何らかの問題に直面したとき、思いつきに近い解決策で対応して、まずい事態に陥ってしまった、完全に失敗してしまった、ということはないでしょうか。

正しく問題解決を行うためには、現状を正確に理解し、問題の原因を見極め、効果的な打ち手(解決策)まで考え抜き、実行するというアプローチを取ることが重要です。

そこで今回は、データ分析からの実践的なマーケティング・コンサルティングを得意とするKUROCO(株式会社クロスメディア・コンサルティング)代表の齋藤健太さんの著書『問題解決のためのデータ分析』から一部を抜粋し、”正しい問題解決のアプローチ”をご紹介します。

問題解決4つのステップ

正しく問題解決を行うためには、以下のように、現状を正確に理解し、問題の原因を見極め、効果的な打ち手(解決策)まで考え抜き、実行するというアプローチを取ることが重要です。

問題解決のアプローチ

たとえば「会社全体の売上が下がってきた」という問題に直面したとします。ただ「売上が下がってきた」という現状を理解しただけでは、何も変わりません。どんな商品が売れなくなっているのか、なぜ売れていないのか、原因を見極め、効果的な手を打つことが重要です。

つまり、ビジネスパーソンに求められる問題解決では、次のような一連の流れを実行できてはじめて「問題解決ができた」といえるのです。

  1. [現状の理解]問題が発生している状況を正確に理解し、
  2. [原因の見極め]問題の発生している根本原因を見極め、
  3. [打ち手の決定]効果的な打ち手を導き
  4. [実行]打ち手を実行に移し、必要に応じ打ち手を修正していく

例えば、上記でいう「売上が下がってきた」という問題を解決するためには、

  1. 売上が下がっているという問題が発生している状況を正確に理解し、
  2. なぜ売上が下がってきているのか、なぜ売上を上げることができないのか、問題の発生している根本原因を見極め、
  3. どうすれば売上を下げ止めることができるのか、効果的な打ち手を導き
  4. 売上を下げ止めていくための打ち手を実行に移し、必要に応じて打ち手を修正していく

という流れとなります。

「そんな面倒なことをしなくても、今までの経験があるから大丈夫! 」と思われるかもしれませんが、“思いつき”の解決策をひとつひとつ潰していくやり方では、アプローチのすべてを一気通貫で行うのは困難でしょう。

また、変化の激しい現在の経済環境では、今までの経験や勘は通じにくくなっています。

もちろん、その道何十年の方であれば経験則でカバーできることも多いかもしれませんが、それだけでは環境の変化にはついていけません。

一番問題なのは「企業全体の売上が下がってきた」という状況に対し「じゃあ、営業部員に喝を入れてもっとお客様への営業を増やそう」といって、原因の特定もせずに、場当たり的に打ち手を実行することです。

実は客数が落ち込んでいるのではなく客単価が落ち込んでいるのかもしれません。そしてその客単価が落ちている要因は商品力の低下にあるのかもしれません。

みなさんも、原因を特定しそれを潰すことが重要であるにもかかわらず、思いつきだけで打ち手を実行してしまうケースがよくあるのではないでしょうか。

問題解決のアプローチで一番大切なことは、打ち手を決定するために問題の原因を特定することです。原因を特定することができれば、必ず壁を打ち破る方法も考え出せるはずなのです。

それでは問題解決のアプローチを紐解いていきましょう。

( 1 ) 現状の理解

起こっている現象をしっかりと理解することから始めます。例えば「売上減少」という現象が起こっている場合、

  • 昨年度と比較していくら減少しているのか、何%減少しているのか
  • 客数で減少しているのか、客単価が減少しているのか
  • どの商品の売上が減少しているのか、どの営業担当者で売上が減少しているのか

など、「今、起こっている現象」を浮き彫りにすることが必要になります。

( 2 ) 原因の見極め

どんな問題でも、原因にはいくつか心当たりがあることでしょう。ビジネスにおいては、問題が複雑に絡み合っていることも多いです。

問題を分解し、考えられる原因を洗い出し、根本的な原因がどこにあるのか仮説を立て、それを裏づけるデータ分析を行うことで、原因が導き出されます。この原因を見極める部分が、問題解決をする上で最も重要です。

問題を分解し、考えられる原因を洗い出し、根本的な原因がどこにあるのか仮説を立て、それを裏付けるデータ分析を行うことで、原因が導き出されます。

今回の例のような「売上減少」という現象が生じている場合、次の4つの手順でこれを行います。

① 可能性のある原因の洗い出し

売上減少の原因として「来店客が少ない」「リピーターが少ない」「商品の品質が低い」「値段が高い」「店員に元気がない」・・・など、すぐにいくつか挙げられると思います。

思いつく限りすべて挙げることが重要です。

② 洗い出した原因の仮説

洗い出した原因の中で、状況をしっかりと見据えていくと、それらの多くは原因ではなく現象(結果)であるケースが少なくないのです。

原因と思って挙げたものをよく見ると、それぞれが相関関係にあることがわかります。

たとえば「値段が高い」は相対的に見ると「商品の品質が低い」ことや「希少性が低い」などの理由になります。高品質またはなかなか手に入れられない商品であれば、「値段が高い」という評価にはならないでしょう。

また、「来店客・リピーターが少ない」のは、価格の割に商品やサービスの品質が低いことになりますし、店員に元気がないのは、そもそもの問題である「売上が上がらない」からです。

このように、ある程度経験に基づくもので構わないので、洗い出した原因の中から可能性の高い仮説を立てます。

③ 分析方法の決定

次に、仮説に基づいて分析方法を決定します。

たとえば、「顧客のニーズに合った商品を提供できていないことがそもそもの原因で客数が減って売上減少が起こっている」という仮説があるとします。

その場合、来店頻度や購入金額別に顧客をセグメント化(区分)し、客数の減少しているセグメントにおいて顧客が購入している商品販売実績を時系列で分析します。それによって、どの顧客層が減っており、その原因としてどんな商品が顧客ニーズと乖離しているかが導き出せるでしょう。

このようにして、どのような分析をすればよいのか、「分析の設計」をします。

④ データ分析

実際に設計した分析方法に基づきデータ分析をしていき、 ②洗い出した原因の仮説で立てた仮説が正しいかどうか検証していきます。もし仮説が間違っていた場合、②に戻って繰り返していきます。

この① 〜 ④を繰り返すことで、原因を見極めることができます。

( 3 ) 打ち手の決定

見極めた原因に対して、その原因を改善するための打ち手を決めます。原因を見極めた段階で、打ち手も同時に見えてくることがほとんどです。

たとえば、価格の割に品質が低いことがそもそもの原因で来店客・リピーターが減って売上減少が起こっているということであれば、

  • 商品の価格帯の見直し
  • 競合他社に負けない商品開発(高付加価値商品の開発)

などが具体的な打ち手となるでしょう。

前者は主にさまざまな商品を仕入れるような小売業の業態・企業の打ち手になるでしょうし、後者は主にメーカーが取るような打ち手となるでしょう。

( 4 ) 実行

そして、いよいよ打ち手の実行です。計画をたてるだけでは問題解決になりません。実行して成果が出てはじめて問題解決となるのです。また、打ち手の実行後にもデータ分析は重要な役割を担います。

実際に打ち手の効果がどの程度あったのか、仮説通りの成果は出せたのか、打ち手の実行前後での違いや打ち手の効果検証を行う際にもデータ分析は重宝します。

PDCAを回すことが重要

さて、打ち手を実行しました。しかし、終わりではありません。その打ち手が正しかったのかどうか判断し、もし間違っていた、あるいは当初想定していたほどの効果が出なかった場合、修正していく必要があります。

この一連の流れを「PDCAサイクルを回す」と言います。

計画を立てて(Plan)実行し(Do)、結果を評価して(Check)、評価に基づき改善して(Act)次のステップへと進めていくことはとても重要です。

日々問題に立ち向かっているビジネスパーソンにとって、効率よくスケジューリングして業務を実行してためにもPDCAサイクルを回すことは大切なのです。

データ分析についても同様のことが言えます。

課題を見極めて仮説を洗い出し、データ分析により仮説思考をしながら打ち手を構築し、実行に移す。

打ち手の構築までがPlanで、実行がDoです。しかし、ここまでだけではやりっ放しになってしまうので、しっかりと打ち手の評価、つまりCheckをした上で、改善が必要であればActすることが大切です。

データ分析により、ある程度精度の高い打ち手は構築できますが、それでも条件や環境変化ゆえに想定した成果に結びつかないこともあります。

そのためにも、PDCAを回すことによって常に最適解を求めていくことが重要なのです。

【出典】齋藤健太.問題解決のためのデータ分析