企業のブランド価値向上や信頼獲得の手段として、近年注目されているのが「企業出版」です。書籍という信頼性の高いメディアを活用することで、SNSや広告では伝えきれない理念や専門性を体系的に発信できます。
本記事では、企業出版とBtoBマーケティング支援に長年携わる中山直基(株式会社クロスメディア・マーケティング執行役員)が企業出版の基本からメリット、費用相場、おすすめ出版社までを徹底解説。初めて企業出版を検討する方でも、目的に合った出版社選びの参考になる内容です。

中山 直基(Naoki Nakayama)
株式会社クロスメディア・マーケティング 執行役員
2008年株式会社クロスメディア・パブリッシング入社。創業当初の営業責任者として、出版事業のマーケティング、営業、プロモーション業務に従事。『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』など20万部を超えるベストセラービジネス書を数多く生み出し、クロスメディア・パブリッシングのブランディングに貢献し、編集者としてもビジネス書出版を手掛ける。2016年クロスメディア・マーケティングに転籍し、法人向けマーケティング支援の新規事業の営業統括責任者として事業を拡大。数多くの企業の出版を起点とするマーケティングおよびブランディグを成功させる。現在も企業の本質的な強みを活かしたマーケティング・ブランディング戦略の立案からプランニング、施策の運用まで一気通貫でディレクションを行っている。
企業出版とは?基礎からわかりやすく解説
企業出版の目的と役割
企業出版とは、企業がブランド価値向上や事業課題の解決を目的に行う出版活動です。
SNSや広告では伝えきれない理念・専門性・社会的意義を、書籍という信頼性の高いメディアで体系的に発信します。
単なるPRではなく、ブランディング、採用、人材育成、営業支援など幅広く活用でき、経営者や専門家の知見・経験・哲学を社会に伝える手段となります。
こうした出版を戦略的に活用する手法は「ブックマーケティング」とも呼ばれ、専門性の証明や信頼獲得を通じて、見込み顧客の育成やブランド認知、採用ブランディングなど企業活動全体に効果をもたらします。
商業出版・自費出版との違い
出版には主に「商業出版」「自費出版」「企業出版」の3つの形態があります。
| 出版形態 | 主体 | 目的 | 特徴 |
| 商業出版 | 出版社 | ベストセラー創出・販売収益 | 出版社が主導して企画・制作を行い、販売部数が最大の指標となる。編集から著者への依頼が中心。 |
| 自費出版 | 個人 | 自分史・表現活動・自己実現 | 著者が費用を負担し、個人の体験や思いを本にまとめる。販売よりも記録・発信を重視。 |
| 企業出版 | 企業 | ブランド価値向上・営業支援・採用 | 企業が費用を負担し、企画内容に企業の意向を反映。書籍を起点に認知拡大を図る。 |
それぞれの目的と特徴を理解しておくことで、自社の狙いに合う出版スタイルを選びやすくなります。
企業出版のメリット
① 企業の信頼度・ブランド価値を高める
書籍の出版は、専門性と信頼性の証明になり、企業ブランドの格を上げます。
販売・流通を通じて多くの第三者に届くため、広告よりも長期的なレピュテーション向上効果があります。社会への知見発信は投資家や取引先の信頼獲得にもつながります。
② 採用活動・人材ブランディングに効果的
企業理念や価値観を書籍で伝えることで、共感する人材を惹きつけ、カルチャーフィットの高い採用や定着率向上に貢献します。
社内研修や新入社員教育の教材としても再利用可能です。
③ 経営者やブランドのメディア露出を増やす
一般販売される書籍はメディアや業界関係者の目に留まりやすく、取材・講演依頼の増加につながります。
書籍内容をWebやSNS、セミナーに展開すれば、出版を軸とした統合的なPRも構築可能です。
④ 理念やミッションを社内に浸透させる
書籍制作の過程で経営層や現場の知見を言語化・整理することで、企業の理念や経営戦略を明確化します。
出版後は社内教材として活用でき、社員が企業の存在意義や社会的価値を理解することで、理念経営の実現を促進します。
企業出版の費用相場
費用の目安(制作費・印刷費・流通費の内訳)
企業出版の費用は、企画内容やページ数、デザイン、PR施策によって異なりますが、一般的な相場は500万〜1000万円程度です。
主な内訳は以下の通りです。
- 制作費:企画構成、取材・執筆、編集、デザインなど
- 印刷費:ページ数・部数によって変動
- 流通・PR費:書店展開、Amazon販売、広告、メディア露出など
書籍は一度制作すれば長期的に活用できる資産となるため、単発広告と比べて費用対効果が高いことが特徴です。
費用対効果を高めるための企画・編集の重要性
企業出版を成功させるには、単に本を作るだけでなく、出版目的を明確にした企画設計が欠かせません。読者にとって価値のある構成を設計し、出版後のPRやコンテンツ展開まで見据えることで、投資効果を最大化できます。
「出版=ゴール」ではなく、「出版=スタート」という意識が重要です。
企業出版ができるおすすめ出版社・制作会社比較【10社】
企業出版・制作会社比較表
| 会社名 | サービス名 | 書店流通 | PR/販促 | こんな企業向け |
| クロスメディア・マーケティング | 企業出版 | 全国7,500書店展開可能、ターゲットに応じたエリアマーケティング | 広告・プロモーション・出版後マーケ支援 | 柔軟なプランで出版&書籍を軸にしたマーケティング施策を実施したい企業 |
| プレジデント社 | カスタム出版、カスタムメディア | 書店販売を実施するためには、条件と内容の精査が必要 | 自社媒体との連携・記事化 | 経営層・富裕層向けに訴求したい企業 |
| 日経BP社 | カスタム出版 | 全国の有力書店で販売 | 制作から配送まで一貫支援 | 専門性の高い業界・分野の企業 |
| 宣伝会議 | カスタム出版 | 要確認 | 献本、メディア告知、出版記念セミナー | 広報・マーケティング担当に訴求したい企業 |
| 世界文化社 | カスタム出版(家庭画報のオーダーメイド) | 書店流通可能 | 多言語出版、インバウンド対応 | 文化・芸術・衣食住分野のブランド発信をしたい企業 |
| 東洋経済 | 企業出版、カスタム出版 | 書店流通可能 | 自社メディア(雑誌・Web等)でのPR | 伝統ブランドを活かしつつ社会的信頼を高めたい企業 |
| ダイヤモンド社 | 企業出版 | 全国の有力書店で販売 | 複数メディアとの連携 | ビジネス書ブランドで信頼性重視の企業 |
| 扶桑社 | 企業出版、カスタム出版 | 書店流通可能 | 自社WEB媒体(例:SPA!/ESSE)での宣伝活動 | テレビ・新聞・ラジオなどマスメディアと親和性の高いテーマを持つ企業 |
| サンライズパブリッシング社 | コンサルティング出版(企業出版) | 全国書店展開あり | SNS、新聞、交通広告、Web展開など多彩な施策 | 差別化できる営業・ブランディング手法を求めている企業 |
| ごま書房新社 | 企業出版、カスタム出版 | 全国書店展開あり | 新聞広告 | 集客・販促の強化、ブランディングを主な目的とする企業 |
| 幻冬舎メディアコンサルティング | 企業出版 | 全国3,400書店に流通可能 | 新聞広告、セミナー、Web展開など多彩な施策 | 専門性や信頼性を打ち出し、ブランド力を高めたい企業 |
① クロスメディア・マーケティング
出版プロデュース、マーケティング支援会社。グループ会社『クロスメディア・パブリッシング』での出版が可能です。ビジネス・実用書出版社として、『世界の一流は休日に何をしているのか』『だから僕たちは、組織を変えていける』など10万部超のヒット実績多数。
予算に合わせた柔軟なプランに対応可能で、 全国の書店への戦略的な展開、Amazonや著名なビジネス系メディアでの広告/プロモーション施策等の出版後のマーケティング支援が大きな強みです。
さらに、ライター・編集体制においても柔軟に対応可能で、専門分野に精通した編集者やライターがチーム化して企画・制作にあたる体制を備えています。
商業出版でもベストセラーを生む編集者・ライター・デザイナーチームが担当することや、重版率の高さ、実売数単位での印税受取が可能な点も特徴的です。
② プレジデント社
カスタム出版事業に40年以上の歴史があり、100社以上の取引実績をもちます。
雑誌「PRESIDENT」など、経営者や富裕層をターゲットにした書籍(メディア)づくりに強みがあります。
③ 日経BP
総合出版社として多数の専門雑誌の発行実績があり、 各分野の専門知識を持つ編集者が在籍しています。そのため、業界・媒体問わず対応可能で、 制作から配送まで一貫したサービスを提供しています。
④ 宣伝会議
マーケティングコミュニケーション領域における専門誌事業と教育講座事業により構築されたネットワークに強みがあります。キーパーソンへの献本や、 宣伝会議メディアでの告知、 記念セミナーの開催などが可能です。
⑤ 東洋経済新報社
『会社四季報』『週刊東洋経済』などの実績のある東洋経済新報社。120年超の伝統とブランドによるPR力と、『会社四季報』刊行により培われた取材力が強みです。大学関連の出版物やWebコンテンツ制作も行っています。
⑥ ダイヤモンド社
形に残る営業ツールとしての「企業出版」サービスを提供。『週刊ダイヤモンド』など、長年のビジネス書出版社として培った信頼性と確実性、宣伝力に強みをもちます。同社の雑誌・Webメディアとの連携も可能です。
⑦ 扶桑社
扶桑社はフジメディアホールディングスの出版部門として、雑誌『SPA!』『ESSE』をはじめ多彩な媒体を展開し、ジャンルを問わず書籍を制作。テレビ・新聞・ラジオとの連携により、話題化や露出につながる表現活動を強みに持つ出版社です。
⑧ サンライズパブリッシング
サンライズパブリッシングは、富裕層向けのコンサルティング出版を手がけ、企画書作成から原稿執筆、編集・デザイン、書店流通、出版後の販促まで個別にプロデュースする企業です。ビジネス書を中心に幅広いジャンルに対応しています。
⑨ ごま書房新社
ごま書房新社は企業出版・カスタム出版サービスを提供しており、原稿の編集・リライトをはじめ、オプションで企画立案・原稿作成にも対応しています。初版2,000部で全国書店に流通し、新聞広告掲載や重版時の印税支払いにも対応。「未来を開く鍵となる出版」を理念に掲げています。
⑩ 幻冬舎メディアコンサルティング
「つくる(企画 / 編集)」「知らしめる(広告 / 宣伝)」 「売る(流通)」「引き寄せる(出版社主催セミナー)」 の強みとして様々な企業のブランディング実績があります。書籍の形式や出版部数などの変動をはじめ、 オプションとして新聞広告やセミナー開催なども可能です。
出版社選びのポイント
企業出版を成功させるには、「どの出版社と組むか」が非常に重要です。
ここでは、出版社選びで重視すべき3つのポイントを紹介します。
① 自社の目的に合った出版社を選ぶ
出版社にはそれぞれ得意分野や強みがあります。
ビジネス書、ブランディング書、採用広報向け書籍など、自社の出版目的と出版社の得意ジャンルが一致しているかを確認しましょう。
「どのような企画が得意か」「過去にどんな企業出版の実績があるか」をチェックすることで、目的に合うパートナーを見極められます。
② ライター・編集体制を確認する
出版においては「誰が原稿を書き、誰が編集・校正を担当するか」が成果に直結します。企業出版では、企業の専門性・独自性を伝えるために、社内外の専門家・ライター・編集者との連携も重要です。
どのようなライター・編集者がアサインされるか、編集体制は安定しているか、企画から制作・校了までスムーズに進められるかを確認しましょう。
③ 書店展開・メディア連携など、サポート体制を確認する
出版社が「どこまでコミットしてくれるか」は、成果を大きく左右します。
特に企業出版では、出版後のPR・販促支援まで行ってくれる出版社を選ぶことが重要です。
企画提案や執筆支援、書店展開、メディア露出、SNS拡散など、どこまでサポートが含まれるかを事前に確認しましょう。
④ コストが見合っているか(費用対効果を比較する)
企業出版の費用は出版社によって幅があります。
豪華なパッケージや部数設定で割高な見積もりになるケースも少なくありません。費用項目(制作・印刷・販促)を明確に比較し、費用対効果が高い出版社を選びましょう。
出版社を選ぶときは、
①目的との相性 ②サポート範囲 ③費用対効果
の3点を軸に比較検討しましょう。
「どこまで寄り添ってくれる出版社か」を見極めることが、企業出版を成功に導く最大のポイントです。
まとめ
企業出版は単なる書籍制作ではなく、ブランド価値向上・信頼獲得・採用・営業支援など幅広い成果を生むマーケティング手段です。
出版社選びや企画設計を戦略的に行い、出版後のPR・コンテンツ展開まで見据えることで、投資効果を最大化できます。
本記事で紹介した出版社や比較ポイントを参考に、自社に最適なパートナーと共に出版プロジェクトを成功させましょう。
企業出版(ブックマーケティング)についてさらに詳しく知りたい方はこちら
『企業のブランド構築に、なぜ「本の出版」が効果的なのか?』
マネジメントクラブを運営するクロスメディアグループでは、企業の問題解決のための「企業出版」サービスを提供しています。ご相談・お見積りは無料です。ご興味のある方は、お気軽にご連絡ください。
FAQ(よくある質問)
Q1. 自社に合った出版社の選び方は?
A. 目的との相性、サポート範囲、費用対効果の3点を軸に比較検討すると良いでしょう。
Q2. 書籍出版後の活用方法は?
A. 社内研修・新入社員教育・Web記事・SNS・セミナー・動画教材など、多様なメディアで再利用可能です。
Q3. 出版費用の目安は?
A. 一般的には 500万〜1000万円程度。企画内容やページ数、PR施策で変動します。

