この記事では「イノベーション」とは何かについて、具体的な事例も交えて解説します。

イノベーションとは?

イノベーションの意味

英語のイノベーション(innovation)は、革新や刷新という意味合いを持っており、日本語では「技術革新」と訳されることもあります。単なる変化ではなく、これまでの常識を変えたり社会そのものを大きく動かしたりするような変化のことを指します。

分かりやすいものでは、インターネットを中心とした情報技術の発達や普及、それによる社会の急激な変化もイノベーションの一つだと言えます。

シュンペーターによるイノベーションの定義

経済学者シュンペーターはイノベーションを次のように定義しています。

経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること

イノベーション|Wikipedia

この定義のもと、シュンペーターはイノベーションを5つのタイプに分類しています。

新しい財貨すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産

ここで言う財貨とは、モノやサービスのことです。たとえばスマートフォンはこの定義で言うイノベーションです。

新しい生産方法の導入

新しい生産方法を導入することもイノベーションです。農作物を工場で栽培する方法などがこの好例です。

新しい販路の開拓

新しい販路とは、新しい顧客や市場のことです。高度化した化学繊維は、現在衣類だけでなく飛行機やロケットなどの材料にもなっており、新しい販路を開拓した例と言えます。

原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得

新しい原料や半製品の仕入先が見つかることもイノベーションと言えます。国内で生産していた製品を海外の人件費の安い国で生産することなどが例です。

新しい組織の実現

従来の組織とは違った形で経営が行われることもイノベーションです。テレワークを認める働き方や、これまでにあり得なかったような企業間の提携などもイノベーションと言えます。

参考:「イノベーション」の意味を正しく理解すると仕事の見方・考え方が大きく変わる | 会社に入る前に知っておきたい これだけ経済学 | ダイヤモンド・オンライン

企業イノベーションの重要性

ビジネスにおいて、イノベーションを起こした企業はいち早く成長し、市場で主導権を握ることができます。また、イノベーションを起こすだけではなく、社会に起こるイノベーションに対して柔軟に対応していくことも、企業にとっては重要です。変化に対応していくことができなければ、従来のやり方は通用しなくなり、企業が生き残っていくことはできません。

イノベーションとリノベーションの違いとは
イノベーションと似た言葉に「リノベーション(renobation)」というものがあります。リノベーションとは改修や改良のことを指していて、ビジネス用語というよりは建築関係の用語として利用されることが多いです。イノベーションとリノベーションは使われる環境が大きく違うのはもちろん、意味合いとしても「技術革新」と「建物の改修・改良」と異なります。

企業イノベーションの事例「経済合理性がなかったヤマト運輸の宅急便」

ヤマト運輸の2代目社長小倉昌男氏が運送業界に起こしたイノベーションの事例をご紹介します。この事例は『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』をもとに編集しています。

とても採算が合わなかった個人宅配

はじめて個人向け宅配便を始めたのはヤマト運輸です。今では押しも押されぬ最大手ですが、最初から宅配便をやっていたわけではありません。

1970年ころの運送業の中心は、商業貨物でした。商業貨物は、工場や倉庫など決まった場所から毎日のように出荷されます。行き先もほぼ決まっているため、運送業者は限られた個々の荷主に合わせて対応していけばよいのです。それを毎日繰り返していれば、効率的に大量輸送が実現でき、ビジネスとして成り立ちます。

それに比べて、個人の宅配需要は毎回出荷される場所も違えば、配送先も違います。たったひとつの荷物のために、表札を探しながら依頼者の家に行ってみると、配達先は青森と言われるかもしれないし鹿児島と言われるかもしれなません。しかも、個人の宅配需要の発生はまったく偶発的です。そのため、事業は不安定にならざるを得ません。さらに、ほとんどすべての荷物が1個口であるため、個人の宅配は、商業貨物と比べて著しく効率が悪いのです。

発想の転換が常識を打ち破る

1971年、当時業績が悪化していた中で、ヤマト運輸の2代目社長に就いたのが小倉昌男氏です。

小倉氏は、個人の宅配における競争相手は郵便局だけであることに注目しました。民間企業は1社も行っていなかったのです。デメリットを抑える方法を考え出し、それを実行できれば、個人宅配市場を制覇することも夢ではないと、小倉氏は考えました。

まず、市場規模について、従来の郵便小包の取扱量を参考に試算したところ、2億5000万個ほどの取扱量がありました。仮に1個500円とすると1250億円の市場です。当時のヤマト運輸が食べていくのには十分な市場規模であることがわかったのでした。

個人宅配は、個々人から見れば偶発的でも、マスとして眺めれば、一定の量の荷物が一定の方向に向かって流れているのではないか。個々の需要に着目しているうちは対応の仕方がわからないが、マスの流れに着目すれば、対応の仕方があるのではないか、と小倉氏は考えました。商業貨物の輸送は、1升瓶のような大きな瓶を持って工場に行き、豆を瓶に一杯に盛り、瓶ごと運ぶようなものです。一方、個人の宅配の荷物の輸送は、一面にぶちまけてある豆を1粒1粒拾うことから仕事が始まります。それをマスとして捉え、効率的に行うためには、ターミナルに配属された10トントラック1台で工場に集荷に行く代わりに、住宅地に設けた小さな営業所から、小型トラックを10台出して住宅や商店をこまめに回って集荷すればいいのではないかと思い付いきました。郵便小包も、郵便局の窓口に荷物を持ち込ませるところから仕事が始まるため、それと同じことをすればいいのです。

しかし、ヤマト運輸の窓口に荷物を持ち込めといっても不可能でした。なぜなら当時、ヤマト運輸の支店がどこにあるかなど、一般市民は誰も知らなかったからです。小倉昌男氏は自前で営業所を設置する考えは最初から捨て、その代わりに、酒屋や米屋など、従来から家庭の主婦に馴染みのある町中の商店に取次店になってもらうことにしたのでした。宅配便を利用したい人には近くの取次店まで荷物を持ち込んでもらうのです。後はヤマト運輸の集荷車が取次店をまわり、営業所に荷物を集めるというわけです。

イノベーションを起こすために必要なのは「組み合わせ」

ヤマト運輸は、他にはない着眼点と発想でイノベーションを起こし、今では押しも押されぬ最大手となりました。

イノベーションと聞くと無から有を生み出すようなイメージがありますが、実際はそうではありません。また、一部の天才や秀才だけが起こせる、特別な発明や発見のようなものでもありません。イノベーションを起こすために重要なのは、「組み合わせ」です。

ヤマト運輸の事例でも、自社の運送のノウハウに、酒屋や米屋に取次店となってもらうというアイデアを組み合わせることで、個人宅配市場を開拓しました。

参考:企業イノベーション5つの事例(ヤマト運輸・セブンーイレブン・JAL・アマゾン・Google)

イノベーションについて学べる本

『合理性を超えた先にイノベーションは生まれる』

合理性を超えた先にイノベーションは生まれる

企業がイノベーションを起こすために必要な考え方を「合理性」という視点から解説した本です。先述のヤマト運輸をはじめとした豊富な事例をもとに、経営者が身につけておくべき考え方を学ぶことができます。ブライトワイズコンサルティング合同会社代表社員 金子 智朗 著

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『イノベーションのジレンマ』

イノベーションのジレンマ

イノベーションに関するとても有名な本です。社会に起こるイノベーションに対して経営者はどのように対処していくべきなのかを、明晰な事例の分析をもとに解説している本です。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) 教授 クレイトン・クリステンセン 著

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『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセン氏が、イノベーションを創り方について解説した本です。詳細な分析をもとに、「消費」という視点からイノベーションの創り方を学ぶことができます。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) 教授 クレイトン・クリステンセン 著

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