時間や、その他に毎日決められた業務には同じことが言えるのではないでしょうか。
これが「ルーチンは自動化する」事なのです。考えた結果の行動は、悩んだ末の行動の場合があります。しかし、毎日のルーチン業務については、考えることはあまり必要ありません。そうしたら、自分の中でルール化し自動化しましょう。具体的には、
- ルーチン業務の洗い出しをする
- 行動する時間を設定する
- 同じ時間に行動する
- 意識しなくなるまで行動を継続する
↓ - 習慣化し、自動化する
このようなプロセスで落とし込んでいきましょう。
メール処理はマニュアル化する
受信トレイで進捗状況を管理する
私はクライアントにメールで資料を転送することが多いです。メールがない時代は、FAXや宅急便を駆使して仕事を納品していました。とても便利な時代になりました。
しかし、メールがこれだけ発達すると、未承認の広告なども増加し、受信トレイは放置しておくと、大変なことになってしまいます。重要なメールも広告のメールも区別がつかない状況だと、業務に支障をきたすこともあるでしょう。実際に私も重要なメールが受信トレイの他のメールで埋もれてしまったことが何度もありました。
そこで、私はメールの取扱いをマニュアル化しています。
- メールマガジンなど定期に受信するメールは自動振り分けを行う
- 自動振り分け以外は受信トレイにて確認
- 確認後、終了フォルダ、クライアントフォルダなどに振り分け
- 受信トレイに残っているものは、未返信、返信途中
- 返信後、業務完了後は終了フォルダ、クライアントフォルダなどに振り分け
このように、決めています。この取扱いを行ってからは、業務で重要なメールが受信トレイのどこにあるのかが分からなくなるということはありません。返信途中の業務メールは常に受信トレイにあります。また、未返信のものも受信トレイに残っています。つまり、何らかのアクションが必要なものが受信トレイに残っているのです。
この状況下だと、「早く処理しなければならない」「この場所は、空になっているのが本来の姿だ」と感じるようになり、「早く処理をしなくては」と意識が向かうようになるのです。また、クライアントから届いたメールを読んで、対応できないものは「未読」に戻せばやり残した仕事がすぐにわかるのです。それから、メールをすばやく処理する方法は、とにかくまずは返信することです。質問などで、回答がすぐに提示できなくても、その旨を返信すれば、相手も納得するでしょう。これを回答するのに時間がかかっていても、その状況を連絡しなければ、相手はイライラしてしまうでしょう。すぐに返信するということは今後のビジネスの流れや人間関係にもおおいにプラスと考えられます。
メールというツールはとても便利です。しかし、要件の提示だけでなくコミュニケーションの基礎でもあるのです。リアルなお付き合いとなんら変わらないということを肝に命じてコミュニケーションをとりましょう。
朝の行動をマニュアル化する
毎朝の〝集中時間〟をつくる
あなたは、朝起きて「さあ仕事だ!」という気になりますか。「連日の疲れを引きづっているから、そんな日はまれだ・・・。」そんな人も多いのかもしれません。しかし、疲れきった頭や体では、いいアイデアは生まれません。やはり、すっきりとした朝を迎えられるように睡眠はしっかりと取りましょう。
私は、朝起きて出勤するまでの時間を有効に活用しています。まずは、いつも携帯している手帳を見て、1日の予定の確認を行います。手帳は1週間が見開きでわかるものを使っています。1週間の流れの中で、1日の動きを見て、そして、やるべきことをチェックします。私の場合、必ずやらなければならないことを項目と実施時間を記載します。例えば、クライアントの名前と訪問時間、来社されるお客様の名前と来社時間などです。
それから、期日があるべき業務の内容などを記載しています。ここで、自分マニュアルがあります。まず、アポイントや来社があった場合は、赤で「済」と記載します。いわゆる消しこみを行うのです。また、期日が迫っていても、翌日に延ばす業務もあります。この場合は、黒で2本線をひいて、翌日の欄に改めて記載します。済めば赤で「済」と記載します。また、延ばした場合は黒の2本線で消しこみ、実施する日を再設定するのです。さらに、項目欄がオーバーした場合、付箋を貼り付けて同じ運用を実施します。ただそれだけです。
しかし、これを自分マニュアルとして、4年以上続けていると自分の習慣となってくるのです。朝の数分で、今日一日の行動が把握でき、優先順位の確認も終わるのです。事務所では、それ以外にオフィスウェアに予定を入れて、他のスタッフが私の予定を確認できる状態にしております。
それから、メルマガの執筆等も朝に行っています。この時間が、電話もならずに集中できる時間です。この時間帯を有効に使うことにより一日の流れを作って、一気に仕事をこなしてしまいましょう。
主な流れは、
起 床: 5時
自 宅: 6時出発
移 動: 手帳にてスケジュール確認、本日の予定をイメージする
事務所: 7時到着 メールチェック メルマガ作成 ブログ執筆 その他(原稿執筆等)
始 業: 9時
このような流れとなっています。
やりたいことは書き留めよう
アイデアノート活用術
朝の活用でもっとも重点ポイントは通勤電車内での時間活用です。また、朝は乗車する前に「今日は○○をするぞ」と目的を持って、乗車します。通勤電車の中は、拘束された時間ですが、限られた行動しか出来ないのですが、いろいろなことが出来ると考えています。具体的には、
- 読書
- 資料作成
- アイデア出し
などがあります
この中でも、最後のアイデア出しについては、有効な時間と考えています。
読書や資料作成については、車内の込み具合や座席に着席できない場合には書籍すら広げられないケースがあります。しかし、アイデア出しは、最低でも自分の頭があればOKです。
私の場合は、セミナーで話す内容のアイデア出しをしたり、執筆中の本のアイデアなどを考えます。このとき、アイデアが浮かんでも、すぐに消えてしまう場合が多いかと思います。これを防ぐため、私はB6版のノートを手帳にはさんで、常に携帯しています。B6版なので、満員電車でも少しのスペースでも広げることが出来ます。だから、アイデアが出て「面白そう」「これはすごい」と感じたら、このノートに忘れないように書き込むのです。
書き込む方法はマインドマップという書き方を活用しています。この方法は、箇条書きや文章等と違って、思いついたら以前の内容に関連付けてつながりを付けて記載できるので、気軽に書き込みが出来る点が優れています。私は、満員電車で「アイデア出し」をB6版のノートとマインドマップで実施しているのです。(写真参照)
実際に最初の書籍「仕事は部下に任せよう!」(クロスメディア・パブリッシング)の原稿は、B6の「アイデア手帳」から生まれたものです。書籍化するにあたって、手帳に書き留めていたアイデアから原稿を起こしたものばかりです。
細切れの時間や待機の時間などが有効活用されていないケースが見られます。ちょっとした工夫が「有効な時間」へと変化します。あなたも自分の時間の使い方をちょっと工夫してみましょう。
マニュアルはいつでもリセットする
マニュアルを作ることはとても難しいことです。業務に熟知した人が流れをチェックし、他人がどの用に運用するのか考えながら作ります。まったく業務を分からない人でもマニュアルの手順を見れば誰でも高品質の製品やサービスを提供できるようになります。しかし、自分のためのマニュアルは自分だけのためです。ちょっとした工夫の実践が自分マニュアルのいいところです。だから、一度決めたからといって「絶対に直さない」物ではありません。
例えば朝の過ごし方をマニュアル化し、習慣として運用している場合を考えましょう。朝の習慣でブログやメルマガの執筆の時間に当てていても、書籍の執筆が入ればそちらに注力します。朝という邪魔されない時間、自分が集中できる時間に優先順位をつけて、習慣を変えるのは「あり」だからです。
このように新たな仕事が入った場合は、明確に変化させることにためらいを感じないと思います。しかし、それ以外では「問題が起こった」場合にマニュアルを見直すこととなるでしょう。その際は、まず、「問題がなぜ起こったか」の原因を徹底的に考えてください。そして、解決策とともにマニュアルを変え、運用の習慣を変えていくのです。
問題
↓
原因: 徹底的に追究
↓
解決策→マニュアルを変える
↓
運用の変化: 習慣を変える
時代によっても仕事のやり方も変わります。だから、それにあわせたマニュアル作りも必要です。これ以外にライバルの出現によって、現状の方法を見直すときもマニュアルを見直すときです。
このように常に外的環境に合わせた行動を考えないと、変化の激しいこの世の中では生きていけません。マニュアルは常に「マイナーチェンジ」し続けるのです。そして、その積み重ねが「真のマニュアル」を生み出していくのです。
マニュアルを変えるときは「思いたった時」が吉日ですね。
期限の管理をマニュアル化
To Doリストの活用方法
日々の予定は手帳のカレンダーで管理して、完了したら赤で消し込みをしています。予定が延長となったら、期日の日に予定を記載します。しかし、予定が未定になったり、完了日があやふやであったらスケジュール管理できません。そのようなときは「To Do」リストを活用します。
私の場合ですが、書類のやり取りの管理、相手からアクションが無い限り動かすことが出来ない事柄などが、こちらのリストに書き加えられます。そして、業務が完了したり結果が出たりしたらチェックをします。スケジュール以外に期日管理が出来ます。さらに、相手からのアクション状況もつかめます。とても便利です。
これは機械的な作業の中で行うので、いろいろ悩む必要がありません。というよりも、悩む予必要はありません。予定が崩れてしまったらTo Doリスト入りするのです。そして、こちらは時々見ればいいのです。
経過について期日が無いといえども、古いものはもう処理しなくていいのか? それとも、処理をしたほうがいいのかリストさえ見れば判断がつく状態になればいいのです。そして、この記載は時系列的にどんどん記入していきます。優先順位や完了期日を関係なしに記入します。そのように決めないと、記入する段階で判断が入るとTo Doリストがうまく機能しないと思ったからです。
To Doリストは、手帳のスケジュールの後に閉じてあります。スケジュールからこちらに引っ越したものに関して、完了後チェックして終了です。実にシンプルです。期日管理はスケジュールで、「実行したかしていないか」だけを管理するツールとして使っています。
私は、自分で時間やスケジュールがコントロールできないけど、重要なものの業務管理をこのリストで管理しているおかげで、大きなミス無く今まで仕事が出来ています。その要因は、最初にあれこれ考えずにTo Doリストを余計な機能なしで割り切って使っていることが良かったと考えています。
また、アナログなこの管理方法ですが、いちいちPCを立ち上げる必要も無く、開けばOKなので、とてもスピーディーに物事が進みます。個人的には、すぐに開けるしアナログな事はとてもシンプルなので、頭にも残ると思います。
情報をマニュアル化する
マニュアルで情報収集を効率化
私たちの生活は、情報が溢れかえっています。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、広告そしてインターネット等からいろいろな情報が発信されています。何を有効な情報にするのかというのは受け手の責任ということになります。しかし、何を信じていいのかもわからないというのが現状ではないでしょうか。氾濫した情報から、自分が必要な情報を見つけるだけでも一苦労です。ただし、情報が増えることがあっても減ることは無いでしょう。そのためにも、情報収集を効率化する必要があるのです。効率化することの前提は「ルールを決め、マニュアル化」することです。
しかし、会社やチームで使うマニュアルとは異なりますのでフロー化やチェックリスト化する必要はありません。例えば、PCのフォルダーの整理をすることです。私が実行していることは、ファイル名の前に作成年月日を付けています。これだけでもフォルダー内を序列化する際に、古い履歴から新しい履歴に整列させられるのです。削除するのも整理するにもとても便利です。また、Webの情報の整理については、RSSリーダーの活用をお勧めします。RSSリーダーは主に新情報の配信として用いられています。新聞社などのニュース配信サイトでは最新ニュースの配信をチェックすることが可能です。自分の業務に関連する最新記事にいち早くアクセスできることが可能です。
また、新聞についても情報収集は工夫が必要です。毎日1紙、朝チェックするだけでも端から端までチェックするにはかなりの時間を要します。最初から最後まで「きちんと」目を通すだけでも1時間以上かかってしまうのではないでしょうか。私は全体を通してチェックするのは15分と決めています。そして、気になる記事についてはブログ等に記載してコメントすることに決めています。このことで情報が整理できるのです。
雑誌などについても、同じです。気になる記事があった場合はPDF化してフォルダーに保存しておきます。この方法を実施すると、保存場所が要りません。また、紙の劣化を気にすることも無いのです。まさに一石二鳥ということになります。
情報の振り分け
重要な書類一つでも、「どこかにいってしまった・・・」なんて経験は誰でもあるでしょう。そのためには、情報を整理する必要があります。メールの処理でも書きましたが、PC上の情報も整理するだけでスッキリします。そして、使い勝手が格段にアップするのです。
私は、フォルダを活用して、類似する情報を振り分けします。仕事の内容で、自分が作成した資料等をどんどん放り込んでいきます。また、顧客別に資料もどんどん放り込みます。また、紙での資料についてはPDF化し、顧客フォルダに放り込むのです。こうすると、手元の資料はとても少なくなります。さらに、紛失の可能性もなくなるのです。PDF化はお勧めします。物理的なスペースを考えなくて済むし、紙の劣化も気にならなくなります。
このように整理することにより検索するのも便利になるし、類似案件が出たときに参照資料としての使い勝手が良くなるのです。
古い情報は捨てる
あなたの机の中は、最新の情報で一杯でしょうか。私の机は・・・数年前の使わない情報もご丁寧にファイルされています。
会社の打ち合わせで、「古い資料」の取り扱いについて会議をしたことがあります。そこで、出た話で「1ヶ月放置した資料は、1年後も見ない」ということです。資料をそのまましまうという行為は、何らかの安心感を得ようとしているのかもしれません。しかし、未消化のものを単に「ためる」という行為を行っているのではないでしょうか。
私は「必要ない」と一瞬でも考えたら、書類等は「破棄」しています。まずい、と考えたら、PDF化してサーバーに保存するのです。紙としては残らないから、身も心も「スッキリ」です。
仕事と組織は、
マニュアルで動かそう
本書では、日本全国の企業に引っ張りだこの人事コンサルタントの著者が、あなたの会社に合った業務マニュアルのつくり方から、マニュアルの活用方法を述べています。あなたの会社もマニュアルをつくり、効率的・効果的な仕事と組織をつくっていきましょう。
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