「本を出版している経営者」といえば、あなたはどのような人を思い浮かべますか?堀江貴文さん、糸井重里さん、稲盛和夫さんのような、有名な経営者を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

しかし実は、本を出版するだけならどんな経営者でも可能です。実際、中小企業やベンチャー、スタートアップ企業の経営者も、本を出版している人は少なくありません。そして彼らの多くが、自身の本を戦略的に活用することで、企業ブランドを構築し会社を成長させています。

そこでこの記事では、企業のマーケティングをサポートしている株式会社クロスメディア・マーケティングの事例やノウハウをもとに「経営者が本を出版する方法」「自身の本を事業の成長に活用する方法」について解説します。

株式会社クロスメディア・マーケティングとは
マネジメントクラブを運営するクロスメディアグループの1社で、2008年設立の出版社。企業の成長を目的とした、経営者による「本の出版」のサポートも行っている。

 

経営者が本を出版する方法

まずは、経営者が本を出版する方法について解説します。

冒頭でも触れた、堀江貴文さん、糸井重里さん、稲盛和夫さんのような有名な人の書いた本はヒットする可能性が高いため、出版社から執筆の依頼が来たりします。しかし、出版社からの執筆依頼が来なくても、次の3つの方法で本を出版することができます。

出版社に原稿を持ち込む

1つ目の方法は、企画・原稿の持ち込みです。文章を書くことに自身があったり、出版社に強いつながりを持っていたりする人におすすめの方法です。うまく編集者の目に留まれば、ほとんど費用をかけずに本を出版できることもあります。

自費出版をする

自費出版とは著者自身が制作費を支払って本を出版する方法です。制作費を著者自身が支払うため、自身が書きたいこと、伝えたいことを本にすることができます。出版社によっては、自費出版専用の部署で出版の申し込みを受け付けているため、出版社につながりのない人でも本を出版することができます。

企業出版をする

企業出版とは、企業が制作費を支払って、自社のブランディングやその他の問題解決のために本を出版する方法です。自費出版と同様、内容を制作者側でコントロールすることができ、出版社につながりのない企業でも本を出版することができます。

企業出版と自費出版の違い

企業出版が自費出版と異なる点は、本の制作を出版社の編集者がサポートし、書店店頭に本が並ぶように、出版社の営業部が営業活動を行なうことです。自費出版で本を出版する場合、著者自身が好きなことを書ける反面、プロの編集者のサポートが無かったり、本を制作しても、書店店頭に本が並ばないことが多いです。

自身のノウハウや会社の歴史を本にするだけであれば、自費出版がおすすめです。一方、企業の認知度や信頼度の向上など、企業の問題解決を目的とする場合には、企業出版がおすすめです。

ブランドを構築し、事業を成長させた2つの事例

実際に戦略的に本を出版して、企業ブランドを構築し自社の事業を成長させた事例をご紹介します。

株式会社UZUZの事例

株式会社UZUZは会社設立当初、就職希望者や企業の方から若い会社として見られることが多く、会社としての信頼感を高めたいと感じていました。また、遠方に住んでいる方はお会いするのが難しいため、サービスを提供することができない状況でした。

そんな中で株式会社UZUZは、会社としての信頼感を高め、遠方の方にも自社のノウハウを正しく伝える手法として、「採用に関する書籍の出版」に取り組みました。

自社の強みを活かしたニッチなテーマで書籍を制作

自社の強みを活かした「既卒、フリーター、第 2 新卒」というニッチなテーマで書籍を制作することで、Amazon内の就職に関するジャンルで1位を獲得しました。この本を中心として、「既卒、フリーター、第 2 新卒の就職に強い就業サポート会社」として、企業ブランドを構築していきました。

既卒、フリーター、第二新卒の 就活はじめの一歩

書籍『既卒、フリーター、第二新卒の就活はじめの一歩』を出版。
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月に10件以上の会員登録を獲得

その結果、「皆が買っている本を出版している会社」として、セミナーや講演でもプロとして認知されるようになり、信頼感の向上につながりました。

また、書籍からの新規会員登録が月に10件以上発生し、遠方に住んでいる就職希望者の方からもお問合せが来るようになりました。

マーケティングコンサルタントのブランディング事例

同様に、書籍の出版によって自身のブランディングを成功させたマーケティングコンサルタント 小川共和さんの事例をご紹介します。

小川事務所代表 小川共和さんは、株式会社マルケトの顧問や、青山学院大学ビジネススクール(ABS)の非常勤講師も務めているマーケティングコンサルタントです。

小川さんは自身が得意としている IT を活用したマーケティング手法の効果や重要性を広く認知してもらいたいと考えていました。

また、自身のコンサルタントとしてのノウハウや実績を証明できるものがほしいと感じていました。

類書の少ないテーマを出版

そこで、小川さんはまだ日本ではあまり認知されてなかった「マーケティングオートメーション」というテーマで書籍を執筆されました。それまで似たテーマの本がなかったため、IT マーケティングの第一人者としてのブランド構築につながりました。

さらに、「マーケティングオートメーション」と「カスタマージャーニー」というテーマで2冊目を出版し、この本は Amzon のマーケティングに関するジャンルで1位を獲得しました。

マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方

書籍『マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方』を出版。
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出版直後に新規案件を受注

その結果、ITマーケティングのプロフェッショナルとして認知されただけでなく、出版直後に新しい案件を受注することもできました。

「本の出版」でできること

上記の事例のように「本の出版」は戦略的に行うことで、企業のブランド構築をはじめとした様々な問題を解決することができます。経営者が本を出版することで得られる効果は、大きく分けて次の3つがあります。

「本の出版」でできること
  • 見込み客や消費者に、商品・サービスを知ってもらう
  • 社員に企業理念を理解してもらい、いきいきと働いてもらう
  • 学生・転職者に会社について知ってもらい、ミスマッチの無い採用を行う

見込み客や消費者に、商品・サービスを知ってもらう

企業が持っているノウハウを本にまとめて出版することで、見込み客や消費者に、商品・サービスを知ってもらうことができます。この時に大切なのは、ターゲットを絞ってテーマを明確にすることです。ご紹介した事例でも、あえて狭いテーマで書籍を制作することで、ターゲットとする見込み客に伝えたい情報を届け、企業のブランドを確立しています。

社員に企業理念を理解してもらい、いきいきと働いてもらう

企業理念や歴史を本にまとめて社員に伝えることで、理念や仕事の意義を理解してもらい、高いモチベーションで働いてもらうことができます。この場合は、書店で売られるような本ではなく社員1人ひとりに読んでもらえるような本を作ります。社史やブランドブックと呼ばれることもあります。作って終わりにならないしないためには、タイトルや表紙も「社員の人たちが読みたくなる」ように工夫することが大切です。

学生・転職者に会社について知ってもらい、ミスマッチの無い採用を行う

事業や働き方、企業理念を本にまとめて学生・転職者に伝えることで、事前に会社に対する理解を深めてもらい、ミスマッチのない採用を行うことができます。また、事前に活用方法を明確にしておくことが大切です。「説明会で配りたい」「広くたくさんの学生・転職者に向けて発信したい」など、活用方法によって本の仕様や流通、PR方法が大きく異なります。

具体的な活用方法の例は次の「本の出版を会社の成長につなげるための3つのポイント」の中で解説します。

本の出版を会社の成長につなげるための3つのポイント

上記のように本を効果的に活用するためには、ただ出版するだけではなく、いくつかのポイントを抑える必要があります。主なポイントは次の3つです。

本を出版するときのポイント
  • 出版の目的を明確にする
  • 出版後の活用方法を明確にしておく
  • 目的にあった出版企画を立てる

出版の目的を明確にする

書籍の制作をすすめる前に、「出版の目的」を明確にすることはとても重要です。前述の通り、「本の出版」でできることは大きく分けて次の3つがあります。

  • 見込み客・消費者の認知度を高める
  • 社員のモチベーションを高める
  • 採用時のミスマッチを防ぐ

どれを目的とするかによって、本の内容から出版後の活用方法まで大きく変わってきます。本の出版には時間やお金がかかります。ただ、出版するだけにならないように、明確な目的を持って本の制作を行いましょう。

出版後の活用方法を明確にしておく

出版の目的が明確になったら、出版した本をどのように活用するかまでイメージしておくと、よりスムーズに制作を進めることができます。

本の活用例
  • 書店やAmazonで販売し、認知度・信頼度を高める
    書店やAmazonでこれまで接点のなかった見込み客に知ってもらうことができます。また、本を出版しているということ自体が会社の信頼度を高めることにつながります。
  • 会社で行っているセミナーで配布し、サービスへの理解を深めてもらう
    会社でセミナーを行っている企業は多くありますが、セミナー時にノウハウをまとめた本を渡すことで、時間内では伝えきれない内容を伝えて、よりサービスへに理解を深めてもらうことができます。
  • 全社員に配布し、会社への理解を深めてもらう
    会社の理念を本にして全社員に読んでもらうことで、社員の意識統一にもつながります。
  • 採用説明会で配布し、学生・転職者の興味関心を高める
    見込み客向けのセミナーと同様、説明会などで本を配布し、学生・転職者に会社への理解を深めてもらうことができます。

具体的な活用方法をイメージしておき、本の仕様や流通形態を決めましょう。

目的にあった出版企画を立てる

目的や活用方法が決まったら、具体的な本の内容を考えます。本テーマを決める、つまり本の企画を立案するときに抑えておくべきポイントは次の3つです。

企画立案3つのポイント
  • 自社の強みを活かせているか?
  • 読み手のニーズと合っているか?
  • 書店でのニーズがあるか?

自社の強みを活かせているか?

自社の強みを活かしたテーマで書くことをおすすめします。書籍というと6 万~ 8 万字の文字量が必要です。これを語れるだけの実績やノウハウが自社にあるかを考えて、企画を考えていきましょう。

読み手のニーズと合っているか?

読み手の欲しい情報になっているかも考慮しましょう。例えば、同じテーマの本でも、初心者向けと中・上級者向けでは企画が大きく変わります。また、第三者の意見も取り入れていきましょう。本人や自社の視点ではニーズがないと思っていたところに、思わぬ需要があることも少なくありません。

書店でのニーズがあるか?

書店店頭に並ぶような本にしたい場合には、書店の状況も把握しておきましょう。書籍を店頭に並べるのは、書店員の方々です。書店員さんに「並べたい」と思ってもらえる企画になっているかどうかはとても重要です。書店でのトレンドや既に同テーマの書籍が多数出版されているか、という点も踏まえて企画を考えていきましょう。

さいごに

この記事では、「経営者が本を出版する方法」「自身の本を事業の成長に活用する方法」について解説しました。

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