「経営者に読んで欲しい一冊」では、経営者の方におすすめしたいビジネス書を、著者の方へのインタビューを通してご紹介しています。今回は10万部超のヒットを記録したビジネス書『自分を変える習慣力』の著者三浦将さんへのインタビューです。
「ビジネスパーソンにとって習慣力が欠かせない理由」から、習慣力の身につけ方、ビジネスで結果を出すために必要な習慣…まで。株式会社チームダイナミクスの代表として、経営者をはじめとしたビジネスパーソンへのコーチング・研修を行っている三浦さんにお話をうかがいました。
経営者に欠かせない「自分に対するリーダーシップ」
<リーダーシップ開発、社内コーチ養成プログラムなどを中心に、企業の人材育成をサポートしている三浦将さん。それらの活動の中で三浦さんが、ビジネスパーソンの「習慣」に着目する理由や、『自分を変える習慣力』という本に込めた想いとは。>
習慣を身につけるっていうのは、自分に対してリーダーシップを発揮することだと思うんです。特に経営者をはじめとしたリーダーの立場にある人にとっては、チームのリーダーである前に、自分のリーダーであることがすごく大事なんです。
リーダーの役割っていうのは「これをやろう」「あそこを目指そう」というのを決めて、メンバーを束ねていくことだと思うんです。これを自分自身に置き換えてみると、自分が「これをやろう」とか「これを続けていこう」と決めたことを実行していくということですよね。
これが意外にちゃんとできていない人は多いんです。できている例で言うと、早起きの習慣とか運動をする習慣とかが身についている状態だと思うんですけど、逆にできていない例の最たるものは、悪い習慣を持っている状態ですね。
悪い習慣っていうのは、要は本人が望ましく思っていない習慣のことで。例えば、本人がタバコを止めたいと思っているのにタバコを吸い続けているとか、ギャンブルを止めたいと思っているのに止められないとか、いつもダラダラとネットサーフィンをしてしまうとか。そういうところで、ちゃんと自分をコントロールしながら、自分に対してリーダーシップを発揮していくことが、人生をちゃんと作っていくためには大切なスキルなんです。
経営者をはじめとしたリーダーの立場にある人にとっては、自分に対するリーダーシップを身につけることが、他の人へのリーダーシップにもつながっていると思います。自分をコントロールできていない人についていきたいとは思えませんよね。
『自分を変える習慣力』では、自分に対してリーダーシップを発揮して、いい習慣を身につけていくことを「習慣力」という言い方をしています。そういう、自分に対するリーダーシップとか習慣力とかっていうスキルを、ちゃんと身につけていこうと思っている方に向けて書いたのが『自分を変える習慣力』です。
たった1つの習慣ですべてが変わる
<自分に対するリーダーシップは、具体的にどのような変化をもたらすのか。また、実際に三浦さんが研修を行う中では、どのような事例があったのか。>
例えば、毎朝7時くらいに起きていた人が朝5時くらいに起きられるようになると、当然朝の時間の使い方が変わりますよね。その時間で運動をしたりとか、英語の勉強をしたりとか。
早起きというたった1つの習慣なんですけど、これだけで日々の時間の使い方とか、1日の気分とかが全く変わっちゃったりするんですよ。やるべきことを朝からちゃんとやっていると、達成感と余裕がある中で1日が始まりますし、ビジネスでも結果を出せるようになってきます。
私がコーチングや研修を行ってきた人の中には、ホントに2年間で4回昇進した人もいますし、一気に役員になっちゃったっていう人もいます。
ある人は、200人くらいの営業マンがいる会社に所属していて、15年くらいずっと100位くらいの成績だったんですね。その人も早起きの習慣を身につけたあと、一気にトップ営業マンまで登り詰めていました。
その人の場合、朝の時間に何をしていたかっていうと、別に接客技術を磨いたとかではなかったみたいなんです。その人に「何が違うんですか?」って聞いたら「朝、今日会うお得意さんのことをイメージするようになった」って言ってましたね。例えばその日3つ商談があるとしたら、朝の時間を使って、商談ごとに相手のことをイメージするようになったら、商談が非常にうまくいくようになったとのことでした。その結果、売り上げもどんどん上がっていったそうです。
もちろん要素としては、早起きだけではないと思いますけどね。早起きから始まって、人との付き合い方が変わったりとか、一日のリズムが整ったりとか。複合的にいろんな習慣が変わっていって、ビジネスの結果につながったんだと思います。
あと、習慣力が身についた方々は共通して「自己肯定感が高まっていく」と言われます。毎日やるって決めたことを、ちゃんと継続していくことで自分を認められるようになるんですね。
習慣力が身についていないと、何かをやろうと思っていてもなかなか続かないと思うんですよ。運動しようと思ってたんだけど実行できないとか、ダイエットしようと思っていたけど我慢できずに食べちゃうとか。そいうことって、ある意味自己否定になってしまうんです。逆に、習慣力が身についていると、決めたことを毎日ちゃんとやれている自分がいるので、どんどん自己肯定が高まるっていう効果があるんです。
習慣を身につけるポイントは「がんばらないこと」
<経営者やビジネスパーソンが習慣力を身につけるためのポイントは何なのか。また、経営者やビジネスパーソンが身につけるべき、いい習慣とはどのようなものなのか。>
習慣を身につけていくために大切なのは「がんばらない」「無理しない」っていう考え方ですね。習慣を身につけるとなるとどうしても、頑張ってダイエットしようとか、頑張ってジムに通うとかって考えてしまいがちなんですけど、実はそこが続かない原因なんですよ。人間っていうのはすぐに結果を求めてしまうものなので、がんばって2週間で10kgダイエットしようとか、がんばって1カ月で筋肉をつけようとかって無理をしちゃうんですよね。早起きに関しても同じ感じで、毎朝7時に起きていた人がいきなり朝5時に起きようとしても起きられないと思うんですよ。
習慣を身につけるためのポイントは、がんばらなくていいように、少しずつ段階的に習慣づけていくことなんです。私はこれを「習慣力メソッド」と呼んでいるんですけど、少しずつ段階的に変えていくことで、体にも心にも無理をさせずに習慣が身についていくんです。
習慣が身につかない原因の多くは、最初から無理をして頑張ってしまっていることにあります。どうしても、早く結果を出したいと考えてしまうんですよね。なので、早く結果を求めるのを止めて、じっくりと習慣を作っていくことを意識していくと、習慣は身につきやすくなります。
これは多分、会社の経営なんかも同じだと思うんですよね。早く結果を出そうっていう気持ちが、ほころびを生むことって多いと思うんです。焦った結果、社員とのコミュニケーションがおろそかになってしまったりとか。そこの考え方を変えて、まずはしっかりと土台を固めていくことを意識していくことが、経営においても大切ですよね。そういう点では、習慣力を身につけることと、会社を経営することは似ているかもしれないです。
<経営者をはじめとしたビジネスパーソンが身につけるべき「いい習慣」とはどのようなものなのか。>
経営者にとって非常に重要だと思うのは、社員とのコミュニケーションです。経営者と社員との人間関係が良好だと、社員のモチベーションにもつながりますし、会社に活力を生みます。そこがないとトップからのメッセージも社内に浸透しにくくなりますし、相互理解も生まれません。
経営には、社員とのコミュニケーションの質と量を上げていくことが欠かせません。コミュニケーションの取り方もひとつの癖であり習慣なので、いいコミュニケーションを増やす自己改革が必要だと思います。
また、早起きの習慣は、経営者に限らずすべてのビジネスパーソンにおすすめです。誰にでもできますし、コーチングを行ってきた中でも、朝型にした方が結果が出やすいと感じています。いろいろと試してみることで、自分のコンディションが良くなる時間を見つけられるはずです。
人は変わることに対して抵抗感を抱きやすい生き物です。その抵抗感をおさえるためにも、無理をせず、少しずつ日々の習慣を変えてみてもらいたいです。小さなことでも続けることが力になりますし、長期的な成長につながります。
本のご紹介
自分を変える習慣力