会社を起業すると、助成金・奨励金を申請できることがありますが、これらを安易に申請してしまうと危険な場合があります。
そこでこの記事では、岩松正記さんが著書『経営のやってはいけない! 増補最新版』で解説している「経営者が助成金・奨励金に頼ってはいけない理由」をご紹介します。
岩松正記
税理士。東北税理士会仙台北支部所属。山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員、税理士事務所勤務を得て、10年間に転職4回と無一文を経験後に独立。開業5年で102件関与と業界平均の3倍を達成し、現在は紹介のみを受け付けるスタイルで活動している。
助成金・奨励金に頼るな
国や地方公共団体が起業を支援するのは、なぜだと思いますか? これは、起業する人が増えればそれだけ経済が活性化し、雇用も増えるからで、そしてその結果税収が増えるからです。
実際、中小企業庁が発行している『中小企業白書』を見ると、起業数とGDP(国内総生産)は正の相関関係にあることがわかります。
従って、起業に際しそれを援助するための助成金や奨励金が非常にたくさんあるのは当然のことなのです。
しかしながら、助成金や奨励金は安易に申請し受領してはいけません。特に厚生労働省系の助成金は危険。
社会保険料は、ほぼ同額を会社が負担している
企業に対する厚生労働省関係の助成金の多くは、従業員を雇った場合の給料の一部を助成するといったような雇用の促進が前提になっており、健康保険や厚生年金といった社会保険や、労働保険・雇用保険の加入が必須条件になっています。
問題なのは、起業する人の多くがこの社会保険負担の深刻さを知らぬまま起業しているということ、そして勢いで助成金申請を行ってしまうということです。
サラリーマン時代には気づかないことですが、給料から天引きされている社会保険料は、ほぼ同額を会社が負担して国へ納める仕組みになっています。
もし自分一人で会社を起こして社会保険に加入した場合、国へ納める社会保険料は、給料から天引きになっている社会保険料の約2倍。従業員を雇えば当然に社会保険負担は増え、目安としては、従業員を5人雇えば会社負担分はほぼ従業員1人分の給料と同じくらいになります。
それだけ、社会保険料の会社負担は重い。にもかかわらず、「助成金がもらえるから」と必要以上に従業員を雇い入れ、給料の負担に加えて社会保険負担にも押し潰されてしまった会社を、私は数多く見てきました。
助成金自体を目的にすべきではない
もらえるものは何でももらえ、という考えも一理あります。
しかしながら、じゃあ支援を受けなかったら起業しなかったのか。そうではないはず。そもそも、助成金等をもらえるから起業するなどという動機は不純極まりない。実際、設立時から助成金をもらった企業がすべてその後順調かというと、そうとも言えないのが現実。
助成金はご褒美。もらうこと自体を否定はしませんが、できれば頼らない方がいい。
そしてこれは結果としてもらえるもので、それ自体を目的にすべきではありません。
まとめ.「やってはいけないこと」を知る
この記事では、岩松正記さんの著書より「経営者が助成金・奨励金に頼ってはいけない理由」をご紹介しました。
助成金・奨励金をもらうときには、同時に社会保険料の負担を伴う場合も多いので、十分に注意が必要です。そもそも起業・経営の目的は助成金・奨励金ではないはずなので、あくまでご褒美くらいの気持ちで受け取るのがよいかもしれません。
また、助成金・奨励金に限らず、企業経営において「やってはいけないこと」を知るのは重要なことです。『経営のやってはいけない! 増補最新版』(岩松正記 著)では、今回ご紹介した内容の他にも、経営にとって「やってはいけないこと」を、「マネジメント」「取引」「人事・労務」など、9つの視点からご紹介しています。
起業や会社経営に興味を持ちつつも今一歩踏み出せない方、もしくは踏み出したものの不安や疑問を抱いている方は、是非チェックしてみてください!