この記事では、働き方改革のなかで注目される「男性の育休」についてご紹介します。企業が男性の育休を推進するメリットを理解すれば、多様な働き方の実現に近づくはずです。

経営コンサルタントである佐藤雄佑さんが、自身の実体験や先見をもとに書かれた『いい人材が集まる、性格のいい会社』で解説している内容をもとに編集しています。
【著者】佐藤雄佑 株式会社ミライフ 代表取締役。

企業が変われば男性の働き方が変わる、働き方が変われば企業も変わる

昨今注目を浴びている働き方改革の中でも、本丸は長時間労働の是正です。日本は世界でも稀にみる長時間労働を行っていますが、これはなぜなのでしょうか?

日本人は勤勉だからというのはよく言われる話ですが、私はそれだけではないと思います。

長時間労働の背景

日本の労働基準法では、割増賃金の規定が定められています。時間外労働や休日労働をした場合、割増率は時間外労働については2割5分、休日労働については3割5分と定められています。

そもそも、この規定は雇用主の都合で長時間労働をさせることを抑制するためにできたものですが、割増率が高かったので、労働者にとっては、長時間労働することで効率的に稼げるようになってしまいました。

高度成長期において、雇用主、労働者がWIN・WIN関係の下、ある種、共犯して長時間労働を進めてきたというのが背景ではないかと思います。

長時間労働は時代遅れ

一律のプロセスでモノをつくっているのであれば、労働時間とパフォーマンスは相関したかもしれませんが、もはや、労働時間=パフォーマンス、アウトプットという時代でありません。

会社の生産性という観点でも早く長時間労働体質から脱しないといけません。

また、生き方という文脈においても脱長時間労働は急務です。これから、労働力不足の中、女性の活躍推進、社会進出はもっと進めていかなくてはなりません。

多様な働き方で強い組織に

そうしたときに男性の働き方が変わらないということは、家庭においてすべての負荷が女性の方に乗ることになります。

これで女性に活躍しろというのはあまりにも理不尽です。女性だけがハンデ戦を強いられるというのはどう考えてもおかしいですし、変えていかなければなりません。

女性の社会進出と男性の家庭進出はセットです。

今は若い男性を中心にイクメンも、男性育休取得希望も多くなってきています。あとは会社が変わるだけです。

働き方を変え、多様な働き方をうまく使いこなしていく会社にはいい人材が集まって強い組織ができ、結果、生き残っていく会社になると私は信じています。

POINT
  • 長時間労働は生産性や生き方の観点から見ても時代遅れ
    →労働力不足には女性の力が必要
     →企業が働き方を変えることで、女性も男性も働きやすい強い組織に!

育休取得の現状

2015年の調査では、女性の育休取得率は81.5%となっており、女性が子どもを産んだとしても復帰して働き続けるというスタイルは確実に定着しているといえます。

しかしながら、中小企業の経営者では、まだまだ女性は子どもを産んで辞めてしまうとか、子育てしながら働くのは難しいと考え、そもそも女性の採用を抑えるような会社もあるのも正直なところです。

女性の活躍がよいサイクルを生む

ただ、私はもうこれからの時代、女性の活躍推進に取り組まない、取り組めない企業は伸び悩むと思っています。

女性を採用しない、活用できない時点で採用でも苦戦するでしょうし、経験者が辞めて、また新しい人が入ってくるというのもなんとも非効率です。

仮に育休期間はお休みになったとしても、この採用難時代を考えれば、経験者、即戦力の人材が確実に戻ってきてくれるというのは戦力的には大きいです。それを短期で見て、切り捨ててしまうのはなんとももったいない話です。

ですので、女性の育休取得実績やそのような社員が複数名活躍する状態を早くつくっていき、いいサイクルを回していくことが会社としては重要です。

男性の育休 個人へのメリット

私は子どもが生まれてから半年したところで、半年間の育休を取得しました。

私自身、育休を取得して100%良かったと思ってます。

育休を経ての変化

この育休の期間で、育児、家事修業して、一通りのことは何でも1人でできるようになったこと、また何をやるべきかがわかるので、妻にやってと言われる前にいろいろできるようになったことが大きな成果だったと思います。

この期間があるからこそ、今夫婦ともども、会社に復帰しても、お互いが支えあってうまくやっていくことができているのかなと思います。

育休期間は私の様に半年というのは長いかもしれませんが、1カ月取れば、一通りのことは自分でできるようになると思うので、日本でももっと多くの男性が育休を取ってほしいなと思います。

男性の育休 企業へのメリット

さて、育休を取った個人が良かったということはありますが、会社にメリットはあるのでしょうか。もちろんイエスです。

私が在籍していたリクルートでも、私が育休を取って以降、男性でも育休を取る人が増えてくれて既に2ケタ以上の実績になっていますし、また、リクルートグループでウェブサービスなどを提供しているリクルートコミュニケーションズでは2016年から男性の育休取得を必須化しました。

リクルートは昔から「価値の源泉は人」という考え方を強く持っていますし、ダイバーシティや多様な働き方も推進してきていますので、受け入れやすかったのかもしれません。

育休は合理的

ただ、私はこれはリクルートだからできる、大手企業だからできるということではないと思っています。

これも短期で考えると大変だと思う部分はあるのですが、中長期で考えれば合理性があると思っています。

育休で離職率を下げる

まず多くの中小企業では、離職率に悩んでいます。言い換えると、毎年一定数の人材が退職し、その補充をしています。

仮に退職した人数をその分採用できたとして、人数は同じでも、それは自社の経験者が減って、未経験者が増えていますので、実質的には戦力ダウンです。

採用にはコストと時間も掛かりますし、その後、会社のこと、製品・サービスのこと、業務のことなど育成をしていきますので、それもコストと時間がかかります。

つまり、中小企業において、離職率を下げるというのは、安定稼働だけではなく、コスト、時間ともにメリットがあるのです。

男性が育休を取るということで、職場から抜けることは当然痛手ではありますが、育休は退職ではないので、確実に戻ってきますし、タイミングも読めます。究極は退職したと思って送り出して、経験者が採用できたと思えばいいのではと思っています。

育休で安定した生産性の高い働きを実現

また、育休を取った社員にも変化が現れます。

会社に対してのロイヤリティは間違いなく上がりますし、戻ってきてからは時間を意識して生産性高く働くことになります

また、男性が家庭進出をしている家は、していない場合に比べて夫婦仲が良いケースが多いですので、精神的にもとても安定して働いていくれます

家庭での安心がよい働きにつながる

会社からは触れにくいことなのであまり意識してないことも多いかもしれませんが、これはとても重要です。

私は人事マネージャーとして、年に2回、100人程度のまとまった数の社員面談を行ってきました。もちろん、仕事や自身のキャリアについての相談を受けることがメインですが、実は家庭やプライベートの悩みを聞くケースも多かったです。

やはり、家庭がうまくいってなかったり、家に帰るのが嫌(ホームがアウェイ状態)だったりすると、仕事に身が入らないものです。やはり仕事で頑張れるのも家での安心があるからこそだと思っています。

プライベートを大切にする方針は報われる

性格のいい会社、すなわち人に対する考え方になるのですが、このように社員の個々の人生を考えて、プライベートも大事にしようというメッセージは今の若い人たちや優秀な人に確実に刺さると確信しています。

POINT
  • 育休を取った社員は、会社へのロイヤリティが上がる
  • 時間を意識して生産性高く働くように
  • 家庭内が安定していることから精神的にも安定して働ける
  • 育休の取り組みと社風で優秀な人材が入ってくる

育休を実践する企業

ここでひとつ、男性の育休にも力を入れている企業、メルカリの事例を見てみましょう。

メルカリには「merci box(メルシーボックス)」という、社員が「Go Boldに思いっきり働ける環境」をより充実させていくための人事制度、しくみをまとめたものがあります。

「Go Bold」で伸びやかな会社に

「Go Bold(大胆にやろう)」はメルカリのバリューの1つです。

どうしたら社員が「Go Bold」に働けるのか、そのために会社がしていかなければいけないことは何かというところから考えて、社員だけでは拭えない不安や、リスクというところをできるだけ会社として軽減したいという想いからmerci boxを導入しています。

まさに人を起点に、最大限仕事にパフォーマンスを発揮できる環境づくりをしています。

具体的なmerci boxの内容は大きく分けて3点あり、

①社員の家族を含めた環境の支援、
②万が一のときのセーフティライン、
③ライフイベントのサポート

です。

育休中の給与を保障

その中でも、メルカリの人事制度がすごすぎると話題になったのは、産休・育休期間中の給与を会社が100%保障する制度です。

通常産休・育休期間中は会社からの給与はありませんので、経済的に不安を感じる人もいるわけですが、まさにお金のことを心配することなく、安心して出産や育児に専念できる環境を整えています。

また、この制度は女性だけではなく、男性にも適用されるため、メルカリでは男性の育休取得者も多くいます。

これは日本の企業の中でも、とても先進的な取り組みと言えるでしょう。

育休制度はいい企業の条件のひとつ

その他にも、妊活支援や病児保育費の支援、全社員の死亡保険加入、結婚や出産などのライフイベント時の休暇やお祝い金など、まさに「Go Bold」に働くために、社員のライフまで支援しているというのがメルカリのmerci boxの特徴です。

このようにメルカリは2013年に設立したベンチャー企業でありながら、優秀なエンジニアを始め、いい人材が集まる会社となり、事業を順調に伸ばしています。

メルカリにいい人材が集まる理由は、ミッションへの共感と、社員が「Go Bold」に働くための環境や制度、施策を会社が全力で用意しているからなのでしょう。

まとめ

この記事では、佐藤雄佑さんの著書より、柔軟な働き方ができる企業の条件、「男性の育休」について紹介しました。

社員を大切にする働き方を実現することで、生産性が高くなり、優秀な人材が集まるというよいサイクルをまわしていくことができるのです。

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書籍『いい人材が集まる、性格のいい会社』では、今回ご紹介した内容の他にも、働きがいを備えた、多様な働き方が可能な会社を実現するための方法が紹介されています。「いい人材が集う会社にしたいが具体的に何をしたらいいのかわからない」と悩んでいる経営者の方は是非チェックしてみてください。

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