この記事では、「部下のマネジメントに必要な考え方」について書籍『会社で活躍する人が辞めないしくみ』よりご紹介します。

【書籍】『会社で活躍する人が辞めないしくみ
【著者】
内海正人 日本中央社会保険労務士事務所代表 / 人事コンサルタント・社会保険労務士

「部下」ではなく「仕事」を管理する

上司の仕事は、「人の管理」ではなく、「仕事の管理」をすることです。これを勘違いして、部下そのものをコントロールする上司が見受けられます。

「部下だから上司の言うことを聞け」ということでは人はついてきませんし、最近では、「パワーハラスメントを受けた」と言われてもしまうかもしれません。

部下がどのように仕事をしているのか、それによってどのような結果が得られたのかを注視して、助言をします。つまり、仕事という行動に対して、上司は指示や命令を行うのです。そして、部下の行動に注目するのです。ただし、この「仕事の管理」も、いきすぎると部下は自分で考えなくなり、指示待ち社員を増やす結果になってしまいます。

逆に、放任しすぎると自分勝手に仕事を進めたり、手を抜く部下が出てきたりもします。管理と放任のバランスに悩む上司が考えるべきことは、メンバーの成熟度です。

成熟度を測るためには、「仕事の手順を上司に間違えなく報告させること」をおすすめします。他人に手順を伝えるということは、自分が完全に理解し、かつ、相手にわかる言葉でそれを表現できるということなのです。再現性を意識している部下であれば、間違いなくその人物はできる社員です。

反対にメンバーの成熟度が低く、判断力が未熟な状況であれば、部下の行動、仕事の進捗などを上司がきちんと管理する必要があります。そんな部下からは「大体、大丈夫です」「何とかなります」という言葉が出てくることが多いです。「何とかなりますは、何にもならないことが多いです」と現場でお伝えしています。一番怖いのは、上司がなんとなく部下に丸投げして、時間が経過して、結果、何ともならないことなのです。

上司には部下の成熟度を客観的に判断する力が求められています。

できる社員とそうでない社員では仕事の管理方法が異なりますし、それがわからなければ、できる社員から不平や不満が出てくるでしょう。そうなる前に上司としては、それぞれの社員ごとに管理方法を見極める必要があるのです。社員ごとに管理することと贔屓することとは別の問題です。できる社員にはゆるく、できない社員にはきつくということではなく、公平な視点と厳しくするべきポイントがあるので、この部分を客観的に表現できるようにしましょう。

自分のやりたい仕事があれば、社員は会社を辞めない?

ある会社での最近の出来事ですが、入社2年目の社員が課長に退職願を持って来て話していました。

「私のやりたいことがこの会社にはありません。来月末で退職をさせてください」

そこで課長は「やりたいこととは何ですか? 次の会社や今後の方針は決まっているのですか?」と質問をしていました。

社員は「これから今後の方向性を考えます。まずは少し体を休めたいと思います」と答えていました。

課長はしばらく言葉を探していたのですが、一呼吸おいて「明日また話をしましょう。今日のところは私が預かっておきます」と言っていました。

課長は「社会に出て2年目の社員にやりたいことがあると言われて、内容を聞いてもすぐに回答が出ないということは、本当はやりたいことがあるわけではなく、単に会社を辞めたいだけではないのか」と私にお話しされたのです。

そして、「辞めたいという社員を引きとめることはとても難しいですが、果たして引きとめることが会社にとっても本人にとってもよいものなのか、わからない」とお話しされました。

果たして「やりたいこと」とはいったいなんでしょうか?

小さい頃に「Jリーガーになりたい」「プロ野球選手になりたい」「学校の先生になりたい」と言っていたほとんどの人たちは、その後成長し、就職活動を行い、苦労して会社に入社するのが一般的な流れとなっています。このときにも「好きな仕事をしたい」「やりたい仕事をしたい」と言って就職し、「やりたいことと、今の仕事が違うので辞めます」では単に甘えているだけではないでしょうか。

現在、学校でも社会でも若者のこうした傾向を後押しする風潮がありますが、何も知らないうちから、本人のやりたいようにやれというのは、本来は不幸なことでないでしょうか。会社に入って、新入社員の時点でできることはまったくないといっても過言ではないでしょう。ビジネス的に見ても素人ですし、社会人人生としては赤ん坊なのです。

コツコツと与えられたものをこなして、やり続けてその後に光が見えてくるのではないでしょうか。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

会社で活躍する人が辞めないしくみ


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