この記事では、「数値化した人事評価の落とし穴」についてご紹介します。人事コンサルタントである内海正人さんが著書会社で活躍する人が辞めないしくみで解説している内容をもとに編集しています。

数値化した人事評価は客観性が高いと考えられいますが、実は信頼性に欠けている可能性も高いです。

内海正人

人事コンサルタント・社会保険労務士。日本中央社会保険労務士事務所代表。

数値化した人事評価では社員を測れない

数値化している人事評価というのは客観性が高いと考えられていますが、果たして本当でしょうか?

まず、詳細まで数値化された人事評価を持っている会社があります。ここでは、売上や利益に対して社員とアシスタントの責任の案分が明確にルール化されています。さらに、貢献度や積極性も点数化して、その行動に対して「何点を与える」となっています。

人事評価の数値化は信頼性がない

ある会社には、多くの項目を数値化するための人事評価のルールが多くありました。半年に1回の人事評価の時期には、考課者となる社員は頭を抱えていました。なぜなら、評価する項目が多岐にわたっていて、短い時間で評価するのが厳しいのです。

その結果、数値化している割には上司の考える時間もあまりないし、何となくの評価で数値に落とし込んでいました。こうなると、評価制度の信頼性が揺らいでしまいます。そして、この数値化が果たして正しいのかどうかという大きな問題となっていくのです。

ですが、人事制度をリニューアルしたいという会社からのお問い合わせを受け、現行の制度を拝見していました。半年に1回の人事評価のときの評価項目が300以上で、そのすべてを評価ルールに基づいて数値化して、点数によって賞与の額を分ける昇給の材料としていたのです。

根拠がない評価になっている

この評価を実際に行うのは、一次考課者である課長クラスの人でしたが、「いつも人事評価のことなんか考えられない。評価書の期日があるのでその直前だけは試験勉強の一夜漬けのように作成するけれども、結局は根拠のない数値化になっているというのが本当のところです」と多くの人が話していました。

こうなると、評価者と被評価者の人間関係がうまくいっていないと、「あの課長に評価してもらいたくない」「上司からの評価が気に入らない」などとなってしまいます。このときは、「この制度を継続するか否か」という相談も含めてお問い合わせを受けました。

人事評価の複雑さゆえに、実際の意図するものと異なった結果となっているのではないかと指摘しました。

細かすぎ・時間がない数値化した人事評価
・根拠のない数値になってしまう
・人間関係の影響が出てしまう
社員の関心は自分は何点かということが中心になる

人事評価は言葉で記述する

その結果、とりあえず複雑な人事評価制度は凍結させ、課長が人事評価の時期に「自分の言葉で記述する」という制度に変えてみたのです。今まで、ルールに沿って数値化していたものを、今度は「自分の言葉で自由に書く」ということになったので、多くの課長たちから、どうやって書いていいのかわからないという声が挙がりました。

しかし、ここでまた複雑なルールを導入すると、元の木阿弥になってしまうので、ここはあえて自由に、自分の言葉で、ということを徹底させました。すると今までは数値化という作業をしていただけの課長たちが、自分の頭でそれぞれの部下に対する想いや、日頃感じていたことを文章にしてきました。

改善点は何かを伝えることができる

そして、その後に人事評価の面接を実施しました。今まで点数ばかりが一人歩きして、社員の関心は自分は何点かということが中心だったのですが、この方式に変えてから、社員ができていること、できていないこと、そして、改善すべき点が何なのかを話し合う場面として面接を活用できるようになったのです。

単に数値化するより、仕事に対し、課長も社員も正面から向かい合うようになった。と会社から報告を受けました。本来の意味での人事評価を取り戻したとのお話も伺いました。

数値だけでは社員を評価しきれない

できる社員とそうでない社員の区分ですが、もしかしたら、点数で高スコアかどうかではなく、それぞれの個性がきらりと光ることではないでしょうか?

その場合、評価のベースとなる基準は必要でしょうが、そのモノサシだけで測りきることで社員の可能性にフタをしているのかもしれません。

まとめ

この記事では、内海正人さんが著書で解説している「数値化した人事評価の落とし穴」をご紹介しました。

人事評価の数値は、何となくの評価で落とし込んでいることがあるため、信頼性に欠ける場合があります。また、数値化した人事評価だと、社員の関心は自分は何点かということが中心になりがちです。

評価を言葉にすることで、社員ができていること、できていないこと、そして、改善すべき点が何なのかを話し合う事ができるので、社員の個性を引き出すことができるはずです。

言葉による人事評価
・評価者の想いや感じていることを文章にできる。
・社員ができていること、できていないこと、改善すべき点が何なのかを話し合うことができる。
仕事に対し、課長も社員も正面から向かい合うようになる。

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