この記事では、マネジメントクラブの齋藤健太が実際にコンサルティングした「ECサイトを運営している小売業A社」の事例をもとにデータ分析の手法を解説していきます。

商品名などは伏せているほか、実態から大きく外れない範囲で数値データを加工していますが、実際に近いケースを扱うことで、この記事をお読みのみなさんが現実感を持ちやすく、現場のニーズを当てはめやすいものとなるよう構成しています。

齋藤健太
この記事を書いた人
齋藤健太
株式会社クロスメディア・コンサルティング代表 / 『問題解決のためのデータ分析』著者

ECサイトは「顧客の行動」が把握しやすい

企業・事業活動をしていくにあたって、今や自社のウェブサイトの運用は欠かすことのできない業務です。「いかにして自社サイトへの集客を増やし、そこからの問い合わせや資料請求、あるいは購買へとつなげるか」が、売上・利益を底上げしていくために必要不可欠な要素となっています。

今回は、集客から購買までのプロセスが比較的わかりやすいEC(電子商取引)サイトの事例を使って、ウェブサイトを運営していく場合のデータ分析方法をお話しします。

ECサイトも実店舗と同様、お客様が来店して、お店の中を回遊し、商品を手に取り購買する、というフローになります。

実店舗では、何人のお客様が来店して、どの程度回遊して、実際に購入に至ったのは何人いたのかというデータを取るためには、かなりの労力、コストをかける必要があります。しかしECサイトでは、それがコストをかけず、比較的簡単に、正確性も高く把握することができます

そのためには最低限、自社のECサイトを、Googleが提供するウェブページのアクセス解析サービス「Googleアナリティクス」に登録する必要があります。おそらくECサイトを運営している方がGoogleアナリティクスを知らないということは少ないと思いますが、この設定だけは必ず行いましょう。Googleアナリティクスの登録・設定方法については、ここでは省きますが、インターネット上にたくさん出ていますので、まだの方は、まずはご自身で設定してみてください。

どの数字に課題があるかを見極める

事例に入る前に、少しだけ、ウェブサイト特有のキーワードについて解説しておきます。

ECサイトの売上は、次の式で成り立ちます。

ECサイトの売上
売上高 = IMP × CTR × CVR × 顧客単価

IMPとは?

IMPとは「インプレッション(露出)」を表します。どれだけインターネットの世界に自社のサイトが表示されたのか、という指標です。実店舗でいえば、どれだけの人の目に止まったか、ということになります。

実際の店舗であれば、店舗の前を通る人が見た数だけでなく、路面に出している看板やフリーペーパー等への広告なども入ります。ECサイトだと、検索結果で表示される回数だけでなく、人が大勢集まるウェブサイトでの広告や、誰かのブログやSNSで発信された情報などもすべて入ってきます。

CTRとは?

CTRとは「クリック率」です。その名の通り、表示された自社サイトの検索結果やバナーに対して、どれだけの割合の人がクリックしたか、ということを表す数値です。実店舗でいえば、実際に店舗の中に入った割合になります。

CVRとは?

そしてCVRとは「成約率」の意味です。クリックしてECサイトに入ってきた人のうち、どの程度の割合の人が実際に購入に至ったのか、を表します。

ECサイトではCVRは実際に購入した人の割合を計算することが多いですが、ウェブサイト上で直接売買をしない、たとえば不動産投資や生命保険、B to Bビジネスなどでは、このCVRを資料請求やセミナー申し込み、問い合わせなどに設定することもあります。

ECサイトのデータ分析をする際は、IMP、CTR、CVR、顧客単価それぞれの数字がどのように推移しているのか、どの数字に課題がありそうかを見極めることで、効果的な打ち手へとつなげることができます。

データ分析の実例 / ECサイトの売上増加

ここからは、以下の実例をもとにデータ分析から打ち手の検討までの流れを解説していきます。

Case Study
業種

小売業 A社
課題
自社でECサイトを運営しているが、サイト上での商品の売り上げが伸び悩んでいる

A社のECサイトにおける課題を把握するために、以下のデータ分析のアプローチに沿って、現状を分析していきます。

データ分析のアプローチ
  1. 課題の見極め(目的の明確化)
  2. 仮説の洗い出しと絞り込み
  3. 分析方法の定義
  4. 情報(データ)の収集
  5. 分析

参考:データ分析の効果的なアプローチ

目的の明確化

今回の目的は「A社ECサイトの売上増加」です。

仮説の洗い出しと絞り込み

現状の売上を要素分解して、各要素における数値を把握できていないために、適切な施策を実施できていません。まずは売上を要素分解して、各数値を分析します〈図表1〉。

図表1 売上を要素分解する売上を要素分解する

課題や仮説を洗い出すための考え方については、「誰でもできる問題解決に欠かせないロジカルシンキングの手法」を参照してください。

分析方法の定義

以下の2つの視点で分析を行います。

1.各要素の数値の把握
→ ECサイトにおける現状の各要素における数値の実態を明確にする
2.各要素に必要な施策の整理
→ 競合他社調査含めて、各要素における数値を上げるために必要な施策を整理する

情報(データ)の収集

「各要素の数値の把握」「各要素に必要な施策の整理」のため、以下のデータを収集します。

  • 自社ECサイトのGoogleアナリティクスデータ
  • 自社ECサイトでの売上関連データ
  • 要素分解した各数値を上げるための施策調査

分析 / 売上が伸び悩んでいる本当の原因とは?

ここからは、実際にデータを整理し分析していきます。

まずはA社ECサイトの現状の大きな傾向をつかむため、直近3年分の月次での売上、ECサイトへの訪問者数、購入者数、顧客単価、CVRを整理してみます。

図表2を見ると、2017年においては、ECサイトへの訪問者数が増加していることがわかります。ただ、その一方でCVRが減少しているので、集客数は増えているものの非効率となっているのが、2017年の状況です。

図表2 A社EC サイトの売上関連データ(月次)

2018年においては、2017年と逆の状況になっていることがわかります。訪問者数は減少していますが、CVRが増加しており、効率が上がっています

年度合計で見ると、さらによくわかります〈図表3〉。

図表3 A社EC サイトの売上関連データ(年度合計)

2016年度と2017年度を比較すると、売上高は同程度ですが、その中身は大きく異なります。2017年度は訪問者数が大きく増加していますが、CVRが低下しています。

これが2018年度になると、CVRが大幅に増加したことにより購入者数が増加します。結果として売上高も2017年度を大きく上回っています。しかし、その一方でECサイトへの訪問者数が減少していることがわかります。

また、もうひとつ、2016年度以降、徐々に顧客単価が減少している傾向も見られます。

打ち手の検討 / 「訪問者数」を増やし「顧客単価」を上げる

これらの結果をもとに、今後売上増加を目指していくための適切な施策を検討していきます。

「リピートの促進」と「ウェブ広告の活用」

まずは訪問者数です。2017年度より減少しているため、再度上げられる余地はあると考えられます。

コストをかけない方法としては、既存のお客様にリピートしてもらうことです。メールマガジンやLINE、Facebook等のSNS会員に対する発信により、リピートを促します。

図表4を見てわかる通り、PCと比べてスマートフォンからの訪問者数が年々増えていることからも、スマホユーザーが使うツールでのコミュニケーションは有効と想定されます。

図表4 A社EC サイトにおけるデバイス別の訪問者数推移(月次)

デバイス別の訪問者数についても、Googleアナリティクスで簡単に取得できます。

新規の訪問者数を増やすためには、コストをかける必要が出てきます。

最近では、自社の顧客が求めているような記事を増やすことでウェブサイトを強化する「コンテンツマーケティング」によるSEO対策も増えてきています。ただ、この方法は時間がかかるため、中長期的な訪問者数増加にはいいのですが、短期的に訪問者数を増やすには、まだまだウェブ広告が有効です。

リスティング広告はもちろんですが、FacebookやTwitter、InstagramといったSNS広告、アフィリエイト広告など、さまざまな方法があるため、予算を決めた上で、自社に合った、費用対効果の高い広告手法を選定していく必要があります。

そのためには、日々、運用しながら各広告手法における効果を分析・検証して改善していくこと、PDCAを回していくことが重要です。

「複数商品の購入」と「単価の高い商品の購入」

そして顧客単価です。こちらはサイト内でいかに複数商品を購入してもらうか、あるいは単価の高い商品を購入してもらうかを考えます。

たとえば、競合他社に負けない品揃えの強化や、単価の高い商品のおすすめ、レコメンド機能などにより顧客単価を上げていくことができます。

以上の分析により、A社ECサイトの打ち手の方向性を定めることができました。

このように、ウェブサイトは、実店舗以上にデータ分析するために必要な数値情報を得ることができますし、日々、その数値を確認し、施策の検証を行うことができます。

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【出典】齋藤健太問題解決のためのデータ分析