この記事では雇用契約書に「休暇」について記載するときのポイントについて、社会保険労務士 寺内正樹さんの著書『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!』よりご紹介します。

「休暇」に関するルールを明確に定めておくことで、社員とのトラブルを防止し、効率的な経営体制を目指しましょう。

【書籍】『仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!
【著者】寺内正樹 
社会保険労務士 / 行政書士

「休暇」について記載するときの5つのポイント

雇用契約書には「休暇」について記載することが義務付けられています。この記事では、以下の5つのポイントについて解説します。

  • 有給休暇の申請方法
  • 半日の休暇の取り扱い
  • 有給休暇の繰り越し
  • 有給とするか無休とするか
  • 取得できる日数

休暇の種類

記載のポイントについて解説する前に、「休暇とは何か」と「休暇の種類」について確認しておきましょう。

休暇とは

「休暇」は、労働義務がある日の労働が免除される日であり、もともと労働義務が発生していない「休日」とは異なります。そもそも労働すべき義務はあるため、休暇の日に働いても休日労働にはならず、「時間外労働」になるだけなのです。

「法定休日」の労働に対する残業代は、割増賃金として35%以上増やして支払うことが求められますが、「休暇」の日に働いても残業代の割増率は25%以上で足ります

また、「休暇」は「法定休暇」と「それ以外の休暇(法定外休暇)」に分けることができます。

法定休暇とは

まず、「法定休暇」としては、年次有給休暇産前産後休暇生理休暇育児休暇介護休暇子の看護休暇があり、それぞれ法律に規定されていて、社員からの請求により、原則的には必ず与えなければなりません。

法定外休暇とは

「それ以外の休暇(法定外休暇)」は、会社によって内容や呼び方は様々ですが、特別休暇慶弔休暇などがあります。

「法定休暇」は、法律で認められているため、雇用契約書上にもし記載がなかったとしても社員に休暇を請求する権利が発生します。このような話をすると、「どちらにしても認めないといけないなら正直書いておきたくないな」という社長もいます。

しかし、「法律で決まっているから、わざわざ書かなくてもいいだろう」という発想は、実は危険なことなのです。なぜなら法律には、これらの休暇に関する実際的な運用のルールはひとつも書かれていないからです。

有給休暇の申請方法

ここからは、雇用契約書で「休暇」について記載するときのポイントを確認していきましょう。

例えば、ある建設業の会社では、年次有給休暇の細かいルールは何も決めていませんでした。というのも、たまに体調不良で休んだり、連休の時に1~2日追加で休んで旅行に行くぐらいにしか使われていなかったので、社長が有給休暇をわざわざ管理する必要がないと思っていたのです。

書面での申請で記録を残す

しかし、ある時、社員のAさんのお子さんが交通事故に遭ってしまい、その看病のために、今、自分の残っている有給休暇をすべて使って休ませてほしいという話になりました。ところが、「有給休暇は書面で申請する」というルールがなかったために、会社には今までの記録が一切残っていません。社員に言われたら何となく必要に応じて、有給休暇を認めていただけだったので、一人一人の残日数がわからなかったのです。

半日の休暇の取り扱い

また彼は、朝、病院に行くために1日ではなく、午前中だけ有給休暇をもらったことが2回ほどあったということでしたが、これも取り扱いが不明確でした。彼によると、前に社長に聞いたときは「半日の有給休暇にして、午後は出てきて」と言われたそうなのですが、当の社長もよく覚えていませんでした。

これも「半日の有給休暇も認める」という明確なルールさえあれば、何も問題がなかったのです。ルールがないことで、午前中だけの2回の有給休暇を1日分と考えるのか、2日分として考えるのか不明確になってしまいました。

有給休暇の繰り越し

さらに、有給休暇は、翌年まで繰り越せることが法律で決まっています。

有給休暇の消化ルール

しかし、有給休暇を取得する時に、去年の繰越分と今年の発生分のどちらから消化するのかまでは決められていません

例えば、去年の繰越分が10日、今年の発生分が12日で、今年は3日の有給休暇を取得したとします。去年繰越分から消化するならば、去年の繰越分が7日、今年の発生分は12日のままで、12日が来年に繰り越されます。それに対して、今年の発生分から消化するならば、去年の繰越分は10日のままで、今年の発生分が9日になります。結果として、来年に繰り越せるのは9日ということになってきます。

有給とするか無休とするか

その他にも、産前産後休暇、生理休暇などの別の法定休暇では、休んだ場合に有給とするか無給とするかは法律上決められていません。そこで、ルールがなければ、給料を払うかどうかという基本的で重要なことさえも不明確なままになるのです。

そのため、たとえ法律で決まっていることであっても、再度、運用のためのルールを補足して、雇用契約書に明示して、あらかじめ準備をしておく必要があります。

取得できる日数

法律で決められていない「法定外休暇」で、多くの会社で認めているのが「慶弔に関する休暇」です。例えば、結婚時、出産時、死亡時などに休暇を認めてあげるケースが多いのです。ここで必要なのは、実際に休暇を「取得していくためのルール」です。具体的には、いつまでに、何日間取得でき、給料はどうなるか、などを細かく決めておきます。

実際に、私の友人の人材派遣会社で「本人が結婚する時に5日の休暇を与える」ことしか決めていなかったためトラブルが生じたことがありました。ある社員が結婚して1年半後に、前後の土日を含めた9連休の休暇の申請をしてきたのです。

これが「本人が結婚する時に、入籍日から1年以内に5日の休暇を与える。ただし、連続して取得する場合は、所定休日を含めて5日を限度とする。」と明確なルールが定められていたならば、問題は生じなかったでしょう。

さいごに

この記事では、寺内正樹さんの著書より雇用契約書に「休暇」について記載するときのポイントを解説しました。

この記事のポイント
  • 「休暇」に関するルールは、「有給休暇の申請方法」「半日の休暇の取り扱い」「有給休暇の繰り越し」「有給とするか無休とするか」「取得できる日数」に注意して決める。

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寺内正樹

シリウス総合法務事務所代表http://www.kaisha-teikan.com/
2002年11月より行政書士事務所を開設。2005年10月、社会保険労務士の登録も行い、企業の法務・人事労務をトータルにコンサルティングしている。中小企業の新会社法対応、会社設立には特に力を入れており、従来の業務に加え、個人情報保護法対策・プライバシーマーク取得支援などの新分野にも積極的に取り組んでいる。

Facebook:terauchimasaki


【参考】寺内正樹.
仕事のあたりまえはすべてルールにまとめなさい!