この記事では、事業を通じて時代を変えた「シャネルの企業ビジョン」について、書籍『ビジョナリー・マネジャー』よりご紹介します。
【書籍】『ビジョナリー・マネジャー』
【著者】秋元征紘 ワイ・エイ・パートナーズ 代表取締役
企業ビジョンに欠かせない「個人的な原体験」
企業ビジョン=基本理念(ビジョン・ミッション・バリュー)を掲げてリーダーシップを発揮するために、大切な役割を発揮するのが、情熱(パッション)です。
企業ビジョンというものは、何もないところからつくり出すものではありません。なぜなら、成功した企業家は、起業するまでの間に、すでにその核となる経験を積んでいるからです。
趣味や生き方や過去のロマンスなど「個人的な原体験」を人生で貯め込んでいて、それを企業ビジョンとして表しているのです。
シャネルの企業ビジョンは、ココ・シャネルの原体験
素晴らしい企業ビジョンを描いた一人に、シャネルの創業者でありデザイナーであったココ・シャネルがいます。彼女は1883年にフランスで生まれました。その人生は波乱万丈でしたが、シャネルが実現したことは、「彼女の人生観そのもの」を表現しています。彼女のブランドがここまで全世界の女性に受け入れられたのは、彼女自身も語っている通り、ファッションではなく「スタイル」をつくったからだといえます。
シャネルというブランドが誕生するプロセスを見ていくと、彼女の原体験が大きく影響を与えていることに気がつきます。シャネルの代名詞ともいえる香水「シャネル・ナンバー・ファイブ」などでは、外装箱の縁が黒く塗られているのですが、このデザインは、彼女が育った孤児院の廊下の白い壁の隅が黒く縁取られていたことが元になったといわれています。有名なシャネルのバッグ「マトラッセ」の斜め格子のキルティング模様のパターンや、のちのジュエリーのデザインなども、彼女の原体験がベースになっています。
もう一つ、彼女にとって大事だったのは「恋をすること」です。これも彼女自身の言葉の中にありますが、「いつも自分でいたい、自分を表現したい、いつどんなチャンスが来るかわからないから素敵でいたい」と、ときに攻撃的とさえいえる美への愛着があり、常に男性を魅了するような演出を意識していました。そうした彼女の恋する姿勢も、世の女性に受け入れられることとなります。
一方で、女性が社会進出していく上で、彼女のデザインする服の機能的なカットは「女性の生き方」さえも変えていきました。ココ・シャネルは、自分が持った企業ビジョンを、事業を通じて世の中に広め、確実に時代を変えていったのです。
こうしたプロセスの中で一番大事なのは、彼女が原体験を大事にしていること。孤児院で育った少女の「どうしても素敵な人生を送りたい、負けない人生を送りたい」という思いが、時代の変化を促したのです。別の見方をすれば、社会がどう変化すれば人々はもっと幸せになれるのかを考えて、その方向に自分の人生を向けていく生き方だったともいえるでしょう。
ココ・シャネルが残した名言
彼女は、そうした自身の人生観や情熱がそのまま凝縮されたような名言をいくつも残しています。このココ・シャネルの生き方こそが、企業ビジョンの典型なのです。
ココ・シャネルが残した名言
「私は好きなことしかしない。
私は自分の人生を、自分が好きなことだけで切り開いてきたの。」「みんな、私の着ているものを見て笑ったわ。
でもそれが私の成功の鍵。みんなと同じ格好をしなかったからよ。」「お金は、儲けるために夢中になるものではなく、
使うためにこそ夢中になるべき。」「実際にどう生きたかということは大した問題ではないのです。
なぜって、夢はその人が死んだ後も生き続けるからです。」
さいごに
記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。
ビジョナリー・マネジャー