この記事では、営業に携わる人が知っておくべきトークのコツや、営業の心得について解説します。この記事内容は箱田忠昭さんの書籍『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ』をもとに編集しています。

【書籍】『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ
【著者】箱田 忠昭
 インサイトラーニング株式会社代表

営業の心得「販売は断られたときから始まる」

営業とは

ビジネスにおいて「営業」とは、商品・サービスを紹介したり販売したりする業務のことを指します。営業の役割を担う人には、相手の断り文句にうまく対応して、商品・サービスを買ってもらう技術が欠かせません。

営業の心得

あなたがお客に見積書を提出したときや、商品やサービスの価格を提示したとき、お客は何と言うでしょうか。「いやー安いね、ウチはお金いっぱいあるから、たくさん買うよ」と言うでしょうか。そんなことはありません。お客はまず断ってきます。「NO」と言ってきます。

逆に、あなたがお客の立場になったことを考えてみてください。例えば、あなたが洋服を買いに行ったとします。店内で洋服を選んでいる最中に、横から店員が話しかけてきます。「こちらの商品は、この冬の新作で今とても人気があります。ご試着してみませんか?」さて、あなたは喜んで試着してみるでしょうか? こんなときは、自分で選ぶからほっておいてほしいと、とりあえず「NO」と答えるのではないでしょうか? もっと言えば、勧められた服をよく見ることもなく断ることもあるのではないでしょうか?

このように人は、失敗したくない……、もっといいものがあるかも……といった具合に、断る理由は人それぞれありますが、とりあえず「NO」と言うのです。

販売は断られたときから始まる

とは、生命保険のセールスパーソンで世界一となったE・G・レターマンの言葉です。お客に断られたときから交渉のスタートと思って間違いないのです。お客の「NO」は単なる挨拶言葉と思ってよいのです。

営業に「向いていない人の特徴」「向いている人の特徴」

「ま、なんとかなるでしょう」と考えるのはダメ営業

セールスパーソンの多くはKDD(勘・度胸・出たとこ勝負)で仕事をしています。もちろん取引に勘は必要ですし、いざというときの度胸も大事です。でもそればかりに頼っていては限界があります。

「ま、なんとかなるでしょう」
「俺が頼めばなんとかなるさ」
「後は現場で臨機応変に対応しよう」

こうした営業のスタイルでは、なかなかよい成果を収めることはできません。交渉は相手の心を読む心理戦です。お客の心理を理解すること。そして、事前の準備と交渉の場で使うさまざまな戦術を学ぶことで、あなたのセールスは飛躍的に向上します。

トップ営業は売ることを目的にしない

できるセールスパーソンは見た目だけではわかりません。いわゆる体育会系の元気のある人もいれば、逆に口数が少なくどう見てもトップセールスには見えない人など、実にさまざまなタイプのセールスパーソンがいます。

しかし、よくよく話を聞いてみると、彼らにはひとつの共通点があります。それは、売ることが第一の目的になっていないということです。まずはお互いをよく知り合い、良い人間関係を作り、その結果として売り上げが上がってくる、ということを経験的に理解しているのです。

アメリカの社会心理学者ロバート・ザイアンスの「熟知性の法則」という法則があります。

人は知らない人に対して、攻撃的、批判的、冷淡になる傾向がある

例えば、夜遅くまで仕事をして電車で帰宅している途中、隣に知らない人が座ってきたとします。その人はかなりお酒が入っていて、お酒のにおいをプンプンさせています。しかも顔が真っ青です。気分が悪そうで、今にも吐きそうな感じです。こんな状況にあったら、正直いって早く自分の降りる駅についてこの人から離れたい、と思います。しかし、それがあなたの親しい人だったらどうでしょう。「どうしたんですか、大丈夫ですか。とりあえず、次の駅で降りて少し休みましょう」と声を掛けるはずです。

つまり、相手を知っているか、知らないかであなたの態度は180度違ってくるということです。

訪問営業のスキルを高めるポイント

訪問時間ではなく、訪問回数を増やす

訪問営業を成功させるポイントは、とにかくお客を数多く訪問して、お客を知り、自分を知ってもらうことです。そして、親しい間柄になることです。一度しか会ったことのないセールパーソンより、100回会ったことのあるセールパーソンに人は親近感を覚えますし、同じ商品なら後者のセールパーソンから買いたいと思うものです。

ですから、「近くまで来たので寄らせてもらいました」「新製品のパンフレットが出来たので真っ先にお持ちしました」と言って、とにかくお客と会う機会を増やしてください。1ヶ月に1回30分の訪問をするより、5分の訪問を1ヶ月に6回行うほうが、接触頻度が高く有効です。要は訪問時間ではなく、訪問回数なのです。

しかし、どうしても訪問することができない場合は、それ以外の方法で接触頻度を高めるようにします。

例えば、頻繁に電話をしたり、何かあるたびにメールをして、相手と直接ではないにしてもコミュニケーションを取るようにします。特に相手が知りたい情報などを入手したらすぐに連絡するようにすれば、相手との距離もいっそう近くなるでしょう。季節のイベントなどに合わせてお歳暮、お中元、クリスマスカードを送ったりすることも効果的です。

また、こんな話もあります。ある婚約していたカップルが、彼が北海道へ転勤になったため、東京と北海道とに離れ離れになってしまいました。彼は、北海道から毎日彼女に速達のラブレターを書き、その手紙は、郵便局の配達員によって毎日彼女に届けられたのです。そして、なんと1年後、彼女はその配達員と結婚したということです。遠くにいてなかなか会えない人より、毎日会う人を好きになるということなのです。

人間的な側面を知ってもらう

「いや、実は母親と同居しているんだけど、その母親が認知症で大変でね。夜中に突然起きだしたり、大声出したり、そのたびに起こされてね。でも、自分の母親だし、これまで苦労して俺のこと育ててくれたわけだから、できるだけのことはしてやりたいんだ」こうした部長の人間的側面を知ることによって、あ、部長って本当はお母さん思いの優しい人なんだ、と見る目が変わります。少し好意を持ちます。翌日、またいつものように怒鳴られたとしても、部長に対してこれまでとは違った感じを受けるはずです。

このように、人は相手の人間的な側面、つまりプライベートな面を知ることによって、安心感を覚え、好意を持つものなのです。

ではいったい、どんなことを自己開示すればいいのでしょうか。失敗談、悩み、夢、家庭のことなどがよいでしょう。「昔こんなヘマをしたことがある」と聞いた部下は、「意外でした。課長でもそんな失敗あるんですね」となります。逆に、自慢話は避けるべきです。自慢話を聞いて喜ぶ人はいません、かえって反発を受けることになります。

それからもう一つ。お客とあなたとの“共感ゾーン”を広げることで、お互いの良好な関係を築くことができます。どういうことかというと、例えば今でも付き合いのある学生時代の親友を一人思い出してください。おそらくその親友とあなたは、同じ学校で、同じクラス、同じ年齢、同じクラブ活動をしていた人ではないでしょうか。

社会人であれば誰しも、仕事の面とそれ以外の面とを持っています。人間的側面とは仕事以外の面のことであり、家族のこと、趣味のこと、ものの考え方、信条、価値観といったプライベートな側面のことです。こうしたプライベートな面を知ると、人はその人に好意を持つのです。

例えば、普段から怒りっぽくて、いつもイライラしておっかない上司と初めて飲みに行ったとします。「君、今日飲みに行こう」当然、断ることなどできません。「はい部長、お供します」飲み始めは仕事の話からスタートです。「君ね、あの企画書はどうにかならないのか。あれじゃダメだよ、お客さんに出せない。やり直しだな」そうこうしているうちに、だんだん部長も自分のことを語り始めるわけです。

つまり、私たちは同じ面が多い人が好きなのです、同類項が好きなのです。それを“共感ゾーン”と呼んでいます。この共感ゾーンが広ければ広いほど人は親しくなることができます。

ですから、お客との面談の際には、共感ゾーンを広げることです。野球やゴルフなどの趣味の話でもいいでしょう。出身地、出身校、あるいは息子がいる、娘がいるなど、とにかくお客との共通点を探してお客と親しくなることです。

参考:営業の心得とは?飛び込み営業や新入社員に必要な考え方

営業をうまく進めるトークのコツ

交渉の場で使われているセールステクニックはさまざまあります。お客の反論に対する営業トークとして、特に有効な7つの方法を紹介します。あなたの商品、サービスにあてはめて、ぜひ実践してください。

売れる営業トーク7つのコツ
  • 高値設定法
  • セルダウン法
  • 高値再提案法
  • 折り返し電話法
  • 業界慣習法
  • 雲の上法
  • セルアップ法

営業トーク1「高値設定法」

バイヤーは、ともかくまけさせたいと思っていますから、セールスパーソンが言う通りに値引きすれば、バイヤーとしては大いに自己満足するのです。

従って、セールスパーソンは見積もりの段階で、少し高めに金額を設定しておき、その後の交渉で値引きをすればよいのです。280万円欲しかったら、初めの見積もりを320万円にしておき、その後、値引きを要求されたら、40万円引くという具合です。

「わかりました。そこまでおっしゃるなら、今回だけですよ。40万円お引きして、280万円で結構です」と、バイヤーの要求通りに値引きすれば、お互い満足のいく結果が得られます。

セールスパーソンとしては、当初の予定通り280万円で契約することができるし、バイヤーとしては40万円の値引きに成功したことになります。相手に花を持たせ、自分は実を取る方法です。

営業トーク2「セルダウン法」

例えば、あなたがリフォーム会社のセールスパーソンで、お客に対して240万円の見積書を出したとします。すると、「高いですね、実は予算が200万円しかないのです。どうでしょうか、40万円まけて、ちょうど200万円にしてもらえませんか?」と、値引き要求を受けました。

そのとき、「そうですか、わかりました。なんとか値引きする方向で考えてみます」と受けてしまってはいけません。「わかりました、200万円ですね、それでは仕様が少し変わります」と言って、壁紙の素材、床材など内容を極端に落としたものを持っていくのです。お客はその差に驚き、「こんなに違うんですね、やっぱり前のやつでいきましょう。240万円の仕様でお願いします」と言ってくるはずです。

単純に値引きするのはよくありません。値段は下げられますが、その分質も下がりますと主張するわけです。初めにグレードの高い仕様を見ているお客にとって、大幅な仕様ダウンは避けたいと思うはずです。

こうしたお客の心理をついた方法をセルダウン法といいます。成功させるコツは、まず初めにお客のニーズをしっかりと聞き出した上で、ニーズに合っているものか、またはワンランク上のグレードのものを提案することです。

営業トーク3「高値再提案法」

初めに言っておきますが、このテクニックは非常に高度です。ですから、使うときは十分なリハーサルをしてから臨んでください。

例えば、ソフト開発の仕事を350万円で見積もりを出したとします。お客は「高すぎるよ、もっと安くなるでしょ。これじゃダメだな」と言ってきます。セールスパーソンは「ギリギリで300万円までなら何とかしましょう」と主張します。お客は「それでも高いよ。250万円じゃないとダメだな」と言ってきます。そこで、お客がどうしても主張を譲らない場合、セールスパーソンが取る方法です。

「わかりました。私としては250万円はムリだと思いますけれども、ともかく会社へ帰って上司と相談してみます。会社の方針として問題なければ結構です。お約束はできませんが、なんとかしてみます。明日お答えします」と返事をして一旦引き揚げるのです。

そして翌日、お客に対してあなたはこう言います。「誠に申し訳ありません。実は昨日お出しした見積もりですが、私の計算ミスがあり、誤ったものを提出してしまいました。本当に申し訳ございません。こちらが新しい見積もりです」と言って340万円と書かれた見積書をお客に見せます。

「困るよ、いまさらそんなこと言われても。300万円以上は出せないよ」

つまり、この時点で250万円という話はもうなくなっているのです。これは、ニセ取消法とも言って、相手の提案もしくは強引さにズルズル押し切られそうなときに使うと効果的なテクニックなのです。しかし、かなりの演技力が要求されますし、計算ミスなどする会社であるという信用度にも影響する方法ですから、くれぐれも慎重に使ってください。

営業トーク4「折り返し電話法」

お客からの電話で、次のように言われることがあります。

「今、請求書を受け取りました。ちょっと高いですね。10%引きの90万くらいになりませんか?」

このような場合は、「たいへん申し訳ありません。今ちょっと手が放せませんので、こちらからすぐに折り返しお電話いたします」と言って、いったん電話を切るべきなのです。これは、電話代がどうこういうのではありません。

相手は準備万端整えて、電話をしてくるものです。最初にこう言って、こういうふうに説得しよう、反論されたらこう切り返そうと。しかし、こちらは突然受けることになり、当然オロオロしてしまいます。そこで、一旦電話を切ってからよく作戦を立て、改めて電話し直したほうがよいのです。

あなた主導で交渉したければ、まずはじっくり考える作戦タイムを作りましょう。

営業トーク5「業界慣習法」

業界慣習法とは、その業界に疎い買い手に対して「このやり方が業界の常識で、通常行われている方法です」と言って納得してもらう戦術のことです。

つまり、「われわれの業界では、この方法以外では受け入れられません」という言外の意味を持っているので、かなり効果的な戦術です。しかも、ほとんどリスクがないのに効果は絶大です。

この一番よい例が、業界で標準的に行われている共通契約書です。一般性のある共通契約書のようなものをわざわざ変更して契約する人はあまりいません。他人はこれで普通に契約しているという意味で、プレッシャーにもなります。

例えば、リフォーム業者が水回り工事を請け負ったとします。リフォーム業者は、工事の前に、お客に次のように言えばよいのです。「支払条件は工事開始時に30%、工事が半分済んだところで60%、工事完了時に残りの10%をお願いします」お客が「それはムリだよ。とても受け入れられない」と言ってきたら、リフォーム業者は「これは業界の標準的な支払条件です」と言って、お客に標準契約書を見せればよいのです。

営業トーク6「雲の上法」

お客が強硬に値下げを要求してきたときに使える方法が、この雲の上法です。一種の責任転嫁法といってもよいでしょう。

例えば、あなたが100万円定価のものを1割引の90万円で見積書を出したとします。お客は強硬に2割引を主張します。つまり、80万円にせよ、と言い張っているのです。この場合、いくら言い争っても平行線をたどるでしょう。その場合は、一旦引き下がるほかありません。

「わかりました。とりあえず会社へ戻ります。部長と検討して、明日お返事いたします」と言って会社に戻るのです。翌日、セールスパーソンはお客に次のように言います。「実は2割引をするには部長の決裁だけでなく、本部長の承認を必要とします。しかし、あいにく本部長が海外出張中でいないんですよ」あるいは、「実は2割引をするには社内の原価委員会が承認する必要があるんです。次の原価委員会が開かれるのが来月の15日なので、あと3週間も待たねばなりません。3週間お待ちいただいてもよいのですが、その時点で否決されるかもしれませんので、私も困っているのです」と言えばよいのです。

するとお客は、「そんな、3週間も待てないよ、今すぐ決めてくれ」と言うでしょう。そこであなたは、「私は是非決めたいのですが、私には決められません。どうでしょうか、とりあえず1割引で納品させてください。その後3週間後に、原価委員会に諮ってみます。なんとか2割引になりますよう、私もプッシュします」と答えるのです。

そして納品だけさせてもらい、3週間後に「すみません、ダメでした。やはり原価委員会で否認されてしまいました」と言うのです。

別に原価委員会でなくてもよいのです。常務会、役員会等、ともかく、会社のウンと上の人もしくは委員会のような名前を使うのです。

つまり、私では決められません。雲の上の人が決裁しなければならない、でも雲の上の人はなかなかつかまらないし、委員会もなかなか開催されない。私も実は困っているのです、というように実は自分も、ある種の被害者なのだ、と主張する方法です。

営業トーク7「セルアップ法」

セルアップ法とは、セルダウン法とは反対に、より高いものや付加的なものを提案する方法です。

例えば、ボールペンの注文を受けたとき、本体は安く価格を設定しておき、化粧箱や包装紙、リボンやのし紙を追加的に提案し、本体を安くした分これら付随的なもので稼ぐというものです。一種の抱き合わせ販売のようなものです。

それから、もっと利幅の大きい豪華なものを勧めるケースもあるでしょう。「実は、こちらのボールペンの表面に本皮を使用した高級品もあります。価格は1.5倍になりますが、とても今人気です」

身近なところでいえば、自動車の販売もそうです。あなたがお客として、自動車ディーラーを訪れたとしましょう。店頭で表示されているのはあくまで本体価格です。「本体価格200万円」とあるからといって200万円で済むわけではありません。いざ、説明を聞こうとテーブルにつけば、オプションの紹介が始まるわけです。

「カーナビはいくつか種類があります」
「それからエアロパーツはこちらがお勧めです」
「アルミホイールはぜひこちらをお付けください」

全部あわせたら結局300万円なんてこともあります。つまり、このオプションで稼ぐわけです。

参考:売れる営業トーク7つのコツとは?具体例をもとに解説

営業スキルの向上に役立つ本

この記事内容は箱田忠昭さんの書籍『新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ』をもとに編集しています。記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。

「高いなぁ」と言われても
売れる営業のしかけ


新版「高いなぁ」と言われても売れる営業のしかけ

営業に行くとお客さんに必ず言われるのが「高いなぁ、もっと安くならないの?」という一言。そうなると値下げしてでも売れればいいと思ってしまうかもしれませんが、大きな間違いです。 どんなときでも、より高く売るのが営業マンの仕事です。本書では、お客の心理を利用して、値切りを封じ込める「提案営業のやり方」と「価格交渉のスキル」を紹介しています。

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箱田忠昭

慶應義塾大学商学部卒、ミネソタ大学大学院修了。日本コカコーラの広告部マネージャー、エスティ・ローダーのマーケティング部長、パルファン・イヴ・サンローラン日本支社長を歴任。その間、米国で著名な話し方、リーダーシップ、人間関係のセミナーであるデ−ル・カーネギー・コース公認インストラクターとしてビジネスマンの指導にあたる。昭和58年、インサイトラーニング株式会社を設立。現在代表取締役。プレゼンテーション、ネゴシエーション、セールス、時間管理等のコミュニケーションに関する専門家として、企業人の教育研修に専念。また、経営者から新入社員を対象とした講演活動を行う。鎌倉の報国寺参禅道場にて坐禅修行20数年。年間300回近い講演、研修をこなし、著書は70冊を超える。