この記事では、多様な働き方の推進において求められるであろう「イクボス」についてご紹介します。制度を運用していく上司から変わることで、多様な働き方が可能な働きやすい組織へと変わることができるはずです。

経営コンサルタントである佐藤雄佑さんが、自身の実体験や先見をもとに書かれた『いい人材が集まる、性格のいい会社』で解説している内容をもとに編集しています。
【著者】佐藤雄佑 株式会社ミライフ 代表取締役。

「イクボス」とは何か

「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指します(対象は男性管理職に限らず、増えるであろう女性管理職も)。

イクボスのポイント

いくつかポイントがあるのですが、まずはイクボスと言っても、育児をしているボスでもなければ、育児をしているメンバーだけを支援するボスでもありません。

これからは育児に限らず、介護や学びも含めかしらの制約をもった社員をマネジメントしていく時代です。

イクボスとは、そのような一緒に働く仲間のキャリアと人生を応援するボス(上司)のことです。

また、もう1つ大事なのは、ただ単に社員に優しく、甘く接するのではなく、組織の業績と結果を出すというのがポイントです。

ただ単に優しいだけだと、継続しません。

強いからこそ、優しくできるので、ちゃんと結果も両輪で回すことが求められます。

POINT
  • イクボスとは、部下やスタッフを仕事面でも生活面でもサポートできる上司のこと
  • ただやさしいだけではない!結果も出せてこそのイクボス

なぜイクボス的マネジメントが求められるのか

私はこのイクボス的マネジメントが、今後多くの企業、組織で求められてくると思っています。

それにはいくつか理由がありますが、一番は今後少子高齢化で、間違いなく労働人口は激減していき、そしてそれと同時に、女性の社会進出、活躍推進がさらに進んでいきます。

共働き世帯も1997年に専業主婦世帯を抜き、逆転してからは、右肩上がりに増えています。

核家族化も進んだ今、家事・育児は夫婦で分担していかなければなりません。

そうなると、当然企業側へのニーズとしても、社員のライフを支援することがめられてきます

イクボスの与える影響

また、イクボスの存在は組織のモチベーションやチームワークの向上、そして強い組織づくりにも寄与します

この本のテーマでもありますが、「性格のいい会社」というのは、何も人事制度や施策といったことに限ったことではなく、むしろこのマネジメントやコミュニケーションといったところに性格の良さが出てきます。

むしろ、いくら制度や施策があったとしても、それが運用されてなければ意味がないですし、このようなイクボスがいたら間違いなく組織のコンディションは変わってきます。

半径5メートルの居心地がモチベーションにつながる

私は社員にとっての組織の居心地というのは半径5メートルで決まると思っています。

どんな大きな会社であっても、小さな会社であっても半径5メートル、すなわち、上司を中心とした同じグループの居心地が、その人にとっての会社の居心地、ロイヤリティ、モチベーションになるわけです。

昔は、終身雇用で、頑張れば評価され、昇進、昇格していける時代であり、そのようなわかりやすいニンジンをぶら下げれば社員が頑張ってくれていたかもしれませんが、これからはいろいろな制約を抱えて社員をマネジメントしなくてはいけませんので、一筋縄にはいきません。

メンバー個々の事情や想いを理解したうえで、カスタマイズされたマネジメントが、モチベーションの高い、チームワークのいい組織づくりに繋がり、それが組織の結果にもつながっていくわけです。

POINT
  • 少子高齢化ひいては労働人口の減少によって変化するライフスタイルに合った働き方が必要
  • 組織の居心地の良さは社員のモチベーションに直結する
    → 組織の居心地を良くするイクボスの存在が組織のコンディションを整える
    → 組織のコンディションが整えられれば結果につながる

ワーキングマザーの悲痛な叫び

私がこのイクボスというテーマに取り組み始めたのは2010年からのことで、その当時はまだイクボスという言葉はありませんでした。

きっかけは、私が現場の支社長から突然、人事に異動したときのエピソードです。

イクボスの原点

私がコーポレート部門の人事マネージャーに異動するということが発表されたとき、本当に多くの女性社員から「女性が長く働ける職場にしてください」「女性が結果を出せる環境にして欲しい」と言われました。

これはメッセージというより、悲痛な叫びだと感じ、このテーマを放っておいちゃダメだ、絶対になんとかしようと思ったのがスタートです。

2010年当時の働く女性

当時からリクルートでは、ほとんどの女性社員が育休を経て復帰しますが、復帰しても「何の仕事をするのか」「会社が自分に何を期待するのかがわからない」といった声が多くありました。

「基本的に育休から復帰する」というのが普通の選択という段階に来ていたので、復帰したワーキングマザーがマイナーな存在ではなくメジャーな存在になりつつありました。

そこで、ケアするよりも、彼女たちがどう活躍してくれるかという活躍推進を軸に施策を考えていきました。

それと同時に、ワーキングマザーをメンバーに持つ組織長全員に対してのレクチャーをやりました。まずは、人事制度の説明として、時短を取ると給与がどれくらい減るのか、評価方法、ミッションの設定の仕方などのルールを、とにかく説明してまわりました。

そもそもこれを知らない組織長が多過ぎで、前提がずれているので、メンバーとのコミュニケーションにも乖離が出てくるのは当然です。

ワーキングマザーの声

そして、ワーキングマザーであるメンバーが、マネジャーに対してどのようなことを感じているかという生の声を、組織長にどんどんぶつけていきました。

例えば、「午後5時にミーティングを定例で入れているのは、時短勤務の私は戦力外ってことですか」や、「働ける時間に制約があるだけで、能力が低いわけじゃない!何もできない新人みたいに扱わないでほしい」とか、「子どもが熱出して休む連絡をしたら溜息つかれた」など、そのまま伝えていきました。

これはコツコツと、啓蒙していくしかないと思ってやっていきましたが、結果として、組織長からもワーキングマザーからもとても感謝されました。

イクボス的マネジメントの心得

それでは、具体的にイクボス的マネジメントのポイントについてお話ししていきたいと思います。

イクボス、3つのポイント

ファザーリングジャパンのメンバーとして私が企業の幹部、組織長向けにイクボス研修などをやるときにお伝えしているのは、

  • オーダーメイドな指導と声掛け
  • チームワークの向上
  • ボス自身の覚悟

の3つです。

この3つができると、部下がボスのファンになり、自律的な組織になっていくと話しています。

社員一人一人への真摯な対応

1つ目はオーダーメイドであり、個別というのはとても大事なポイントです。

昔は会社の決定事項を一律にドカーンと下していけばよかったですが、今はメンバー個々が抱えている事情が異なりますので、個別に対応していかなければいけません。

そうなると大事なのは、メンバーのことをよく知ることであり、知るためにコミュニケーションを取ることです。

特にメンバーの家族や私生活についても、雑談などを通じて知っておくことで、そこに対して配慮してあげることができるようになります。

もう、仕事のことだけマネジメントしていればいいという時代ではないということです。

メンバーが最大限、仕事に打ち込める環境をつくってあげることが必要となります。

チームで互いを助け合う

2つ目はチームワークですが、これからの時代、メンバーが子育てや介護などの制約を抱えているのは当たり前なので、突発的にお休みになったりすることもあります。

なので、チームとしてのビジョンをつくるなどして、ベクトルを合わせて、チームで助け合わなければなりません

そのようなチーム一丸となっている、助け合う組織をつくっていけるボスはよりパフォーマンスが出せるでしょう。

ボスの覚悟がものをいう

3つ目はボス自身の覚悟です。結局はここが大事ともいえるのですが、ボスがやらないことをめる覚悟」であり、「部下せる覚悟」、「自意思決定をして責任をとる覚悟」必要です。

これがあれば、その組織、つまりその上司から半径5メートルは確実にいい組織に変わっていきます。

イクボスへの変身が生産性を向上させる

これがすべてというわけではないですが、私たちがイクボス研修で話している大事な心得はこの3つです。

この3つができれば、その組織は生産性を上げることができて、より限られた時間の中で、結果が出せるチームになっていきます。

昔は時間無制限のノックアウトまで戦う試合だったかもしれませんが、今は限られた時間の中で、どこまでできるかという試合に変わってきています。

ボス自身ゲームのルールがわっていることを認識して、自らの行動えていかなければなりません

イクボスの3つの心得
  • オーダーメイドな指導と声掛け
    社員一人一人を知り、配慮する
  • チームワークの向上
    互いを補完しあってより良い業績を収める
  • ボス自身の覚悟
    ボスが責任から逃れないことで安心して仕事ができる環境になる

まとめ

この記事では、佐藤雄佑さんの著書より、働き方改革の第一手として「イクボス」について紹介しました。

経営者自らが、社員一人一人のワークライフバランスを考えられる、やさしさと強さを持った「イクボス」となることで、多様な働き方が可能となるのです。

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