企業においては常に様々な課題解決に向けて「プロジェクト」が動いており、プロジェクトの成否によって会社が飛躍できるかどうかが決まると言っても過言ではないでしょう。しかし、プロジェクトが思うように成果につながらないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、『アドベンチャーコーチング株式会社』の代表取締役である織田善行氏へのインタビュー取材を元に、「プロジェクトにおけるファシリテーションの重要性」について解説していきます。
優秀なメンバーばかりでも失敗するプロジェクト
優秀なメンバーを入れてチームを作って、いざプロジェクトを始動させたものの結果が出ない…このような経験はありませんか?
- 意見がうまくまとまらない
- 発言するメンバーが限られていて、議論が拡がらない
- チーム内のメンバーの役割が不明瞭で、モレやダブリが散見される
- どんどん進捗が遅れていく
プロジェクトではこのようなお悩みをよく耳にします。個々は優秀な人でも、チームになるとそれを発揮できなくなってしまうのは、なにが原因なのでしょうか。
織田氏はこれまで、「個人の考え方や行動の分析」と「チーム内での考え方や行動の分析」を数多く実施してきました。その中で、「個人の考え方や行動の分析」では建設的な人物として高い評価を得ていた人物が、「チーム内での考え方や行動の分析」を行うためにグループに入った瞬間に受け身的なスタイルになってしまうという場面に何度も出くわしてきたそうです。これは、日本人独自の国民性である他人の視線を気にして「他人と違う」ことを嫌って同調しようとする「恥の文化」が根底にあるためだそうです。
会議に参加して意見は頭に思い浮かんでも最後まで発言せず、そのまま会議が終わってしまったなどという話もよく耳にします。大切なのは、そういった受身な人たちからも意見を吸い上げ、すべてのメンバーを巻き込み、チームとしての意思決定に導くことです。メンバーみんなが意思決定に関わるからこそ、その後の行動にもつながり、プロジェクトが円滑に進むのです。そこで必要になるのが、建設的に意思決定に導くことができるファシリテーションの技術です。
ファシリテーションがなぜ必要なのか?
ファシリテーションとは、チームプロジェクトや会議の場で、目的を明確にしたうえで、発言や参加を促したり、参加者の認識の一致を確認したりし、合意形式や相互理解をサポートすることによって「質の高い意思決定」を導くための方法です。
- チームで集まったのに、みんなが委縮してしまい意見交換が行えない
- 時間がある限りダラダラと話を続けてしまう
- 明確な結論が出ないまま、次に持ち越しになってしまう
つまり、「会して議せず、議して決せず」といったことが起こるのは、ファシリテーションを行えるメンバーがいないことが原因なのです。
チームプロジェクトを成功に導くためには、司会進行役とは別にファシリテーションが行える人物、ファシリテーターを置くことが必要だと織田氏も言っています。
ファシリテーターはプロジェクトや会議を進行する中で、
- 「違った見方はできませんか?」と代替案や異見を求める
- 「〇〇さんはどう思いますか?」とチームメンバーから意見やアイデアを引き出す
- 「今の話をまとめると△△ということですね」と意見を整理する
- 「では、今回はこのようにプロジェクトを進めていきます」と合理的な意思決定に導く
というように、重要な役割を担います。
ファシリテーターが不足している現状
プロジェクトに取り組む様々な企業でファシリテーターが必要になってきています。織田氏によると、近年大手企業からプロジェクトをまとめるためにもファシリテーションを学びたいとの要望が増えてきているとのことです。
社内プロジェクトでは部署を横断したチームを形成する場合も多く、これまで関わってこなかった人たちと業務に取り組まなければならないケースもあります。様々な知識や技術をもつ人たちの意見をまとめた上で、意思決定をくだすためにも、ファシリテートする立場の人は合理的な意思づくりができなければならないのです。
近年、必要に迫られファシリテーターを派遣している企業の助けを借りるケースも増えてきているようですが、やはり社内できちんとファシリテーターの育成に力を入れたいというニーズも多く見受けられます。
PPSとGSIでファシリテーションスキルを身に付けよう
アドベンチャーコーチング株式会社は社内でプロジェクトを編成して仕事をするケースが増加していることを受けて、プロジェクトを成功に導くために「PPS(Project Planning Situation)」と「GSI(Group Styles Inventory)」という2つのプログラムを通してグループワークに必要なスキル習得を推進する取り組みを進めています。
PPSでは、全体のプランニングプロセスをどのような順序で進めていくかについて、個人およびグループのコンセンサスを通じて決めていき、その差と違いを理解するものです。このプログラムからは
- グループで考えることのメリットの理解
- 合意(コンセンサス)の難しさへの理解
- シナジー効果を発揮する合意形成のスキル
- ファシリテーションスキル
を得ることができます。
GSIでは、PPSで行ったグループワークを受けて、コンセンサスが効果的に行われたかどうかについて72の質問に答えることでメンバー全員がその場でフィードバックをし合います。それによって
- メンバー全員の参加度合いはどうだったか。あなた個人としてはどうだったか。
- グループワークでのコンセンサスは、メンバーが個人で行うよりどの程度効果的に進められたか。それはなにが原因だと思うか。
- 他の人の意見に触発されたところはあったか、それはどんなところか。
などが指標化され、円環図で表示されます。
これにより、チーム毎の違いと成果の関係が目に見える形で表示されます。自分たちのグループワークがどの程度効果的だったかを理解することができ、グループワークのスキル獲得につながるのです。そして、メンバーの相違点(多様性)を生かすファシリテーションこそシナジー(相乗)効果が発揮できる(1+1>2)ということを実践を通じて理解できるようになります。
読者に向けてのメッセージ
新型コロナウイルスの影響により、ZoomやGoogle Meetを使用したオンラインでのプロジェクトに取り組む企業が増えてきました。対面でも、チームのコミュニケーションが難航することが多い中で、オンラインではこれまで以上にプロジェクトの推進が難しくなります。
まずは、人事や教育担当者に受けてもらいグループワークの必要性を実感していただきたいです。
織田 善行(おだ・よしゆき)
アドベンチャーコーチング株式会社 代表取締役
URL:http://www.ad-coach.jp/
東京都新宿区高田馬場4-1-6 寿美ビル2F