この記事では、企業の「ビジョンとミッション」について、秋元征紘さんの書籍『ビジョナリー・マネジャー』よりご紹介します。

秋元征紘

ワイ・エイ・パートナーズ 代表取締役 ジャイロ経営塾 代表
著書に『なぜ今、シュンペーターなのか』(クロスメディア・パ ブリッシング)、『金の社員・銀の社員・銅の社員』(文春新書)、『こうして私は外資 4 社のトップになった』(東洋経済新報社)、『一流の人たちのシンプルな習慣』(フォレス ト出版)などがある。

「ビジョン」が前提で、「ミッション」を定める。

実は多くの企業では、ビジョンとミッションを混同してしまっています。ビジョンとミッションは分けなくてはなりません。

私なりにさまざまなケースを調べたところ、日本企業の多くはビジョンとミッションの順番を逆に書いているようです。「これをすることによって、こういう社会を創る」という具合です。まず「しようとしていること」を書いてから「実現したい夢」を書いているからではないでしょうか。日本的なロジックなのですが、本来は違うレベルの話として捉えなければなりません。

「世界を変える、社会を変える」という話と、「〇〇を製造する」「○○を売る」という話は別なのです。まず夢=ビジョンがあって、それを実現する事業展開の方向性やビジネスモデル、あるいは戦略の骨子がミッションであり、それを実現する組織の価値観=行動規範がバリューなのです。しっかり機能する戦略とは、誰も思いつかないような創造性を発揮して大胆に発想・実施されることが大切ですが、リスクも伴います。

リスクを回避せず、リスクに立ち向かう、あるいはうまくいかなくても失敗から学び、修正を加えながらその時点でのベストな結果を出すためには、「PDCAサイクルをスピード感を持って回すこと」が必須になります。ですから、リーダーの言動が、時には朝令暮改となることもあるのです。今日のように、ビジネスのスピードとイノベーションの精度が問われている時代に、ミッションや戦略を固定的に考えるほうが、むしろ大きな問題です。

規模の大小に関係なく、生き残りをかけた事業展開の中では、フレキシビリティが求められます。戦略の実施段階においては「諦めること」も大事な要素になります。ムダなことをしないためにも、失敗に突き進まないためにも、早い段階での方向転換が必要です。ここにビジョナリー・マネジャーによるリーダーシップが果たす大きな役割があるのです。

マネジメントにおいて求められるのは「必要に応じて変更してゆく勇気」

私見ですが、第2次世界大戦の例でも明らかなように、「戦略的なアプローチ」と「意思決定に関わるリーダーシップ」は、今でも日本の組織が最も不得意な分野であると感じています。整合性の取れた良い戦略を立てると、それを守りたくなるのが人情ですが、マーケットや社会・経済情勢が変化してしまえば、何の役にも立たないことだってあるのです。捨てる勇気も含めて、その時点でのベストな答えを探りつつやっていくしかありません。

ビジョナリー・マネジャーに求められるのは、3カ年計画を一生懸命に守ることではなく、3カ月ごとに精査し、必要に応じて変更してゆく勇気なのです。

「これはグローバルな事業か?」と問う私の関わったいくつかのスタートアップ(ベンチャー)企業の企業ビジョン作成の場では、プロセスの最後のほうで必ず「これはグローバルに通用する企業ビジョンか?」と問うよう心がけています。

どんなビジョン、ミッション、あるいはバリューでも、それがグローバルかどうか、どうやって「世界を変える」のかを、最初の時点で問うておく必要があるからです。今日では、会社がある程度大きくなってからグローバル化に取り組むのでは遅いのです。最近はもっと踏み込んで、そのビジネスモデルが「日本で成功すること」を第一に考えなくてもいいのではないかと考えるようになりました。

日本よりも海外のほうがフィットするビジネスも多々ありますし、法規制や金融機関の無理解、競業他社の妨害、市場の保守性や高齢化など、ごく日本的な理由からダメになったスタートアップやベンチャー企業もたくさん見てきたからです。いい製品やアイデアがあったなら、日本以外でも可能性があるかどうか、とりあえず試してみることも必要です。今はそんなことも簡単に、かつ経済的にできる時代です。逆にグローバルな展開が期待できないビジネスチャンスには、ヒトやカネをかけないほうが賢明かもしれません。

さいごに

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

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