この記事では、マネジメントクラブの齋藤健太が実際にコンサルティングした「ECサイトを運営している食品関連D社」の事例をもとにデータ分析に基づく予算作成の手順を解説していきます。

商品名などは伏せているほか、実態から大きく外れない範囲で数値データを加工していますが、実際に近いケースを扱うことで、この記事をお読みのみなさんが現実感を持ちやすく、現場のニーズを当てはめやすいものとなるよう構成しています。

齋藤健太
この記事を書いた人
齋藤健太
株式会社クロスメディア・コンサルティング代表 / 『問題解決のためのデータ分析』著者

売上を増加させるデータ分析の進め方

売上増加を目的としたデータ分析は、使用するセグメントを適切に選択していくことが重要です。

基本的にはこの3つの軸で考えていくことで、改善すべきポイントを見つけることができます。

  • 商品にバラつきがある場合は「商品軸」
  • 店舗にバラつきがある場合は「店舗軸」
  • 顧客にバラつきがある場合は「顧客軸」

どこの売上にバラつきがあり、課題があるかによってセグメントを選択することが有用なデータ分析につながります。

この記事で紹介する「食品関連D社」の例では顧客軸でデータ分析を行うことで精度の高い予算を作成しています。

データ分析の実例 /顧客別の売上傾向から予算を組み立てる

ここからは、以下の実例をもとにデータ分析から予算作成までの流れを解説していきます。

Case Study
業種

食品関連 D社
現状
3年前からECサイトを立ち上げ、順調に売り上げを伸ばしてきたが、最近、売り上げの増加率が鈍化している。
課題
組みたい数値計画の策定。新規の顧客を増やすことで、利益を今年度の120%に設定して予算を作成する。

D社の課題を把握するために、以下のデータ分析のアプローチに沿って、現状を分析していきます。

データ分析のアプローチ
  1. 目的の明確化
  2. 仮説の洗い出しと絞り込み
  3. 分析方法の定義
  4. 情報(データ)の収集
  5. 分析

参考:データ分析の効果的なアプローチ

目的の明確化

このケースは、「来年度のEC事業部の数値計画の策定」が目的です。

仮説の洗い出しと絞り込み

通常では、売上増加のための施策を客数と客単価に分けて考えていくのですが、今回は新規顧客を増やすことで利益を上げたいと考えているので、「新規顧客数の増加」を中心に仮説を洗い出しました〈図表1〉。

特に顧客属性別の購入傾向を見極めることで、売上増加に向けた計画を立てられないかと仮説を立てました。

図表1 このケースにおける仮説

分析方法の定義

以下の2つの視点で分析を行います。

1.顧客別の売上状況
→ 顧客属性別に商品の購入傾向を分析することで、買い方を明確にする
2.予算計画の策定
→ 顧客別の買い方をもとに、予算を組み立てる

情報(データ)の収集

「顧客別の売上状況」を把握し、「予算計画を策定」するために、「顧客別の商品購入状況」のデータを収集します。

分析 /現状分析により顧客傾向を明らかにする

ここからは、実際にデータを整理し分析していきます。

ECサイトの最大のメリットは、「顧客情報」が細かく取れるところにあります。楽天市場やYahoo!ショッピングといったモール型店舗では顧客情報を取れませんが、自社ウェブサイトであれば、会員登録をしてもらうことにより、詳しい購入者の情報が取れます。

D社においても、自社ウェブサイトで顧客情報を取得していますので、顧客情報をもとにした「顧客軸」でデータ分析をし、施策の構築を試みました。

まずは、今後の売上計画を立てようと考え、D社の販売データ〈図表2〉をまとめました。

図表2 D社の販売データ
D社で管理している顧客情報(属性)は「都道府県」「年齢」「性別」「職業」になります。

データ分析に基づいた計画を立てるために、顧客属性ごとの「買い方」を分析することにしました。顧客属性ごとに「買い方」の傾向が見られた場合には、その傾向に沿ったアプローチが可能になるからです。

図表3は、各都道府県を7エリアにまとめ、商品カテゴリごとの構成比を出したものです。

図表3 エリア別の商品構成

これを見ると、エリアごとでは商品カテゴリの構成比はほぼ変わらないことがわかります。ちなみに、表の最下部にある売上構成比は、売上高合計を100%とした際のエリア別の構成比となります(図表4~6も同様に、表の最下部の売上構成比は売上高合計を100%とした際のセグメント別構成比となります)。

次に、図表4は、購入者の年代別の商品カテゴリ構成を表したものです。また図表5は、同様に性別での商品カテゴリ構成を表したものになります。

図表4 年代別の商品構成
図表5 性別の商品構成

どちらも購買層の偏りや特徴は見られません。

続いて、職業別の商品構成〈図表6〉を見てみると、職業別に購買者の偏りが大きく異なることがわかります。

図表6 職業別の商品構成

職業ごとにライフスタイルは大きく違ってきますので、そのライフスタイルによって買い方が変わってくるようです。

職業別の粗利率を分析する

いくら売上を上げても、儲からなければ意味がありません。予算計画を立てるときには、売上高だけでなく利益(粗利)ベースでの計画が求められます。

まずは商品カテゴリごとの粗利率〈図表7〉を求めました。

図表7 商品カテゴリ別の粗利益率

また、図表2の販売データをもとに、商品カテゴリ別の粗利益率を職業別の商品カテゴリ売上高に掛け合わせることで、職業別の粗利益率を算出します〈図表8〉。

図表8 職業別の粗利率

データに基づく予算の作成

ここまでできれば準備万端です。粗利額が前年対比20%増になるように、職業別に必要な粗利および売上高を算出しましょう。

ソルバーを使って、職業別の計画値を算出します。計画値を策定するにあたっては、前提条件が必要となります。今回のケースでの前提条件は、次の通りです。

  • 粗利を1.2倍にする
    → 今期の粗利総計が「34,165」なので、来期計画値は「40,998」となります。
  • どの職業も今期の売上高を割らない
  • メイン顧客層である主婦・会社員で売上高および粗利を稼いでいく
    → 売上全体の80%が、主婦および会社員で占められているため、主婦と会社員中心に売上増加・利益増加を目指します。一方で、自営業・学生・フリーター・その他は売上構成比も低く増加率も微増であるため、来期売上の計画値は、10%増未満とします。

以上の条件を前提に、ソルバーを使って算出したのが、図表9の計画値になります。その結果、主婦で120%、会社員で126%の売上増加が必要となることがわかります。

図表9 算出された職業別の計画値

あとは、どのようにして主婦および会社員の売上増加を図っていくのかということになります。

主婦の場合、穀物や調味料を購入する構成比が高いので、それらを中心に訴求するのがベターでしょう。一方、会社員は加工食品や飲料を中心に訴求することになるでしょう。

このように、販売データをもとに現状分析を行い、ソルバーを使って計画値を算出することで、データに基づいた計画を立てることができるのです。

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【出典】齋藤健太問題解決のためのデータ分析