この記事では雇用契約書に「契約期間」を記載するときのポイントについて、社会保険労務士 寺内正樹さんの著書『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』よりご紹介します。

従業員の契約期間を決める時のポイントをおさえて、契約更新時に起こりがちなトラブルを防止していきましょう。

【書籍】『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!
【著者】寺内正樹 
社会保険労務士 / 行政書士

「契約期間」で正社員とパートを分ける

あなたは、正社員とパートがどのように分けられるか知っていますか?

この点を左右する労働条件の項目として「労働契約の期間」があります。これは社員に書面での明示が義務付けられているため「雇用契約書」に書いておかなければなりません。

契約期間の上限

この項目は、大きく、契約期間に「制限がある」場合と「制限がない」場合に分かれます。そして、契約期間の制限がある場合は、原則として3年が上限となっています。例外的に、満60歳以上の場合などでは、5年までの契約も可能です。

そして、この契約期間の違いが、「雇用形態」の違いにも結びついてきます。すなわち、契約期間がいわゆる正社員・契約社員・パートタイマーなどを分けるための要素の1つになっています。

正社員・契約社員・パートタイマーの違い

法律では、同じ事業所で働く通常の労働者より労働時間が短い人は「短時間労働者」とされています。しかし、契約社員・パートタイマーであってもフルタイムで働く人もいるため、すべてが必ずしも「短時間労働者」となるわけではありません。つまり、法律だけで考えると、契約社員、パートタイマーという言葉だけで、明確な区分がされているわけではないのです。

そこで、どの点で形態を区別するかについて、会社ごとにルールをつくる必要があります。

正社員の雇用期間

一般的には「正社員」は、会社と雇用期間の制限がない雇用契約を締結した従業員とされます。

契約社員・パートタイマーの雇用期間

それに対して「契約社員」や「パートタイマー」は、正社員との比較で契約期間に制限があったり、労働時間が短かったり、仕事の内容が異なったりしています

つまり、これらの形態を分けているものは、一言で言えば、「労働条件」の違いです。

その中でも特に、契約社員やパートタイマーには契約期間に制限を設けて、契約期間に制限のない正社員と区別するルールをつくっている会社が多いのです。

待遇面の違いも明確にしておく

なぜこの区別が重要なのかというと、雇用形態の違いが「待遇」の違いとなって表れることがよくあるからです。

昇給・賞与・退職金について

例えば、「昇給」は長期的に勤める前提の正社員のみに認め、契約社員・パートタイマーには、契約期間中、昇給なしというルールの会社もあります。また、「賞与」「退職金」についても正社員のみに認めているケースは多いのです。

そのため、法律でも誤解が生じないよう「短時間労働者」を雇用する際は、昇給・賞与・退職金の有無についても、文書で明示することにしています。さらに、厳密に言えば「短時間労働者」に当たらないフルタイムの契約社員・パートタイマーにも同様に明示をしておくことがトラブル防止につながります。

このように、正社員との待遇面の違いも「雇用契約書」で明確にルール化しておいてください

契約更新の「誤解」を避ける

契約期間の定めがない場合

「契約期間」が無制限の場合、もし社員が辞めたい時にはいつでも辞められるということになります。

他方で、会社の方からどうしても辞めてもらいたい場合は「解雇」ということになり、解雇もやむを得ないといえるだけの合理的な理由が必要です。

契約期間の定めがある場合

それに対して、「契約期間」が定められている場合、その期間内では、原則として会社も社員も特別な事情がない限り、一方的に契約を解除することはできません。そして、「契約期間」が満了となれば、自動的に雇用関係は終了します。

双方の合意があれば、契約更新もできますが、更新するかはあくまで当事者双方の自由です。

契約期間満了による雇用関係の終了

しかし、更新が何度か繰り返され、社員に継続的に雇用される期待があると認められると、単純に契約が満了したことを理由に、会社が一方的に契約更新しないということはできなくなります。この場合は、解雇と同様に、社会通念上相当と認められる合理的理由が必要となってくるのです。

そのため、会社としては、契約期間満了による雇用関係の終了をしっかりと主張できるように、「雇用契約書」で更新のルールを決めておいてください

契約更新の有無を通知しておく

「更新なし」の場合は、その旨を明記します。何度か更新をして、今回の更新を最後にする場合には「次回の更新はしない」と明確にしておきます。「更新あり」の場合でも、更新を認める基準がある時には、その判断基準を明記しておきます。この基準はより客観的かつ具体的であるほど望ましいのです。

例えば、単に「従業員の能力、業務成績、勤務態度」という基準より「人事考課の結果がC評価以上」、「新規顧客獲得数月平均5件以上」、「年間遅刻回数3回以内」など誰から見ても誤解が生じない基準の方がトラブルは生じにくいのです。

誤解が生じることは会社にとっても社員にとっても不幸なことですから気をつけましょう

以下の記事では、雇用契約書に記載する項目について、おさえておきたいポイントを解説しています。契約書の作成・見直しを考えている方は、是非チェックしてみてください。

雇用契約書の書き方

  • 契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業と終業の時刻・休憩時間(交替制について?)
  • 休日
  • 有給休暇
  • 賃金
  • 退職

さいごに

この記事では、寺内正樹さんの著書より雇用契約書に「契約期間」を記載するときのポイントを解説しました。

この記事のポイント
  • 一般的な「正社員」と「契約社員・パートタイマー」の大きな違いは「雇用期間」。
  • 「昇給・賞与・退職金」の違いについても雇用契約書に明記する。
  • 「契約更新」の時に誤解を生まないようなルールを決める。

以下のページでは、「雇用契約書」を会社の成長拡大に役立つものにするためのチェックシートを公開しています。

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記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

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寺内正樹

シリウス総合法務事務所代表http://www.kaisha-teikan.com/
2002年11月より行政書士事務所を開設。2005年10月、社会保険労務士の登録も行い、企業の法務・人事労務をトータルにコンサルティングしている。中小企業の新会社法対応、会社設立には特に力を入れており、従来の業務に加え、個人情報保護法対策・プライバシーマーク取得支援などの新分野にも積極的に取り組んでいる。

Facebook:terauchimasaki


【参考】寺内正樹.
仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!