1000億円企業の経営者、園山征夫氏に聞く!
経営者は、企業の規模が大きくなれば大きくなるほど、多くの人材をまとめていかなければならない。その時に大切な考え方や「日本人に合っている経営とは何か」について、売上19億円だったベルシステム24を1,000億円超の一部上場企業にした経営者である園山征夫氏にお話しをお伺いした。
園山征夫氏の経験に基づいた「経営」にまつわるインタビューを全3回にわたってお届けする。
社員のモチベーションとは何なんだろう
―園山さんが経営に興味を持たれたのは、いつごろからだったのでしょうか。
園山 私が経営に興味をもったのは、明確にいつからというのはないんです。ただ、CSKで大川会長のような有能な経営者の近くに居たことが、一つのきっかけなんですよ。今、業態が変わっているけど、当時CSKはシステム開発の会社でした。そこの大川会長の近くで経営戦略をやったり、事業を任されたりするうちに、経営とは何かということを少しずつ感じ始めたんです。
―具体的には、どのようなことを感じられたのでしょうか?
園山 経営において大事なことの一つは、数字。もう一つは、人間の感情部分であるモチベーションだということです。人間100日は徹夜できないけど、若い人だと2日ぐらいなら徹夜できますよね。2日間徹夜できる要因は、モチベーションなんですよ。
株式会社ベルシステム24という会社を大川会長から任された時、社員のモチベーションとは何なんだろう、とちょうど考えていたんです。
当時、ベルシステム24は経営危機でした。会社を再建するために、数字の部分とモチベーションの部分をどう上手く実現するかを真剣に考えました。それが、経営戦略に反映されたんです。経営戦略を実現する過程で、いろんなやり方を試し、最終的に株式会社ベルシステム24を1000億以上の会社に成長させることができたんです。
農耕型企業風土作りとは?
―数字とモチベーションですか。
園山 そう。その時に分かったのは、経営は単純だけど複雑な部分があるということです。組織を経営していくときに、利益や数字が前面に出ると良くないことになります。リストラなどという話になり、結局会社の筋肉を全部削いでしまいます。そうすると短期的には良くても、長期のスパンで見ると利益が上がらない会社に成り下がってしまうんです。むしろ、利益は後からついてくるんです。これは私の造語ですが、農耕型企業風土作りの経営が日本の会社に合っていると思うんです。
―農耕型企業風土作りの経営・・・ですか?
園山 人間が農業をしていると、短くて3ヶ月、材木を作るとなると50年かけて最終的に成果を上げますよね。その期間、いろんな人がいろんなフェーズで関わるわけですよ。だけど、関わる人がしっかり仕事をしないと、最後の成果物のところで必ず影響が出てきます。
そうすると各フェーズで各人が高いモラルレベルで仕事をして、次の人にバトンタッチしていかないと、会社全体としての最終成果物は大きいものにならない。この考え方が、農耕型企業風土作りの経営です。
湿り気のある人間関係
園山 そこで、各人にモラル高く仕事をしていただくためには、経営上何をやったらよいかを考えました。行き着いた結論は、非常に簡単なんですよ。
―はい
園山 私の結論は、いい人間関係と自由闊達な風土が必要だということです。
一つ目のいい人間関係とは「湿り気のある人間関係」ということです。これも私の言葉なんですけど。対極にあるのが、乾ききった人間関係です。これは、アメリカの企業のように、職務が決まっていて「これはおれの仕事。これはあなたの仕事。」とお互い干渉しない人間関係です。
それから、もう一つの対極は濃厚な人間関係です。濃厚な人間関係って言うのは、隣の人がうるさくてしょうがない、何かというとすぐにちょっかいを掛けられるような人間関係です。経験から、日本の経営にはこれらの中間にある「湿り気のある人間関係」がいいと僕は感じています。
「湿り気のある人間関係」というのは、隣に座っている部下が困っていそうだなという時に、「困っている?」と聞くのではなく。あえて聞かないけど、何に困っているかはわかっていて、助けてあげるような人間関係です。
湿り気のある人間関係を経営主導で作ってあげられるかが重要なんです。そのためには、社員の配置やレイアウトも工夫する必要が出てきます。
やり方は自由に任せることで自由闊達な風土が生まれる
園山 二つ目に重要なことは、自由闊達な風土です。この風土は、任せ方に大きく関わってきます。仕事を任せる時には大枠のミッションだけ決めて、方法、予算も考えてもらい、過程は口出ししない、けれども結果責任は自分がとる。こう任せると風土が変わってきます。だけどその任せ方だと、普通の経営者は会社を統率できないと恐れます。でも、日本人のいいところで、最初から悪いことを想像する人は1万人に1人くらいしかいません。さっき言った良い人間関係を作ってあげれば、日本のほとんどのビジネスマンはちゃんとした仕事を生産性高くやるんです。
その経営でいいところは、社長が楽できることなんです。社長の仕事は、経営戦略をしっかり作ることと組織が円滑に回るようにボトルネックを早く取り除くことです。考え切れてないものを落としたら現場が混乱するので、考え抜いたものを最終的に来期の方針に落としていく必要があります。なので、社長は暇じゃないといけないんです。これが日本人にあった経営だと思います。色んなところでこの話をすると、同意する人もしない人もいます。これは価値観の問題ですから。ただ、私はそのほうが絶対成長が速いと思います。
次の記事
『プロ経営者が語る、日本人に合っている経営とは?(中編)』
園山征夫氏プロフィール
1944年1月1日生まれ。島根県出雲市出身。67年慶応義塾大学経済学部卒業後、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。73年国際ロータリー財団奨学生として米国ニューメキシコ大学経営大学院に留学。84年CSKに入社。CSK創業者、故・大川功会長(システムインテグレーターのCSKの創業者であり、ゲーム会社セガの会長および社長を歴任)より経営危機にあったベルシステム24の立て直しを託され、86年専務、87年43歳で同社社長に就任。就任早々、社員に「6つの約束」として会社の将来像を示し94年店頭公開。さらに、99年には東証一部上場を果たしテレマーケティングサービスの成長企業に変貌させた。08年退任。15年クロスメディアグループの経営顧問に就任。
園山征夫 著『礼節と誠実は最強のリーダーシップです。』
「信頼を得る」ことから、すべてが動き始める。部下を持ち、取引相手の格も上がりはじめる30代、40代のビジネスマンに向け、「会社のカネの使い方でわかる、あなたのマネジメント度」「礼の仕方でわかるあなたの魅力」「別れ方の綺麗さでわかるあなたの人格」「ビジネスマンとしての成功とは何か」など、仕事と人間関係の大切さを48の項目で述べていく。Amazonで書籍の詳細を見る。